第38話 問題が発生しております



 そんなこんなで、巻き込まれ、時は過ぎ、結局図書館には行けませんでした……。しかし、翌日、クリス様から誘われて、2人で中庭を散策出来たので最高に嬉しかったです。


 さて、私もそろそろ15歳になります。デビュタントです。

 丁度国王様と王妃様主催の夜会がありまして、そこで私は社交界デビューをするようです。




「ジゼル様ぁ、旦那様からドレスが届きましたよ~」




 紫色のリボンを解いて箱を開ければ、デビュタントにしか許されない純白のドレスが入っていました。ヒラヒラと柔らかなレースや、様々に散りばめられた美しい金色の刺繍。ドロシーはこれを見て号泣してしまって、どうしたのかと聞けば、どうやら私のデビューを実感したからだそう。嬉しいですが、当日どうなる事やら……。


 また、羽をモチーフにした銀の髪飾りと、父様が構築したであろう魔術が組み込まれたピアスに白いハイヒール、そして父様直筆の手紙も一緒に届きました。






 ───*****───




 リズ、元気にしているかい?

 父様は心配で心配で心配で心配で心配でなりません。


 変な輩からリズにドレスが贈られないように、先に私達からドレスを贈らせて貰ったよ。ローゼとフィルと共に選んだものだ。当日それを身に纏った可愛いリズを見るのが今から楽しみで仕方ないよ。


 それと、いつもの魔術を付与させたピアスも入っているから、イヤーカフでは無くそれを付けて来るように。


 虫が付かないように、ちゃんと目を光らせているからね。安心しなさい。消してあげるからちゃんと何でも父様に言うんだよ?


 夜会で会えること、楽しみにしているよ。




 私達の宝物である愛しのジゼルへ

 リズ不足で死にそうな父様より




 ───*****───






 ツッコミどころ満載の手紙を読み終え、思わずピアスを手に取れは、父様の魔力の温かさを感じて、じんと瞼が熱くなります。

 最近、私は発作がで初め、過呼吸になったり、魔力が膨れ上がる事が多くなりまして、父様の魔術入りのイヤーカフが欠かせなくなっていたのです。


 この病を、誰にも告げずに一生を終えることになります。

 ……いえ、誰にもバレずに終えられたら、嬉しい、の方が正しいかな。


 話が重くなるのでこの辺でストップして。


 デビュー緊張するなぁ、と天を仰いでいた私に、ドロシーは更なる深刻な問題を突きつけてきます。




「そう言えば、ジゼル様のエスコートは何方が行うのでしょうかぁ……?」




 それは私が最も直視したくなかった案件でした。

 私は本当はクリス様にエスコートをお願いしたいのですが、デビュタントが婚約者でも無い方と並んで歩くのは少々外聞が悪く、難しいのです。


 兄様が1番収まりが良いのですが、彼の場合婚約者の方がいらっしゃるのでそれもダメ。父様がエスコートでも良いのですが、父親がエスコートするデビュタントは珍しい為、執拗に噂される事は間違いなし。それは父様もよく分かっているのでそれは無いでしょう。


 となると、私の周りには残るは殿下しかいらっしゃらなくなりますが……。

 もし、万が一ですよ?殿下がエスコートする事になったとして、何が問題かって、殿下の婚約者は私であると色々裏で言われる事です。殿下は最近、何処かのご令嬢に恋をしているご様子ですから、殿下にとっても宜しくない結果を招きます。


 父様はどうするおつもりなのでしょうか。

 手紙にも一言も、エスコートのエの字も出てこなかったので、私は更に心配になります。




「………父様におまかせしましょう」


「はぁい」




 クリス様はなんて仰るでしょうか。

 私がもし、別の男性からエスコートされる事になった時、クリス様は嫌がってくれるでしょうか。


 そんな事を考えながら制服に着替え、ドロシーに見送られて教室に向かいました。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る