第8話 冬
ロンと冬とくれば東京に大雪が降った日のことを思い出す。東京ぐらしの長い姉と私は、雪に対する知識が乏しく、まだまだ吹雪いている真っ只中にロンを河川敷へと連れ出した。
ロンは寒さを忘れ、降り続く雪にテンションがあがったようで、私達の期待通りに楽しく歩を進めていた。河川敷につくとロンの脚が、ほぼ埋まってしまうくらい雪が積もっていた。私と姉はロンのリードを離し、お互い遠いところからロンを呼んで雪の中をめいっぱい走らせた。
最初は楽しんでいたロンだったが、脚に雪の塊がついて取れなくなってしまった頃、冷えてしまったのか急に元気がなくなった。動けば動くほどその塊は大きくなるし、それに気がついた私達もどうにか雪をとろうとしたのだが、毛に絡まって全くとれなかった。
もう帰ろうかと急いで連れ帰り、温かいお湯のシャワーを浴びせ(ロンはお風呂が嫌いなのだが)、ドライヤーでしっかり乾かして、風邪をひいた様子も見せないロンだったが、以来、雪の降る日は散歩に行くのを嫌がるようになってしまった。
せめて吹雪いていない時に連れて行くべきだったのかもしれない。今となってはいい思い出だが、ロンの中にはどう残っているのだろう。辛い思い出になっていなければよいのだが。雪の中に外へ行きたがらない様子を見ると、その願いは叶っていないような気がしてならない。
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