第7話 動物園

快晴の日曜日、出かけるにはもってこいの休日。

動物園ということで、朝早くに起きて、弁当を用意した。

俺、加奈ちゃん、そして香子ちゃんの3人分。


飲み物は園内で買おうと思い、持ってきていない。


最近の子は、動物園が珍しいのか?

ふたりとも、楽しそうに見ている。


「この辺りは、年頃の女の子だな」

ベンチに腰をおろしながら、ふたりを眺める。

なんだか、微笑ましい。


「お兄ちゃんは見ないんですか?」

香子ちゃんが、声をかけてきた。

「うん、見たい動物とか、ないしね」

「残念ですね。イルカがいなくて・・・」

「いたら、やばいです」

「そうですね。じゃあ、加奈ちゃんのとこ、戻ります」

そういって、加奈ちゃんのところへ戻っていった。


この動物園は、パンダもコアラもいない。

ありふれた動物園だ。


人は人生で、6回動物園に訪れると言う。

祖父母と、両親と、遠足で、デートで、子供と、孫と・・・

5回かもしれないが、俺は6回と聞いている。


まあ、この辺りの食い違いは、気にしないでおこう。

身が持たない・・・


他にも近くには、遊園地とか映画館とかがある。

でも、住民の足は、この動物園に集中する。


なにか変わった動物がいるわけでもないのだが、

「一番怖い動物がいます」

それをキャッチフレーズにしている。


そこは、室内にあり、やや隔離されている。

興味本位で入っていくが、出てくる時は、複雑な表情をしている。


でも、それが活力になっているのかもしれない。


「ねえ、お兄ちゃん、入ってみない?」

加奈ちゃんがせかす。

「あそこに?」

「うん」


「お兄ちゃん、行きましょ」

香子ちゃんにもせかされて、3人で入ってみる事にした。


「世界で一番怖い動物」

ふたりは、興味津津だ。


だがそれが何なのかは、俺は既に知っていた。

その室内には、大きな鏡がたくさん貼り付けられたいた。


「いなかったね」

「なんだったんだろうね」

ふたりは、理解が出来ていないようだ。

鏡の意味を・・・


まあ、まだ仕方ないか・・・

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