第39話 社交界デビューです
悪魔、降&臨
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皆様、お久しぶりです、御機嫌よう。
ジゼル=ウェリスでございます。
………助けてください。
「リズ、行こうか」
「はい……」
本日は私の社交界デビューの日。
デビュタントの装いの私に、手袋の嵌められた手を恭しく差し出すのは、同じく白い礼服を身に包む見た目麗しい完璧王子、ジルフォード殿下です。
「綺麗だよ、リズ。デビューおめでとう」
ちゃっかり私の腰に手を添えて、耳元で囁く殿下に、私はアルカイックスマイルを貼り付けて「ありがとうございます」と返しました。
「ふふふっ、そんなに警戒しないでよ。侯爵から恨まれても困るからね」
父様は会場入りする前に、殿下に良い笑顔で近づいて囁いていましたから、何かあったのでしょう。
「殿下、この度は態々、わたくしのエスコートを引き受けて下さりありがとうございます」
「気にしないで。元々は私が申し込んでいたんだ」
……え、いつ?
何処となく嬉しそうなジルフォード王子にはまだまだ不審な点があります。
その1つは殿下の衣装です。
一足先に社交界デビューを済ませている殿下は、別に礼服は何でも良いのに、何故か白。確かに金髪碧眼のジルフォード殿下は絵本から出てきたような容姿ですから、白い礼服に白い外套というのはお似合いです。とっても。
ですが、私のドレスの色と被るのは不味いと思いませんか……?!私と殿下がそういう仲であると噂が立ってしまいますよ!
「さぁ、出番だ―――」
『ジルフォード=ヴィア=フランデル王子殿下、ジゼル=ウェリス嬢、ご入場!』
名前が呼ばれ、私はにっこりと笑みを浮かべて、殿下のエスコートの元、会場に足を踏み入れます。婚約者を発表しておらず、夜会には今まで誰一人パートナーを連れなかった殿下が、私を伴った事で、貴族達は一瞬静まり返り、直ぐにざわつき始めました。
探るような視線や射殺すような視線、好奇な視線が私達に刺さります。と言っても、これは想定内でしたから動揺しませんが………そんな事よりも……。
「見てよ、私達が婚約していると貴族達は思うだろうね?」
殿 下 ? ま さ か こ の 為 じ ゃ あ な い で し ょ う ね ?
父様、私、逃亡してもいいですか?
くすくす笑いながら私に顔を近づけて話す殿下に、私はひっそりと避けながら相槌を返す他ありません。すると、宰相様であるフリージア様のお父様、グラシエ公爵が「静粛に!」と声を張りました。人々は一瞬にして口を閉じ、王座に向かって膝を付きます。
「面を上げよ」
重厚感のある声が会場に響き渡ります。
そして、国王様はぐるりと1周見渡して―――私と目を合わせたような気がしました。
………嫌な予感がします。
「皆の者、今宵は集まってくれて感謝する。大いに楽しんで欲しい。華々しいデビュタント達よ、君達を歓迎して祝福する。始まりは―――ジルフォード」
「感謝致します、陛下」
胸に手を当てて一礼した殿下は、私の正面に向き直った後――私の手を取って跪きました。ふわりと舞った外套、1人の令嬢を見つめる王子様。ギャラリーはほうっと溜息を零し、うっとりと殿下を見ています。当本人である私は、気持ちの中では真顔ですが。
「私だけのジゼル=ウェリス嬢。貴方のデビューを飾る最初の名誉を、どうか私に頂けませんか」
すん。
殿下、やり過ぎです………。
「……はい、喜んで………」
詰んだ♪
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