#魔女集会で会いましょう


 声がする。

 助けて。

 どうか、お救いください。

 神様……


 声がする。

 ああ、どうか。

 どうか、この子は。

 この子だけは……


 声がする。

 いやだ。

 いやだ、死にたくない。

 いやだ……


 声がする。


 嘆き、祈り、叫び、喘ぎ、呪い、憎み、そして、助けを願う、声がする。


 炎が燃え立ち、曇天を茜色に染め上げている。

 溢れた血肉が石畳を紅く濡らし、焼け焦げた骸が無造作に転がっている。

 蹂躙と殺戮、陵辱が、人の形をして跋扈する。

 魑魅魍魎が如く、穏やかであったはずの営みを、ことごとく破壊しつくす。

 それは、人の意思だ。

 何も残すまい。

 記憶に留めることも許さぬ。

 死に絶えよ。消え失せよ。

 苦痛を、憎悪を、絶叫を。

 すべてが、人の意思にある。

 こちらに気づいた見張りの兵士の肉体が、螺子のように巻かれて、捻じ切れて死んだ。降り注いだ血で、もう一人が気を失った。腹を踏みつけ、内臓を潰す。

 事切れた女を犯していた兵士が、急に動きを止めると口から内臓を吐き出して、死んだ。やがて炎が回り、肉の焼ける匂いがした。

 仲間を呼びに行こうとしたらしい兵士が、私を見るとナイフを取り出し、素早い動きで首を掻き切った。倒れてから、地面に頭を叩きつけて、死んだ。

 異変を察した兵士たちが、周囲を取り囲んだ。中心にいるものの呼び名を叫んでから、正確な射撃で、互いの頭を撃ち合って、全員死んだ。

 教会の中にいた隊長と思しき男が、捕虜にした少年に銃を押し付けて、怒鳴った。その隙に、少年が男に頭突きをして、その首を噛みちぎった。男は死んだ。少年は肉片を吐き出して、血まみれの顔で言った。

「……あなたが、神様ですか」

 少年の横に男女の死体があった。

 少年同様、後手を縛られた状態で、頭を撃ち抜かれていた。

 近づくと、少年が、顔を上げる。端正な顔立ちに、首から十字架をかけている。

 かがんで、頬に手を伸ばし、撫でるように、そっと、血を拭う。

 ああ、なんて。

 なんて、愚かなのだろう。

 どこまで道化を演じれば。

 どこまで欺けば気がすむのだろう。

 神、とやらは。

 そんなもの、いやしないのに。

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