息が詰まるほどの悦楽を


 これは、真綿で首を絞められるような物語だ。

 そして同時に、僕がこの手で首を絞める物語でもある。


 僕がどうしてこうなったのかについて、明確な答えを出すのは非常に難しい。

 生まれつきそうであったのかもしれないし、あるいはどこかの時点で後天的に取得してしまったのかもしれない。自分が周囲とは違うということに気づいてから、そのことについてはずっと考えてきたつもりだけど、僕は未だに解を得ることができないでいる。

 もしかしたら、僕はそのことについて苦悩すべきだったのかもしれない。自分が反社会的存在になるのを恐れて、然るべき機関に話をするべきだったのかもしれない。

 でも、それを僕は恐れてはいなかった。自分の理性を信じていたし、僕の欲望は満たされるべきではないと強く戒めていた。決して許されないことだから。僕自身が、僕に許してはならないことだったから。

 認めてもらえるわけが、なかったから。

 けれど、たぶん、もう遅い。大丈夫だと言い張るには、色々なものが足りなすぎる。

 君さえいなければ。

 そう思いながら、僕は喜びに打ち震えている。頭の奥が痺れるような感覚に胸の鼓動を高鳴らせ、どうしようもないところにきてしまったというほんの少しの後悔とともに、興奮に酔いしれている。

 それは契約だった。それは互いの合意の上で成り立っていた。心地よい関係だった。彼女が唯一僕を知っていた。僕が唯一彼女を知っていた。

 それは、偶然の出会いだった。

 僕たちに不幸があるとすれば、それは出会ってしまったことだろう。

 僕たちはきっと互いが好きだった。そしてだからこそ、混じり合って一体となって暗闇に沈んでいくことを良しとした。ただそれだけのことで、同時にそれしかなかったのだと思う。

 僕の手は、既にその肌に触れている。

 彼女が微笑む。僕は笑う。真白い肌に、紅色はよく似合う。

 僕は彼女を喪うことを恐れている。それだけはいけないと誰かが叫んでいる。

 だから、僕は何でもしようと思う。

 君が望むのなら。

 僕はそう言って、彼女の首に手をかけた。

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