第三章
第三章
「よく食べるわねえ。もう、四本も食べてる。しかも特大サイズ。」
「だって、いつの時でも食べないと、力も何も出ないでしょ。食べるのは当たり前だい。」
杉三と由紀子が、杉三の家からすぐ近くにある焼き鳥屋で、焼き鳥を食べていたが、すでに杉三は、由紀子が言った通り、四本の焼き鳥を食していた。
「ほら、食べろ。食べないと何もできんぞ。」
と、焼き鳥を渡されても、由紀子は食べる気にはなれなかった。
「杉ちゃん、特大サイズなんてとても食べきれないわ。」
「だめ、一本は食べろ。」
「そうねえ、、、。」
そういわれて由紀子は、焼き鳥を口にしたが、とてもおいしいと感じられるものではなかった。
「ちょっと!もう一本頂戴!焼き焼き親父さん!」
「はいよ、ちょっと待っててね!」
威勢のいい、焼き鳥屋の店長さんとそんな会話をして、五本目の焼き鳥を注文してしまう、杉三だった。こうなったら、もう、どうにでもなれと思って、焼き鳥をやけ食いした。
水穂が倒れたと知らせを受けて、蘭は猪突猛進に製鉄所に飛び出してしまったため、杉三が由紀子をこの焼き鳥屋に連れてきたのだ。
「だけど、蘭さんがああいう風になったとは、びっくりしたわよ。まさか杉ちゃんではなく、蘭さんが、あんなに心配するなんて。もう、半狂乱って感じになってたわね。あたし、ああして、タクシー呼び出せと言われたら、従わざるを得なかったし。まるで脅迫するような感じだったわ。」
「ま、それも、蘭だよ。水穂さんのことを言うと、目が見えなくなるのが蘭だ。僕も、あそこまで怒鳴ったら、蘭のいう通りにしなければならん。」
「そうね。本当は杉ちゃんも行きたかったんじゃないの?水穂さんのところ。」
「まあそうなんだけど、蘭がああして飛び出していったから、邪魔したらかえって悪いかなと思ってなにも言わなかった。今頃製鉄所で、泣いているんじゃないのか。」
製鉄所では、くしゃみをするどころか、眠っている水穂の体に縋り付いて泣いている蘭が見えた。それをブッチャーがふすまの隙間から、やれやれ、という顔で見つめていた。
「はい杉ちゃん。焼き鳥特大サイズ。」
「あ、悪いね。ありがとうな。」
焼き鳥を持ってきた店長から皿を受け取って、また焼き鳥に食らいつく杉三であった。
「杉ちゃん。水穂さんって、どうしてそんなに悪くなるまで放置してたの?あれほど、いろんな人に恵まれておきながら、なんで誰も病院に行けとかそういうことを言わなかったの?」
「え?だってしょうがないだろ。同和問題ってのはね、そういうもんなんだよ。」
どうもそこだけは、不明確だった。
「だって、確かにそうだったかもしれないわよ。あたしだって、そういう人たちがいたってことは、聞いたことあるし。でも、それは、明治時代に撤廃されて、もう、百年以上たっているのよ。その間に、いろんなことがあって、人種差別を廃止する制度だって色々あるでしょう?」
「だから、いくら法律で禁止してもなくなんないよ。人種差別ってのは。いつの時代も、永久にな。」
「そうじゃなくて。周りの人が何とかしようとか、そういうことにはならなかったの?なんでみんなそれを黙認して、、、。あそこまで悪くして。」
「ま、若い人に話して聞かせても無駄だって、何よりも水穂さん本人はそう言っている。好奇心で、同和問題に手を出されてもかえって困るだけだから、やめときな。」
由紀子は、あーあとため息をついて、がっくりと肩を落とした。
「そうだけど、人が亡くなるってのは、誰でも避けたいことでもあるから、なるべくなら回避しようと思うのが、人ってもんじゃないかしら。水穂さんは、本当に何もしなかったの?周りの人も、何とかして、治してもらおうと説得するとか、そういうこと本当にしなかったの?病気になる前、何をやってたのよ。もしかして、あまりにも貧しくて、日雇いでもやってたの?あれほど綺麗だったけど、確かに貧しかったら、そういう仕事でもしなきゃいけないかもしれないわよね。」
「職業か?職業はピアニストだった。出身大学は桐朋だ。知ってるか?有名な指揮者とかいろいろ輩出している大学だ。レオポルト・ゴドフスキーの達人と言われるほどの異名をとった。」
「桐朋って、あの仙川の?知ってるわよ。そのくらい。音楽にはまるで縁がなかったけれど、桐朋が、世界的に有名な演奏家をたくさん出したことは知ってる。それに、そんな優秀な大学を出て、ピアニストとして活動出来たんだったら、たくさんファンの人だっていたでしょうに。それを全部捨てて、忽然と姿を消すなんて、世界的に有名な大女優でもなければ、しないわよ。」
「そうだけど、桐朋はねえ、、、。ものすごい高いよ。それも知ってるだろ。同和地区の人が、完済できるほど、経済力あると思う?演奏で獲得したもんは、全部奨学金の返済に消えてったよ。それと並行して体のことなんて構ってられると思う?」
「だけど、医療費控除を受けるとか、そういうことはできないの?どうなのよ?」
「由紀子さん。それはどこへ申し込めばいいのかな?市役所とか医療機関は、水穂さんのような人にとって、最大の天敵だ!申し込みになんか行ったらな、罵声とトマトぶつけられて、追い出されるのが落ちだ!」
杉三は、特大焼き鳥の最後の一切れをがぶっと口にした。
「そうだけど、あたしはやっぱり、、、。」
「青柳教授が言ってた。医療的にも社会的にも、あの人は回復しない。あきらめなって。」
「そう。」
焼き鳥をおいしそうに食べている杉三を見て、杉ちゃんも、そう思っているのだろうなと思った。
翌日。
生田記念病院という真新しい病院に、奇妙な患者が入ってきた。確かに容貌こそ美しく、どこか外国の映画俳優並みにきれいというのは疑いないが、げっそりと痩せていて、男性物の着物というものを身に着けていても、女性がするように衣紋を抜いて着ているように見えるほどであった。受付に、初診だと言いつけて、問診票を渡され、待合室の長椅子に座って、せき込みながら書き始めたときは、ほかの患者たちは驚いてどよめいた。
一体何を書いているのか、中年の女性患者だけでなく、男性患者でさえも、ごそごそとささやいていた。彼はどこからやってきたのか、いったい何をしにこんな年寄りばかりの病院に来たのか、どこが悪いのかなんて、女性たちは噂し、男性たちはかわいそうだからやめろ、と彼女たちを制することに時間を取られてしまったのだった。しかも、彼の座った椅子が、呼吸器内科と書かれた立て看板の近くであったため、時代劇の俳優が、テレビドラマのロケでも来たのかと勘違いする若い女性もいた。
そのまま、少なくとも二時間以上待った。大病院なので、そうなることは珍しいことではないのだが、診察を終えた患者たちは、その人がだんだんに疲れた顔になり、椅子の背もたれによりかかかるような姿勢になったので、これはもしかすると、なんて噂した。
「磯野さん、どうぞ。」
呼吸器内科の診察室のドアがあいて、やっとその言葉が聞こえてきたが、そういわれたときその人はひどくせき込んでいて、返答できなかった。さらに、その指の間から、赤い血がぼたぼたと落ちてきたので、患者たちはびっくり仰天し、
「やだ怖い!もしかすると本物よ。」
「き、気持ち悪いよ。今時ああなるほど悪くなる人っていないと思うのだが、、、。」
と言って、大半が、待合室から出て行ってしまったほどである。
「磯野さん、何してるんですか。もう、診療時間も終わっちゃいますから、早く入ってくれませんかね。」
と言って呼びに来た看護師も、一瞬ひいてしまうほど、ひどいものであった。隣に座っていた、高齢のおじいさんが、
「君、君。呼ばれたよ。」
なんて言ってくれて、水穂はやっと立ち上がり、看護師さんに謝罪して診察室に入っていく。
それを怖いもの見たさに、患者たちが見つめていた。
とりあえず、医者に言われるがままに検査を受けて、結果を聞くことになったが、ここまで進行した例は、医者も見たことはなかったようである。年配の医者だったら見たことがあるかもしれなかったが。
「はあ、、、。ひどいもんですなあ。その格好といい、江戸時代からタイムスリップしたのかと思いましたよ。」
思わず、口を開いて、しばし呆然としているのは、検査を行った検査技師であった。技師でさえ、よくわかるほど、現代日本ではありえない症例である。とりあえず、医師に画像を手渡して、水穂は再び診察室に呼び出された。
「なんですかこれは。一体どうしてこんなに悪くなるまで、放置しておくことができたんでしょうね。少なくとも、日本の医療であれば、ここまで悪くなることは、あり得ない話ですよ。ネパールとか、ブータンなどの僻地か、あるいはアフリカのシエラレオネとか、戦争続きのところにでも行かないと、こういう患者は、たぶん存在しないでしょう。」
水穂の、胸部画像を見た医師は、素っ頓狂な声でそういった。まあ、ある程度覚悟はしていたが、こういういい方はある意味頭にきた。でも、反発するようなことはできなかった。
「ま、とりあえずね、胸腔に血液がかなり溜まってますので、チューブで血を抜くという処置では間に合わないと思いますから、直ちに入院して開胸手術が必要になりますね。あと、気管支の拡張による損傷も著しいですから、もしかしたら人工血管の移植も必要かな。そうなると、人工心肺を使って、かなり面倒な手術になりますから、半年くらいかかるかもしれませんね。その間まで持ちこたえてくださいませね!」
と、説明されても、説明というより脅迫されているのにそっくりだった。
「いいですか、途中で限界だなんて言わないでくださいよ。もともとここまでひどい状態になるまで、放置し続けたあなたの責任ですからね。もう肺の限界値も、当の昔に超えている。もう、なぜここまで放置したのか、もう信じられません。よく生きていられたなと、不思議なくらい。こんな状態になって、のこのことこの病院にやってきたなんて、ある意味では医者を馬鹿にしている。まさかと思いますが、薬の副作用とか、そういうことで文句は言わないでくださいよ!」
「あ、わかりました。僕、帰りますよ。」
細い声で水穂はそう答えを出した。
「馬鹿にしていると思われるのなら、仕方ありませんので、帰ります。僕も、先生を馬鹿にしているつもりは毛頭ないのですが、わかっていただくことはないと、はっきり分かりましたので。」
「そうですか。もう、好きにしてください。ここまでひどい状態であれば、手を出しても無駄骨折りするだけでしょうから。そのほうがよほどいいかもしれません!」
「はい。」
予想していた通りの展開であったが、やっぱりいい気持ちになるということはない。医者を馬鹿にしているなんて言われたら、こちらのほうが悪いということになる。
「ありがとうございました。」
軽く頭を下げて、水穂は診察室を出た。
一方そのころ、製鉄所では。
「帰ってくるの!?」
思わず、受話器を落としそうになってしまう恵子さん。実は、4時間以上たっても帰ってこないので、たぶん入院させてもらうことができたと、安心していたのである。
「はい。とりあえず、薬局に行って、薬もらって帰りますが、まだすごい混雑していて、もうしばらく待ってから帰ります。すみません。遅くまで心配をかけてしまいまして。」
薬局にあった公衆電話で、水穂は製鉄所に電話をかけていたが、周りでは大量の患者たちが、薬をもらうために待機していた。
「なんだ、それじゃあやっぱり、たいしたことはなかったのかしら。あたし、あれほど派手にやったのであれば、もう即入院とかそうなるのかと思ったわ。」
「はい。たぶんそうだったと思います。すみません。ご迷惑をおかけしました。」
「あそう。わかったわ。じゃあ、ご飯を準備しておくから、帰ってきたらすぐ寝て頂戴ね。」
「はい。」
恵子さんは、電話を切ったが、困った顔をした。実は、もう入院させてもらうことができたのか、と安心したため、布団をクリーニング屋へ出してしまい、これから畳を張り替えてもらおうと、思っていた矢先だったのである。寝て頂戴ね、とは言ったものの、例の真綿布団は、先ほどクリーニング屋が持って行ってしまったので、布団はどこにもない。
仕方なく、恵子さんは、別の場所へ電話をかけ始めた。
「もしもし、ブッチャー?ちょっとお願いがあるんだけど。すぐに布団屋さんへ行って、布団一式、買ってきてもらえないかしら。そうなのよ、あたしてっきり、いつまでも帰ってこないから、入院させてもらたのかと思って、布団、クリーニングに出しちゃった。だから代わりのを、すぐに買ってきて頂戴。できれば、真綿布団で。」
「あ、わかりました。じゃあ、すぐに買いに行きますから、待ってて下さい。たぶん、薬局でもかなり待つと思いますので、すぐにかえっては来ないと思います。だから、そんなに急ぐ必要はないとは思うんですけど。もし、先に帰ってきたら、仕方ないから、縁側でも座って待っててもらうとか、してくださいね。」
須藤聰が、そういってくれるのはありがたいが、縁側に長時間座るのは無理なのではないかなと恵子さんは思った。
「じゃあ、すぐに買いに行きますから、いったん切りますよ。」
「お願いね。」
これで、畳を張り替えるのは、また先延ばしになった。もう、いい加減に畳を張り替えるべきだと計画していた恵子さんは、絶好のチャンスを逃してしまったことになる。
数分後。聰が布団屋さんから戻ってきた。
「すみません。買ってきたにはいいのですが、こんな変な布団しか売っていなかったんですよ。真綿布団はあるかと言って店主さんに聞いてみましたが、ちょうど在庫切れで、あるのはこのセットしかないということで。すみません、こんな幼稚な柄で、、、。」
そういって、聰は担いでいた布団を持って入ってきた。一応、真綿布団なので、きらびやかに光っていることは確かなのだが、色は緑色だった。
「何よこれ。子供サイズ?ちょっとかわいそうでは?」
まあ、確かにジュニアサイズであるが、水穂の身長が五尺と一寸程度しかないことを考えると、使えないことはなかった。
「一応、アレルギーのある子どもさん向けに作った、近江真綿の布団だそうです。前と同じ近江真綿なんですけど、小さな子供さんのために、こういうキャラクターが付いてまして。」
聰は、布団をケースの中から取り出して、手早く敷布団をしいて、枕を置いた。確かに、大人サイズに比べると、少し小さいものである。小学校高学年くらいまでの子供をターゲットにした布団だろう。
「すみません。こんな子供っぽい柄で、、、。」
聰が申し訳なさそうに掛け布団を敷いた。それを見て、恵子さんは笑いたくなってしまう。中心に、河童のキャラクターがでんと描かれていて、隣に「河童のさんぺい」と書かれていた。
「やだ、河童のさんぺい?」
「はい。これしか在庫がありませんでした。近江真綿が、、、。」
確かに河童のさんぺいは、現在幼児番組の代名詞的なテレビアニメで、子供であれば、誰でも見ているといわれるほど、流行している番組であった。時折、電車の中などで、同じキャラクターが描かれたカバンを持っていたり、キャラクターのついた服を着用している子供は数多く見受けられる。
「いくらなんでもこれでは怒るわよ。大の大人が、こんなキャラクターの布団で寝かされる羽目になるとは、、、。」
確かにそうかもしれない。それに、水穂がテレビを嫌うのは、製鉄所のメンバーであればだれでも知っている。
「まあ、でも、これじゃないと寝るところがなくなるから、クリーニング屋から布団が戻ってくるまで、これで寝てもらおう。」
「すみません。返品できないので。」
聰は、頭をかじりながらそう答えた。
数分後。ガラッと玄関のドアが開いて、弱弱しく、ただいま戻りました、という声がする。
「あ、どうだった?何か言われた?」
とりあえず恵子さんが、玄関に行って出迎えた。水穂は疲れ切った表情で、草履を脱いでいた。とりあえず、右手には、薬が入った風呂敷包みを持っていたが、果たしてそれがなんていう薬なのかは、まったくわからなかった。
「特にありません。すみません。遅くなってしまって。」
それだけ答えると、せき込みながら、中に入っていく。
「もう、辛そうじゃない。まあ確かに病院は疲れるけどさあ。何か大掛かりな検査でもあったんだと思うけど、つらかったら、なんで、」
と、言いかけて恵子さんはまた黙る。その表情はなんとも辛そうで、むやみに聞き出してはいけない気がした。
「もう、疲れたんなら、休もうか。あたし、布団をクリーニングに出しちゃったのよ。だから、ブッチャーに買ってきてもらった。ちょっと子供っぽい布団で申し訳ないけどさ、これで我慢して。ほら、寝よう。」
恵子さんは、よろよろと歩いていく水穂を心配しながら、そのあとをついていった。四畳半にたどり着くと、須藤聰が、着替えである浴衣なんかを準備して待っていた。
「すみません。新しい布団を買ってこようと思ったのですが、なんとも子供っぽいデザインの布団しか売ってなかったんです。しばらくですけど、これを使ってください。」
中には、緑色の地色に、河童のさんぺいのキャラクターが描かれた、ジュニアサイズの真綿布団が敷いてあった。以前と同じ、近江真綿のロゴが貼られていたので、近江真綿に間違いはなかった。そこだけははっきりしている。
聰も恵子さんも、水穂がなんだこれと言って怒るだろうなということを、予想していた。すみません、と改めて言おうと思ったが、
「あ、ありがとうございます。」
の、一言だけが返ってきた。二人とも、予想外の反応に、力が抜けてしまう。同時に、
「えーと、塔野澤さんに郵便でーす!印鑑をお願いします。」
と、でかい声で、郵便配達の声がした。
「あら、最近歌丸師匠のディスクを買った覚えはないけど?」
恵子さんはびっくりしてそういうが、
「早くしてください!次にお届け物をするお客さんもいるんです!」
と言われたので、急いで玄関先へ行った。もうとっくに忘れていたが、新しい姿見鏡のついたタンスを、注文していたのだった。これは結構大きなサイズだったので、女性一人では運べなかった。いつ頼んだのかと思ったら、一か月以上前だった。先日の大地震で発送が遅れていて、今やっと届いたのである。
「ちょっと手伝ってきて。」
水穂がそっと言ったため、聰も、なんでこんな時に届くかなあと思いながら、玄関先に行った。後ろから、せき込む音が聞こえてきたが、それも静かになった。
しかし、その洋服ダンスは大きすぎて、恵子さんの部屋に設置するのは結構時間がかかった。作業をし終えて、聰は、急いで四畳半に戻っていく。恵子さんも中身を入れ替える作業を終了してから、そっちに行くからといった。水穂さんと言って、ふすまを開けてみたが、反応はなかった。
恵子さんが、中身の入れかえ作業をして、改めて四畳半に戻ってきたところ、聰は、ふすまの外で心配そうに中を見つめている。
「どうしたの?」
思わず聞いてみると、
「いや、水穂さん、どうやら眠っているんです。今眠ったんじゃないですよ。だって、あんなに深く静かに眠っているもの。睡眠薬でも処方されたんじゃないですかね、、、。」
という。恵子さんが部屋をのぞくと、確かに河童のさんぺいの布団で、水穂は静かに眠っていた。
「よく受け入れてくれましたね。ディズニーだって好きではないと宣言していた人が、良く使ってくれたものだ、、、。」
確かにそうである。もともと、ミッキーも好きではなく、映画のスターウォーズでさえも嫌いだと言っていて、受け入れなかった人物だ。
「そうね、、、。好みが変わっちゃったというか、、、。」
恵子さんと聰は顔を見合わせた。
その間にも、水穂は静かに眠ったままだった。もう、疲れきっていて、起こさないでくれとでも言いたげな感じであった。
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