第214話 全部混ぜたら?
私が料理に言及し出したので、今まで遠巻きに見ていただけの、新しく王宮から来た料理長さんも食い付いて来た。
でも、こっちの国で茶碗蒸しを作るには、魚介は無いし、三つ葉みたいな香草も無さそう。というか、鰹出汁も昆布出汁も無い。有るとしたら、ブイヨンスープか? ブイヨンで作った茶碗蒸しは、どんな物になるんだろう? 肉も、脂の少ない鶏肉が適しているのだけど、こっちにあるのは、野鳥の肉で、硬いんだよね。
あ、鶏肉に似た食感と言えば、ロックドラゴンの肉があった! あれで代用出来るかな? 何か、仕上がりが怖いな……
それよりも、石窯のオーブンだと、熱のコントロールが難しいぞ? プリンも茶碗蒸しも、熱が足りなければ固まらないし、熱が強すぎるとボソボソの食感に成ってしまう。火加減が非常に微妙で、薪の火でそれを上手く出来るかどうかが微妙だ。
焼きプリンは諦めて、素直に蒸しでいくか。蒸気ならコントロールし安い。
厨房全員で、あーでもないこーでもないと試行錯誤を繰り返していたら、夕方になってしまった。
「新しい料理を研究開発するのがこんなに楽しい事を、遠く忘れていた気がします。」
「我々も、こんなに楽しい時間を過ごしたのは、久しぶりです。時間が経つのも忘れていました。」
うん、私も楽しかった。
でも、私達は試食でいっぱい食べたけど、屋敷の他の人達はお腹を空かせている頃だから、そろそろ通常業務に戻りましょう。
厨房を出たら、案の定皆揃っていた。
私が厨房を出たら、皆が一斉にこっちを見る。怖いから止めて!
「あれー?何時もより人数多くない? 国王夫妻に、エウリケートさんは分かるとして、んん? 人竜のお初な人達が居るぞ?」
んーと、プロークとブランガスは良いとして、その他に7人、知らない顔が居るんだよなー……、あ! ブランガスと同じ顔の色違いの白い奴! ユーシュコルパスじゃん!
他にも、青色と黄色の同じ顔も居るぞ!?
「やあ、ソピア! 僕も美味しいお料理食べたくて来ちゃったよ!」
「子猫ちゃ~ん、僕の事もお忘れなく、頼むよ~。」
ちょっと待て、気のせいかな? ここに四神竜が集結している様に見えるんだけど?
てゆーか、何で全員私の将来の姿の同じ顔なの? 色違いで戦隊モノかよ!
「それよりも、四神竜よ。 皆が一箇所に集結してしまっても問題は無いのか?」
「無いぞ。」
「無いわよ~ん。」
「全然平気ー。」
「大丈夫さ~。」
「そ、そうか。割と自由なんじゃな……」
まあ、問題無いなら良いか……、ホントに? 本人……本竜達がそう言って居るんだから、良いか。
世界のパワーバランス……国毎の戦力的な意味じゃなくて、エネルギーバランス的な意味で、この星の各地にバランス良く配置しているものとばかり思っていたよ。
本当に平気なのかー? 星の重心的な意味で、バランス崩れたりしてないのかな? 黒玉をあっちこっちでポンポン作り出してる私が言うのも何だけどさ。結構そんなにシビアなものでもないのかもね。ちょっとバランスが崩れたくらいじゃ、後で適当に修正されたりしてるのかも。人体なんてそんなもんだし、星だってそんな感じなのかもね。
それよりも、初めて見る顔が4人居るんですけど、そちらはどなた?
「酷いよ、ソピア!」
「僕だよ僕!」
「あたしです!」
「こ、これっ! ソピア様と四神竜様の御前でその言葉遣いは何ですか! 申し訳御座いません、ソピア様、神竜様。我が子達がご無礼を……」
「えっ、その喋り方は、飛竜親子? いつの間に脱皮完了してたの!? 出てくるなら教えてよー!」
「はい、ソピア様がご熱心にお料理の研究をなさっておりましたので、私事で煩わせる訳にはいかないと思いまして……」
なんだよー、もう! 料理なんかより飛竜達の脱皮に立ち会う方が大事だったよー!
そういうとこ! もう! そういうとこ分かってないよ! そういうとこだぞ!
「あわわ! も、申し訳御座いませんでした! 如何様な罰でもお与え下さい!」
「だから! そういうとこ! 大事な家族に罰なんて与えるわけ無いじゃないかー! やめてー! もう!」
「ははっ!」
すっごい恐縮している。困ったなー、もう。もっと気楽に接してよー。神竜達みたいにさ。
「そ、それは無理……いえ、善処致します。」
そんなに難しい事なのか? 我儘言っているのは私の方なのか? エウリケートさんは、ちゃんと空気読んでくれてるのにな。
そんな事より、飛竜達のその姿だ。翼と腕が別れたよね?
「はい、正竜へと進化させて頂きました。」
「え? マジで? 進化って、そんな簡単に出来ちゃうものなの? ポ○モンみたいだな。」
「ソピアよ、我の言った通りであろう? そなたの神気によって、それに当てられた者達は、皆ステージが上がっておるのだ。我々四神竜も例外無くな。」
「そうだよ! ブランガスばっかりずるいから、僕達も来ちゃったんだよ。」
なんてこったい! そんな効果があったとはね! じゃあ、不公平に成らない様に、もっと外に出て、皆に分け与えないと。
「そうなのよ。だから、ソピアちゃんを学校に通わせて、外国の子供達とも触れ合わせているのよ。」
「ほう、ヴィヴィは、大局が見えておる様じゃな。」
凄いな、お師匠といい、ヴィヴィさんといい、エイダム国王も皆が世界を良い方向に動かそうと、ちゃんと考えているんだ。
私だけが毎日ぼーっと生きている感じがして、何だか置いてけぼりになってしまいそう。
『!--(一番先頭を走っている子があんな事考えているのよ~、どう思う?)--!』
『!--(自覚が無い所がソピアの良い所なのだ。)--!』
『!--(僕もそう思うよ~。)--!』
『!--(その通りだね!)--!』
ちょっとそこ! 思念で内緒話しているのは分かってるんだぞ! 内容までは分からないけど。
「ソピアちゃんは、そのままでいいよって話していたのよ~。」
話しながら、すすっと背後に近付いて来たブランガスに思いっきりハグされた。
「だから、直ぐ抱き着くー!」
「狡いぞ、ブランガスばっかり!」
「僕も僕もー!」
「僕も混ぜてもらうよ~。」
エバちゃま、指咥え無いの!
そんなこんな巫山戯ていたら、夕食のお料理が出来たみたい。
ミネストローネスープっぽい、お野菜をふんだんに使ったスープや、鴨肉のオレンジソース掛けとかが出た後に、鴨ささみ肉とロックドラゴンの肉にトリュフも入った、ブイヨンスープの茶碗蒸し、食後には、カスタードプリンにソフトクリーム乗せのデザートという、なんか、色々と何処の国の料理だ? 高級なのか庶民的なのかも分からないって感じの物が出てきたけど、どれも美味しゅう御座いました。
「そうだ! 四神竜が集結しているから調度良い! ちょっとお願い聞いてくれる?」
「何だ? 我々に出来る事なら何でも良いぞ?」
私は、四神竜達に水筒を一本ずつ渡し、その中の水にマナをチャージしてくれる様に頼んだ。
四神竜は、お安い御用とばかりに、やってくれた。
水の色は、案の定、竜毎に色が違っていた。
火竜ブランガスは赤、地竜ユーシュコルパスは緑、水竜ヴァンストロムは青、空竜フィンフォルムは黄色だった。
「あ~ら、ユーちゃんだけは、体の色と一致していないのねぇ~?」
「そう言えば、文献によると地竜は昔、緑色だったとあるな。」
「今は、幼竜だからね。保護色なんでしょう、きっと。」
アザラシの赤ちゃんみたいな感じなのかな。
生物界最強の生物が、一体何から身を守っているのかは知らないけどね。
私は、自分の金色の水を取り出し、四神竜にチャージしてもらった水に並べて置いた。
赤、緑、青、黄、金。5色の光る水。
「ねえ、この水を全部混ぜたらどうなるのかな?」
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