第2話#謎のトラブル
それにしても、ここは一体どこなのだろうか。
異世界転生をしたにしても、まず、今いる場所がわからないとなると行動しようがない。
今いる場所がわかるものは何かないかな....
私がそう悩み考えていると、スライム─アニ─がまた話しかけた。
「クイックイッ」
そしてまた、脳内に言葉が浮び上がる。
「ここはウィアル王国の敷地内に有るツィード平原というんだ、普段は魔物の領域なんだよ」
ウィアル王国....? ツィード平原....?
聞いたことないや....って当たり前よね。
でも、何とかここがどこなのかが分かったからいいか....。
でも普段は魔物の領域って、何か起こるの?
「クーイックイ」
スライムは私の言葉に対し素早く応答する
「年に一度、朝から夜まで魔物狩りが行われるんだ、魔物の湧きすぎ防止だよ」
へぇ、湧きすぎ防止か....また珍しい行事なこと。
でも、年に一度行われているなら、なぜ魔物は逃げないのかしら。
そんなふとした疑問にも、アニは答えてくれる。
「年に一度と言っても、王国が毎年毎年急に明日だとか今日やるとか決めちゃうから、魔物のボク達もわからないんだ」
王国も大変なのね、でも、そんな大変なことをするより、湧かないようにしたらいいと思うんだけど?
「クイークイークイッ」
「ボク達のいる世界には魔物の発生源となる、’’魔刻’’というものがあるのだけれど、それはどこにでも充満しているんだ、ボク達は魔刻さえあれば基本的には生きられるけれど、戦いをしないとLvも上がらないから弱いままになってしまう」
ふぅん、魔刻....ねぇ、それは他に何に繋がってたりするの?
私の疑問に、アニは何度も受け答えをしてくれた。
そしてだんだんとこの世界について大方理解は出来た。
まず、この世界は魔刻という魔法の原子や魔物の発生源となるものが満ちている。
それはいつどこでも、満ちているため魔物が常に発生する。
魔刻は魔法の原子ということもあり、魔法使いや魔道士、魔女は魔刻を元にし技を繰り出す。
魔法使いにとっても、魔刻は必要なものになる。
そのため、平原から魔刻を無くそうものなら、魔法使いの敗北を意味することになる。
魔刻が満ちている状況であれば、魔法使いは何度でも技を出すことが出来る。
魔刻はどちらにとってもなくてはならない存在。
魔物から取れる上質な革や角、肉などは王国の食材として渡されることになる。
先程、アニが言っていた魔物狩りは王国の祭り的存在なのだそうだ。
このように、大方私もこの世界を理解したため周りの魔物に目をやる。
どの魔物もとても色が綺麗で、美しい。
傷付けるのはとても心が痛むが私も人間。食べなければ死ぬ。
世は弱肉強食....命のためならば惜しくない!!!
「うおおおおおおぉ!!!──」
叫びと共に魔法的なものは出ないかと思い、手のひらを魔物に向け呪文っぽいものを唱えることにした。
「我が右手に宿りし暁の女神よ....我に力を!!!」
厨二病とやらが全開なのだろう、私はよくわからないが今、とても高揚していると思われる。
ここまで楽しい気持ちになるのは、読書をしているとき以外だろうから。
私は今の気持ちがとめられない、その高揚した気分のまま、暴走する身体と共に魔物を狩りまくった──
狩りまくったおかげか、宝石の様なものは沢山集まった。
紅や碧、黄彩に紫など、カラフルな宝石だった。
色によって価値が違うのか気になるところなのだが、それを確認する術がない。
魔物狩りを開始して数時間がたっただろう
詳しくは分からないが....
だが、この宝石の量を見れば沢山の時間で沢山の魔物を狩っていた事は明確だ。
魔法を繰り出そうと、詠唱や呪文的なものを唱えてみたら、一応でた。
炎らしいものが魔物に命中した。
すぐにその魔物は倒れ結晶と化していく。
そしてそのまま天の方へと消えていった。
合掌、合掌....お悔やみ申し上げますっ....と。
常に魔物への感謝を忘れない。
ただ、私はこの魔物達を狩るのはいいのだが、そのあとどうするかということになる。
宿がない。そう、寝る場所が無いのだ。
一日の心の癒しを司る寝床が無い。
このままでは野宿となり魔物に食われるだろう。
転生初日にそんなことがあってはたまったもんじゃない。
私はなんとか王国の賑わうほうを目指すことにした。
道中はアニに案内してもらった。
そして、なんとか王国にある街へとたどり着くことが出来た。
街への入口は、大きな門が管理をしている、門の中にも外にも兵士が何人かいる。
ここはそれほど大きな国できっと国家の戦力が大きいんだろうと勝手に思うことにした。
中はとても賑わっている。
外にはすぐに魔物の平原があると言うのに、呑気なものだな....。
だが、中の活気は以前暮らしていた場所とは異なる。
都会では信号無視など日常茶飯事、そのため事故が多発しNEWSはいつも不幸な話ばかりを放送する。
だがここは違う、皆がお互いを気遣い、仲良く接している。
見ていてとても気持ちいい....
さて、そんなことより宿を探さねば....
──そして、また問題が発生する──
そう、宿で休もうにもお金が無い
転生し、周りを見回しても神様は甘くないのか、初心者パックというものもない、それはゲーム内の課金アイテムなのだが....
そうでなくとも、少しくらいの慈悲はあってもいい気がするのだ。
何故私はこんなにも恵まれていないのか、不思議でならない。
だがそんなことをブツブツ言ってもしょうがない。
とりあえず、手元に沢山ある宝石を売ってみることにした。
と、ここでアニが肩の上で跳ね始めた。
アニの方に目をやると何か訴えかけている。
何か言葉を発しているが、周りの賑わいで良く聞こえない。
アニに耳を傾けようとしたその時....
「おう、おう?可愛いお嬢ちゃんじゃないかぁ....その手元に持ってる宝石....俺達に分けてくれねぇかぁ?」
いきなり男が話しかけてきた。
正直男は嫌いだ、学校でもまともに会話をしたやつすらいない。
男なんてみんな汚らわしい....そう教えられたから....。
私は無視をしようとアニを乗せたまま去ろうとしたが、肩を捕まれた。
本当に嫌だ....気持ち悪い....。
「まぁまぁ、無視すんなってぇ、俺達に少しくらいの慈悲があってもいいだろ?なぁ?」
宝石をよこせというのが慈悲というのか....ふん....ちゃんと育ってきていないのがよくわかった。
こいつらには教えねばならないようだな──
「私に気安く触らないでいただきたい....魔法使いを甘く見ると....消し炭にするぞ?」
こんな時には威圧的な行動をとるのが一番だと教わった。
私はその男に、睨みを利かせながら言葉を放つ。
「今すぐ立ち去れ....さもなければお前を燃やし尽くしてやろう」
すると、男達は怯みどこかへ去っていった。転生初日にこんな問題はもう嫌だ。
本気で転生したのは面倒だと思い始めたが、この宝石を扱える場所へ進むことにした。
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