夢の狭間③

「お前は一人でいるのが好きなのか?」


 ――が木陰で書物を読んでいると、頭上から声がかかる。


「先生……俺は静かに読み物をしたいんだが」


「そう言うな。先生は悲しいぞ」


 隣に腰かける男性は、まだ固い蕾を付ける桜を見上げる。――はその様子を横目で見て、再び文字を追う。


「一人の時間も必要だ。けれど、ずっと一人でいるのは寂しいものだぞ」


「先生は早く結婚した方がいいと思う」


「お前は全く……私が言いたいことはだな」


他の生徒と一緒に居なくても、先生が居れば寂しくない。――は信頼の置ける人にしか心を開けない性質だった。


「いいか、――、もしもお前が」



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