第9話 突然

次の日曜日に、朝早く香子ちゃんが訪ねてきた。

「加奈はまだ、寝てるよ」

そう香子ちゃんに告げると、

「いえ、お兄ちゃんに用があるんです」

「俺に?」

「今から、付き合ってくれませんか?

買い物したいんですが、量が多くなりそうなので・・・」

なるほど、荷物持ちね。


「わかったよ」

俺は、加奈ちゃんにメモ書きを残して、香子ちゃんと出かけた。


「デートみたいですね」

「そうなるのかな・・・」

他愛のない会話をする。


傍から見たら、そう見えるのか?

いや、せいぜい兄妹だろう。


「お兄ちゃん、このスーパーで買いたいんですが、付き合ってもらえます」

「いいよ。食材?」

「はい。他にもありますけどね」

女の子なので、そんなに食は太くないだろう。


そう思っていたが、甘かった。

お米を大量に買おうとした。


「たくさん食べるんだね」

「成長期ですから」

香子ちゃんは笑う。


このスーパーでは、お米が特売されていた。

香子ちゃんはたくさん買いだめしようとしたが、俺は止めた。

「香子ちゃん、買いすぎ」

「でも、安いですし」

俺は香子ちゃんに、説明をした。


「お米は一週間もすれば劣化して不味くなるから、一週間で食べきれるだけにしたほうがいい。

それと、保存場所は冷蔵庫の野菜室ね」

「お兄ちゃん、詳しいですね」

「まあね」

荷物が持つのが嫌だから、言っているのではない。

これは、本当だ。


他にも野菜とか肉とかたくさん買った。

確かに女子ひとりでは、持てないな。


これからも駆り出されるのか?

そう思っていたのだが・・・


「お兄ちゃん」

「何?」

「これはまだ、加奈ちゃんにも言ってないんですが・・・」

「うん」

「私、田舎に帰る事になったんです」

驚いた。でも、詳しくは訊かなかった。

これは香子ちゃんの、プライベートなので、首を突っ込まないほうがいいだろう。


「理由、訊かないんですね」

「言いたくないんだよね」

「お兄ちゃん、優しいんですね」

香子ちゃんは、寂しそうだった。


そう言えば香子ちゃんが引っ越しの挨拶に来た時、

どこから来たのかは訊かなかった。


香子ちゃんから話してくれるのを待っていた。

でも、これくらいは、訊いておいたほうがいいだろう。


「田舎って?」

「北海道です」

後は訊かなかった。


「で、いつ帰郷するの?」

「来月です。」

後日、香子ちゃんから、嘆願される。




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