第5話#幸運と悪運

何が起きたか、未だに状況が掴めない私なのだが、説明も何も貰えずにただ今カウンターの前に一人立っているところだ。

周りにいた酒飲みの男達も看板娘の言葉がイマイチ分からないらしい。

しばらくその場に立ちながら一人幸運スキルが何なのかを考える。

だが、幸運と言われても何が幸運なのかがそもそも分からなかった。

幸運なのだから、運か?今までそんなに運があること起きていたか?いや、特に思い当たることも無い。

ならば一体何が──


「あっあの!!お名前を聞きそびれてしまいまして....その、お名前は....?」


私が腕を組み考えていた時看板娘が帰ってきていた。

名前....そう言えば看板娘の名前しか聞いていないな....。


「私はトキ....だが?」


「トキ様ですね....先程は大声を上げてしまいすみません、つい取り乱してしまいました」


看板娘は反省をしているようだが、私はそれよりも幸運スキルの詳細を聞きたい。


「改めまして、私はグレアです、グレアとお呼びください....」


グレアは自分の名をまた名乗った。

私はグレアに幸運スキルの詳細を聞くことにした。


「トキ様の幸運スキルなのですが、とても珍しく魔法使いが手に入れるのは稀でして....、国王に報告をしたら、ただ今国王から伝達が入りまして、トキ様を国城にお招きしろとの命を受けました」


「え....?私を?」


開いた口が塞がらないとはこの事か、ただ今喋ろうとした口が塞がらなくなった。

この私は王国の城に招かれる?しかも国王が命令を....?

急な話で私は頭は整理が追いつかない。


「え、行かなきゃダメですか?」


やっと口が動いたが何故かそんなことを聞いた。

国王は怖い、きっと怖いだろう....私は行くのを躊躇う。躊躇するのだ。

当たり前であろう。

少しは私の言葉を尊重しても──


「これは国王からの命令です....命令を受けなければ処罰は免れません!行くべきです!というか行ってください!!」


「私の意見は!?」


意見の尊重とは裏腹にグレアから帰ってきた言葉は私の意見など全くもって聞くことの無いものだった。

これは....行かなければならないのか。

私は心で怒られないよう祈るばかりだな。


─同時刻 ウィアル王国 国城内─


「王よ....ギルドからの通達でございます」


ある男が、玉座に君臨する。

髪は長く、一つにまとめてあり。

顔立ちはとても整っていた。

色白でそれは美男子と言えよう。

ただ、その男の眼はとても冷徹で見るもの全てを下級生物と見なしている。

まるで、心は氷のように冷たい....きっと他人に対する気持ちも、何も思われておられない─そう恐れられていた王である。

その男に、通達がくる。


「述べよ....」


男は低い声で使いに言う。

使いは一礼し巻物に目をやりながら、王に言葉を述べる。


「ギルドにて一人の魔法使いが属性確認をするために来たとの事なのですが、その魔法使いの属性が黒─闇属性だと判明しました。そして、スキルを確認したところ幸運だそうです....」


その使いも王にあびせられる言葉に怯えながら、巻物に並べられている一つ一つの言葉を王に届ける。

王はしばらく使いを見つめた。

そして言い放つ──


「その魔法使いを直ちに、ここに呼ぶのだ....今すぐに。そしてこれは、戦争の幕開けを合図する....良いか」


王のその言葉に、一同頭をたれる。

その玉座に君臨する王は告げる。


「皆の者....心してかかれ!今、この時が....戦争の幕開けだ!!」


玉座に君臨する王はまた一つの街を壊す。

それは、公では悪を滅ぼしたとあるが、実際はそうではない。

残虐な行為を繰り返し、罪もない人を殺して行くだけだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る