第8話 その理由

で、早くも帰りの時間となる。

閉園時間なると、蛍の光が流れる。


マッチしていないと思うが・・・


ラッシュ時間を避けて、それよりも前に園を出る。

明日の事もあるし・・・

おかげで座る事が出来た。

俺はもう、くたくただ。

歳には勝てない。


でも、女子高生ふたりは元気だ。

それほど運動しているようには見えないが、若さの秘訣か・・・


「お兄ちゃん、お疲れですか?」

香子ちゃんが声をかけてきた。

「うん、まあね」

「今日はありがとうございます。楽しかったです。

「どういたしました」

しかし、このままでいると確実に駅を乗り過ごす。

話をして、気を紛らわせるのもいいかもしれない。


「あの、お兄ちゃん」

「何?」

「加奈ちゃんの事は、好きなんですか?」

「加奈は、いとこだよ」

「それだけですか?」

「うん」

なんだろう?香子ちゃんは、嬉しそうだ。


いや、止めておこう。

下手に期待すると、後でバカをみる。

身の程は、わきまえよう。


話をしていると、時間を忘れる。

「加奈は、いいの?」

「ええ、加奈ちゃんは熟睡しています」

香子ちゃんは、加奈ちゃんを差す。


「なるほど」

いつの間にか、加奈ちゃんは夢の中だった。


仕方ない、おぶるか・・・

俺は加奈ちゃんをおんぶした。

「お兄ちゃん、大丈夫ですか?」

「ああ、いくら俺でも、このくらいはね」

香子ちゃんは、気を使ってか、荷物を持ってくれた。


中身はもう、軽いので女の子の力でも余裕で持てるが、助かる。


アパートに着くと香子ちゃんが、耳打ちしてきた。

「今度は、私とふたりで出かけて下さい」


深い意味はないと、思っていた。




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