第4話#属性とスキル
拝啓
我が母上
ただ今優雅な刻を過ごしております。
私のお葬式はお済みでしょうか?
いつも迷惑をかけてばかりの娘で本当にすみませんでした。
今ではもう亡き人となっておりますが、異世界に転生し何とか生きております。
これからも、精進して行きますので天から見守っていてください。
トキより。
とまぁ手紙を書こうとも思ったのだけれど、正直届く気がしない....届かないわよね。
ただ今宿にてのんびり過ごしているけれど、優雅なのかと聞かれたら嘘ね。
なにものでもないわ。
紙とペンを借りて文字をひたすら書こうとしたら、何故か不思議な文字になったのよ。
簡単に言うと日本語ではない、英語にも見えないわね。
でもひとつ分かることがある....この世界この国のみで使われる文字だと判明したわ。
誰でもわかる事だけど、普通ならまず言葉も通じない文字も読めないはずだけど、神様はそこは優しかったのよね。
それに書けないなんてことは無いし、普通に日本語書こうとしたらこうなるからマシね。
神様ありがとう....合掌合掌....って、死んだわけじゃないわね。
とりあえず、宿に泊まれたからこれで一日耐えれる....明日はギルドに行くことにしましょう。
「クイックイッ」
「どうしたの?アニ....」
「クーイックイー」
「お腹すいた?さっきサンドイッチあげたじゃない....もう、腹ぺこスライムなんだから....」
アニの要望にも答えサンドイッチを貰いに食堂に向かうことにした。
ただ、部屋も綺麗だし食事も美味しい、宿と言うかホテル感覚のようなものだ。
アニがこれから腹ぺこになったらどうするかを考えなければならない気もする。
「そんなことはまぁ置いといて、さっさと貰って早めに寝ましょうかね....」
私はサンドイッチを貰い自室に戻ることにした。
明日は早いだろう、それにきっと忙しい。
私は流れるように睡魔と共に深い眠りについた──
─次の日─
目覚めは特に悪いわけではなかった。
鳥の鳴き声がする。
チュンチュン....とね。
ふと外を見ると、一羽の鳥がいた。
この世界の鳥はとても美しい。羽は大きく羽ばたく時はとても気持ちよさそうだ。
色は水色で透き通るような色をしている。
だがそれは、同時に美しさと妬みを生むだろう。
人は美しさに溺れ、その沼から抜け出せない。
そして他人の美しさを妬み嫉妬し、心が壊れていく。
鳥の世界もきっとそうだ。
昔から私は、物事をすぐにネガティブに例える。
恋も愛も友情も絆も....全て。
だからこの世界ではそんなことを忘れようとしたのに。
世界は本当に残酷で、同時に美しいとも感じる。
「いや、こんなことを考えている場合じゃないな....」
私は支度をし、寝起きのアニを方に乗せ、ギルドのある場所に向かう。
昨日のうちに美男子店員から場所は聞いているので迷うことは無い。
だが、人のあまりの多さに少し耐えきれない。
昔から人の密集している所は少し苦手だ。
学校は特に、集会などと言って全校生徒集まることになるのは本当に精神的に辛い。
密集地帯は苦手だ。
それがまたここに来てなるとは。
昨日とは打って変わって皆静かで、活気が無い。
まだ昨日の方がマシだった。
そう思いながら、ギルドへと向かう。
残り数メートル。耐えろ、私。
....。
どうにか、私の体と心はもちこたえた。
ギルドの中は酒臭く男しかいない。
女もいるが番長といった見た目だ。
昔の不良やヤンキーのような厳つい人達しかいない。
こんな苦手な場所がこの世界は沢山ある....少しづつ慣れなければな。
とりあえず、カウンターまで向かおう。
「いらっしゃいませ!ギルドの看板娘ことグレアと申します!」
元気が良い看板娘がここのカウンターの担当らしい。
まだなんとか話せる相手でよかった。
「あの、私....魔法使いなのですが、属性を見てもらいたくて」
「やはり!冒険者さんの割には剣も弓もお持ちでないと思ったら、魔法使い様ですね!分かりました、ただいま結晶をお持ち致します!お待ちください!」
そう言いながら、看板娘─グレア─は奥の方へと入っていった。
その間、魔法使いと聞いた周りの男の目線が気になる。
物珍しそうにこちらを見ているような気がする。
うぅ、怖い。
はやく、早く看板娘さん来て....!!
そう願い待つこと数十秒。
その結晶を大事そうに布で持ちながら私に渡す。
「この結晶は魔法使い様のみが触れられる結晶です、他の方達が触ってしまうと割れたり消えたりしてしまうのです!」
「ご注意を!」と最後に付け足し、私の前に持ってくる。
その結晶をそっと受け取る。
「おっ、重っ....」
あまりの重さに危うく落としそうになったがなんとか持ちこたえ、その結晶を眺める。
そして光り出す....。
その眩い輝きは一向に収まる気配はない。
いつまでも輝き続ける。
ながい、とてもながい。
一体どれほど時間が経てばその輝きは収まるのか。
そして、やっと光が収まる。
「色は....!!」
そしてその色は──
「黒....??」
「黒....に見えますよね....」
私と
そう、長い輝きの末色は黒くなっていた。
「この色、何かあるんですか?」
「え....っと、説明し忘れていました。
この結晶に触れると、赤、青、黄色、緑そして黒のどれかひとつの色が出てきます」
なんと、
特に怒る気もないので無言で説明を聞くことにする。
「赤は炎を司る魔法、青は水を司る魔法、黄色は稲妻を司る魔法、緑は風を司る魔法、そして次が大変なんです」
次って黒じゃない、しかも私の出た色....。
「黒は闇を司る魔法です、常に暗くこくようせきの様にオーラを放ちます....、基本的に黒は滅多に出ないのですがどうやらあなたは素晴らしい力の持ち主かと....」
はぁ、素晴らしいと言われても....正直ピンと来ない。
なんせ今まで平原の魔物しか倒してない。
おー!強い!と感じたことも無いのだ。
「黒の色は闇を司るため、ほかの属性よりはパワーが落ちますが、ランダムでスキルを手に入れることが出来るのですよ!ついでにこの結晶で見てみましょう!」
すると、結晶になにやら文字が浮かび上がった。
「幸....運?」
その字は’’幸運’’と書いてあった、つまり私のランダムスキルは幸運ということ?
私が説明をもらおうと声をかけようとした時。
「これは一大事だあああああああ!!!!」
何も訳の分からない私は、ただ一人その場にポツンと立つしかなかった。
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