第4話 夏
ロンを抱き上げ膝の上にのせて、ものの数秒で降りるようになると夏が来たなと感じる。
新しい場所と人間に緊張していたロンだったが、いつしか抱っこをされるのが大好きになっていた。最初に抱き上げた時は、脚をピンと張るもんだから、こちらも持ち上げづらくて、ロンも抱き上げる方も、余計な力を使い苦労した。ロンが安心してこちらに身を委ねてくれるようになって、随分抱きやすくなったが、常に抱っこをねだってくるようになるとは、想定外だ。
ロンは椅子に座っている人の膝の上にのせてもらうのが大好きで、椅子に座る人がいないか常に目を配らせ、座るやいなや近寄ってきて前脚をかけ、抱っこをねだるのだ。
だがエアコン嫌いの母のおかげで、エアコンは極力使わず、扇風機を駆使して夏を過ごしているような我が家だ。膝の上にのせてもらった瞬間からロンの息はあがり始め、十秒と経たないうちに降りたいと訴えてくる。ただでさえ暑い我が家に毛むくじゃらのロンがやってきたのは不幸としか言いようがないが、各自思い思いの工夫をこらしてロンが涼しく過ごせるようにしている。
ロンの水飲み場には氷が入れられ、首に巻くと冷たく感じられるグッズを買い、さらにはひんやりとした大理石まで導入された。結果としてロンは、大理石の上でタオルがまかれたアイスノンに頭を置いてだれている。
ロンの犬種はプードルなのだが、ペットとしてよく見かけるトイプードルより少し大きいミニチュアプードルで、体重としては六キロある。コーヒーを飲みながら本を読もうと椅子に座るのだが、ロンを抱き上げるとページがめくれなくなるので結局、何もできなくなってしまう。
それでも、ロンに抱っこをせがまれると断れない。今ではロンもこちらの呼吸に合わせて抱き上げるときにピョンと飛び上がるようになった。「すぐ降りるくせに」と言いながらも何度も抱き上げる私の家族はみんなやはり、ロンが大好きなのだ。
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