第263話 必殺
『!--ちょっとまて、何故我のコピーである中央神格の、そのクライアントであるお前の攻撃が、我に届く?--!』
「あらぁ? ここでは私~達のぁ~、全ての魔導を使える様に~してくれたのではなかったのぉ~?」
ブランガスが一番最初に手を出しちゃったけど、その場で変な怒りに包まれていたのは、私達全員だったかもしれない。
気が付くと、私は最後の光の柱が立ったあの時の様に全身が輝いていた。それはもう、電球の様に眩しく輝いていた。
全てのマナが完全回復している。しかも、変な怒りで3割増し位な感じでパワーアップしているかも。
ブランガスは竜形態になった。
あれ? でっかくなっちゃった? さっきまでの体よりも2倍位大きくなってない? ヴァラハイスと同じ位の体格になっちゃってるよ?
『!--ソピアちゃんのエネルギーが、流れ込んでくるのよ~。--!』
巨大怪獣二体の殴り合いだ。
仮にも神なんだからさー、もうちょっと戦い方ってもんが有るんじゃないの?
ブランガスがナックルパンチを繰り出せば、ヴァラハイスも拳で受ける。
ヴァラハイスが火炎を吐けば、ブランガスも火炎を吐いて相殺する。
あれ? もしかして、互角に戦えてる? ここ、ブランガスだけで事足りてちゃったりしてるんじゃないの?
私達が加勢したら、あっさり決着ついちゃわない?
じゃあ、私も加勢して、サクッと決着付けちゃいましょうかね。ケイティーとクーマイルマは危ないから、ちょっと下がっててと言おうと思って見たら、二人の様子も何だかおかしい。
ケイティーも体が輝いて、頭の上で光がハレーションを起こして聖光輪みたいなの出ちゃってるし、背中のそれ何!? 白い翼みたいなの出ちゃってますよ?
クーマイルマも輝いちゃってるよ? 額から三本目の角がメリメリと生えて来て、背中には竜の翼が……
二人は目で合図をし、頷くと飛び上がり、宙を舞った。あ、飛行術? 魔導使えるんだもんね。てっきり翼で飛んでるのかと思ったよ。あの翼、何の為に生えたんだ?
ケイティーの光る剣の斬撃が、ヴァラハイスの防御障壁を切り裂く。クーマイルマの輝く矢が、その隙間を縫い、黄金の鱗を貫通する。……私は、ただ見ているだけ。
「なんなん、これ?」
私は、私をチラチラ見ながら戦っているクーマイルマをちょいちょいと手招きすると、傍に呼んだ。
いそいそと飛んで来たクーマイルマの手を取ると、
『!--今なら出来る気がする。クーマイルマ、アンヂ魔導で私と同じ事をして。--!』
『--は、はい! ソピア様と同じ事が出来るかどうか分かりませんが、頑張ります!--』
私は、クーマイルマと手を繋いだまま、意識を同調する。
私の膨大な思念がクーマイルマの中へ流れ込み、彼女は戸惑っている様だ。
「魔導リアクター!」
「アンチ魔導リアクター!」
二人の頭の上に、逆回転する円環が出現する。
魔導リアクターは、電子流を取り出す装置。アンチ魔導リアクターは、
「からのー、
「からのー、
魔導リアクターの上にもう一つの円環が出現し、リアクターから取り出された電子流が注入され、加速されてい行く。
クーマイルマもアンチ魔導で反粒子を取り出し、加速する。
膨大な量の電子流、陽電子流は、亜光速まで加速されて行く。
『!!--みんな! 大技使うから、ちょっと私達の後ろへ避けて!--!!』
「「えっ?」」
戦っていた、ブランガスとケイティーが私達の方を振り返り、何かヤバげな事をしそうだと察知したのか、そそくさと戻って来て後ろへ下がってくれた。
「「ソピ・ルマ、コレダー!!」」
説明しよう! コレダーとは、
衝突の事を英語でコリジョンと言うが、衝突させる機械なので、コライダーである。
コライダー、コリダー、コレダー等、言語により多少呼び方が異なるっぽい。
私とクーマイルマは、亜光速まで加速された電子と陽電子流の円環をヴァラハイスの体の手前で重ね合わせる。
その中に流れている莫大な量の2本の相反する電子ビームは、正面衝突を起こし、対消滅により莫大なエネルギーのガンマ線を生み出し、ヴァラハイスの体の原子構造を破壊する。
ババババババババババ!!!!
言葉では表現が難しい様な音が響き渡る。
『!--ぐあああああああああ!!--!』
「「ウルトラ上手に焼けましたー!」」
ヴァラハイスの胴の正面は、超強力なガンマ線のビームにより焼けただれ、大きな穴が開いていた。
しかし、その穴は瞬く間に修復され、塞がって行く。
『!--ぐうううううう……--!』
「必殺のコレダー攻撃が、まるで効いていない…… のか?」
『!--ちょ、ちょっとたんま。待て、かなり痛い。というか、我はソピアの力を知りたいのだ。取り巻きにばかり戦わせて見物に回るな。--!』
「「「まあっ! 取り巻きとは失礼ね!」」」
ああ、言われてみればそうか。此処までやって来た、私の力を図りたいんだったっけね。
「いいよ、じゃあ、皆下がってて。」
『!--よし、では仕切り直しだ。--!』
第二試合、タイマンバトル開始。
「魔導リアク……」
『!--そうはさせるか!--!』
ヴァラハイスの輝くブレスが私を襲う。
私はそれを障壁では受け止めないで、とっさに横へ飛んで躱した。
「あつっ!」
避けて正解だった。これは、何かの物理的なブレスではなくて、何らかの粒子流だ。光の様に、透明な障壁では遮れない可能性がある。
掠った左足首の辺りが火傷の様になってしまい、組織が壊死してしまった。
「ソピア様!」
クーマイルマが、私が戦闘で怪我をした所を初めて見たので、心配して駆け寄ろうとするのをブランガスに止められていた。
私は、クーマイルマに見える様に左足を上げ、自己修復して見せ、サムズ・アップして笑顔を見せてあげた。
クーマイルマは心配性なので、大丈夫なのを大げさに見せてあげないと取り乱すからね。
さて、でも困ったぞ。私の最大威力の
だとすると……
「あれは駄目だからね!」
ケイティーに先を越されて止められてしまった。未だ何も考えてなかったのに。
「あ……」
ティン! と閃いた。
全部の魔導が使えるって言ったよね。確かに言った。という事は、空間扉も?
私は、試しに、私とヴァラハイスの間に空間扉を出してみた。
でーんと、ピンクの扉が出現した。
『!--な、何をするつもりだ?--!』
ニヤリ。
私は、不敵な笑みを浮かべると、ドアのノブに手を掛け、
マッハ22の速度で飛翔する鉄塊が、扉を出た瞬間に空気の断熱圧縮による高熱で融解し、ヴァラハイスへ衝突した。
激しい轟音と閃光が発生してびっくりした。
的が近すぎちゃった。反省。これでは向こうも避ける暇も無かっただろう。
爆炎が収まるのを待って、良く見てみると、ヴァラハイスの上半身が無かった。
「あちゃー…… やっちまった。」
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