第266話 第10次元

 「アーサー!」



 うーん、目覚めスッキリ、疲れも無し。何時も通りの朝ー。

 隣で寝ているブランガスが私の肩に噛み付いているのも何時も通り。

 他の三神竜達も一緒のベッドに潜り込んでいる以外はな!



 「何だよ皆、狭いよ!」


 「だって、ブランガスばっかりズルいじゃないか。」


 「そうだそうだ!」


 「僕達だって、ソピアと仲良くしたいのさ~」



 何だよ皆。結局、フィンフォルムもそれかい! 前言撤回。

 それから、ユーシュコルパスさん、『そうだそうだ』以外言ってないよね。


 身支度をして階下に降りると、皆既に食堂へ集合していた。

 ケイティーは、賢者組に質問攻めに遭っていた。

 流石にお師匠は相手が女の子なので、気には成って居る様だけど、とりあえずは平静を装っている。でも、チラチラとヴィヴィさんとウルスラさんの方を伺って居るのは分かっているんだぞ。

 クーマイルマはというと、竜族連中に体中調べられていた。

 私が部屋の中へ入って行くと、私に気が付いた二人が私に助けを求めて来た。



 「助けてソピア!」

  「ソピア様!」



 二人は私の後ろへ隠れて顔だけ出している。



 「だって、こんな興味深い二人を放って置くのは、賢者として出来ない事なのよ~。」


 「二人は迷惑がってるよ。」


 「だあって~、興味深過ぎるのがいけないのよ~。」


 「そうで御座いますよ。」



 ヴィヴィさんとウルスラさんの目付きが怖い。



 「そんなの、ソピアを調べれば良いじゃない!」


 「あっこら、ケイティー! 私を売り渡す気か!」


 「ソピアちゃんも興味無いと言えば嘘になるんだけど、かけ離れ過ぎちゃって理解の外なのよ~。その点、その二人なら、未だ私達に近くて取っ付き安いというか~……」


 「あっ、ひっどーい! 私達をソピアの劣化版みたいに言わないで!」


 「そうですよ!」


 「あっ、いや、そんなつもりは……」



 ヴィヴィさんは、チョットマズイ発言をしてしまったのに気が付いた様だった。



 「はい皆、二人に謝って。」


 「「「「「「「ごめんなさい。」」」」」」」



 素直に謝ってくれたので、不問に処す。

 ただ、知識欲が抑えられないのが賢者というもの。後で私が知識を共有する事で手を打った。



 「知識を共有する?」


 「うん、朝食食べた後で、世界中の賢者さん達に、転送先の世界であった事や、現在までに判明している問題点を、圧縮記憶で送ります。脳が焼き切れそうになったら、受信をオフにすれば良いからね。」


 「脳が焼き切れるとか、怖い事をサラッと言うわね……」


 『!--では、世界中の賢者様達、圧縮記憶データを半刻(1時間)後に送信しますので、受け入れ準備をお願いします。受信中にもしも、頭痛、目眩、吐き気、倦怠感等の症状が出た場合は、直ちに受信を中止し、横になって安静にしてください。OK?--!』


 全世界の賢者へ向けて、テレパシーを送った後、皆の受け入れ準備が整う時間まで、朝食をゆっくり食べて、食後の甘いデザートと苦茶で一息付いた。

 星の裏側の、未だ夜の国の人達ご免なさい。時差通信もやろうと思えば出来ると思うんだけど…… あ、時差どころか、個々人の都合の良い時に受信出来る様にも出来るぞ? ダウンロードの途中休止、続きからの再開なんていう、レジューム機能も付けられそう…… うーん、まあ、今回は面倒臭いのでこのまま行っちゃおう。


 さて、時間になったので、送信開始っと。



 ………………


 …………


 ……








 「なんと! 転送先は、この星の内部じゃったか。そこに原初の神竜ヴァラハイスがおったと、ううむ……」


 「過去の神達の遺体が、クリスタルの中に安置されていて、星の動力の一部となっていたとか……」


 「驚きですわ、神々の棲む世界が、地下に在ったなんて。雲の上では無いのですね。」



 私達の体験して来た事を知って、皆驚いた様だった。そして、壊れかけの星のシステムを修復するという話しにも興味を示した。



 「それはそうと、グライダーカイト飛行術は興味深いのう。ソピーの言う通り、中等部から教えるのに丁度良いかも知れぬ。」



 切り替え早っ!

 確かに、星のシステム云々は、今直ぐどうこうって話じゃ無いけどさ。



 「ケイティーちゃんの、塑性加工術も興味深いわ。王宮魔導研究院よりも先に、個人で開発しちゃうなんて。」


 「ケイティー様には、そろそろ賢者の称号をお与えに成られたら宜しいのでは?」



 お! すごい話に成って来た。ケイティーも賢者になっちゃう?

 そして、あの魔導にも名前が付いたか。塑性加工術ねぇ…… 個人的にはもうちょっと短いネーミングが良かったな。



 「ソピアだったらどんな名前付けたの?」


 「ねんど術」


 「……」


 「あっ、あっちの世界にも魔族が居てね……」



 おーい、スルーするなよー。

 ねんど術、そんなに駄目かなー。粘土術、うーん……



 「何ぶつぶつ言ってるのよ。さあ、登校時間よ。」



 ケイティーとクーマイルマにがしっと両脇を抱えられた。



 「な、何よ。」


 「そろそろちゃんと学校行かないと、出席日数が足りなくなるわよ?」


 「ソピア様は、ちゃんと捕まえていないと直ぐに何処かへ行ってしまうので。」



 はいはい、もう、ちゃんと行きますよ。

 だけど、私って既に学校行く必要が有るのかな?

 ケイティーやクーマイルマもそうだよ?



 「言われてみればそうなんだけど、ヴィヴィさんとの約束だから、ちゃんとしましょう。」


 「分かったよ。じゃあ、……はい、到着。」


 「「えっ? ええっ!? いつの間に!?」」



 空間扉を出して移動するまでもなく移動完了。

 第10次元理解で、私、出来ない事が無くなっちゃったんだ。もう、末期だな。

 あの世界から帰る時に扉を出したのは、分かり安い移動アイテムとして、記号的に利用しただけなんだ。今では移動しようと思っただけで、何処にでも移動出来るよ。

 私が理解し想像出来る全ての事象は実現出来るのはもとより、想像の外までも実現可能なんだ。ちょっと意味が分からないけれど、理解していないけれどこうだったらいいな、レベルでも実現可能って事なのかな。いや、想像出来ない事すら可能って事なんだ。もう、本当に意味が分からないよね。

 でも、私はそれを理解しているらしい。だって、出来ちゃってるんだから。なんだか変な気分。


 お伽噺の魔法使いみたいに、『お前をカエルに変えてやろう』だって出来ちゃうし、『この星、この宇宙も無くなってしまえ』も考えただけで出来ちゃう。ヤバ過ぎる。



 「あ、ああ、そうなのね……」


 「二人に課題を出します。空間扉を開ける様にして置いて下さい。私からの課題。」






 次の瞬間、私は二人の目の前から忽然と姿を消した。




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