第108話 ランク昇格試験その3
あれっ? 目の錯覚じゃない。本当に2頭居るよね。
ドラゴンって、分裂するの?
いや、片方は幻術的な、何かの魔法? お師匠の光学魔導みたいなやつ? いや、どっちも実体だぞ。触れる……
むむむ? 何だよ皆ニヤニヤして。
「あー! 分かった! 片方はヴェラヴェラだな!?」
「さて、どっちが本物でしょう?」
「こっちが偽物だな!」
ビシッと指を差す。
どっちが本物でしょうと問われて、偽物を指差すというのは、果たして正解になるのであろうか?
てゆーかさ、トロルがうちに居るっていうのは秘密じゃなかったっけ?
王様達全然動じていないんだけど、説明済みなのか?
そう思ってお師匠とヴィヴィさんの方を見ると、ニヤニヤしている。王様達を見ても、ニヤニヤしている。
そうか、この悪戯を考えたのはあんた達ですか。そうですか。この年寄りの悪ガキ共め!
最初は、王様達を驚かせようと仕掛けたらしいんだけど、私が寝坊しているのを知った王様が、私にも仕掛けてやろうと画策したらしい。爺婆の悪ガキ4人組だ。
「あーあ、簡単に見破られちゃったよー。あたい、結構変身には自信があったんだけどなー。」
「なんかね、重さ感というか、空気感と言うか、オーラ的な物が違ったんだよね。」
「うむー、姿形だけ真似ても駄目って事なのかな?」
『--トロルの変身術は中々興味深いな。練習すれば我にも出来るように成るであろうか?--』
「当分暇だろうから、ヴェラヴェラに教えてもらって、練習してみたら良いかもね。」
『--うむ、よろしく頼む--』
「お安い御用だよー。」
ヴェラヴェラも何だか嬉しそうだ。
人化出来なくても小さく成れるなら、屋敷の中に入って眠ったり、一緒に食事したりも出来るかも知れない。
「さて、ではわしはエピスティーニへ行って研究に勤しむとしようかの」
「ロルフ様、その前に倉庫の中の財宝を王城の宝物庫へ出して行って下さいまし。」
「おう、そうじゃったな。」
「あなた達もね。」
私とケイティーの方を見た。
そうだった。私も忘れるところだったよ。満杯まで入れてあるから、出さないと他の物が入らられないや。
「でも、お城の宝物庫であの量全部収容できるの?」
「取り敢えず、二階のダンスホールと四階に在るパーティー大会場を立ち入り禁止にしてそこへ出しましょう。入り切らない分は、ソピアちゃんのあの空間に一先ず入れて置いてもらうという事で。」
まあ、それしかないかもね。一人の倉庫分でも体育館位の容積があるんだから、一人分ずつ仕分けしていかないとならない。全員の分を全部を鑑定して査定金額を出すのに、一体どのくらいの時間がかかるんだろう?
というか、仕分けが終わったとしても、それを全部収納する場所が無いのでは? 何処かに宝物庫を増設しないと駄目でしょ。
まあ、王城の敷地面積は、地球の単位で言うと一周凡そ5キロ、ほぼ皇居と同じ位の面積があるので、庭はかなり広い。東京ドーム位のコロッセオを造ったって余裕なのだ。宝物庫の増設なんて楽勝でしょうね。
ただし、かなり目立つと思うけど。目立つ宝物庫かー……
取り敢えず、冒険に差し支えるので、ケイティーの倉庫を空にさせてもらおう。私の分は、一先ずあっちの空間に移動させておくか。
「余らは、これで城に戻ることにしようか。」
「そうですわね、妾はソピアちゃんに乗せていって欲しいわ。」
「いいよ、じゃあ皆で一旦お城へ行って、倉庫の中身を放出しよう。」
「了解じゃ。」
「分かったわ。」
「では出発!」
お師匠とヴィヴィさんは、自力で、私は王様夫妻を乗せて、ケイティーとウルスラさんは自前の飛行魔導器でお城の中庭まで飛んで行った。
「わら……私ね、ソピアちゃんに飛ばせてもらうと、胸がドキドキしちゃうの。また冒険者をしたく成っちゃうわ。」
「おいおい、歳を考えてくれよ。とはいえ、余、おほん、俺も早く国政を王子に任せて、自由に旅行したいと思っていたところだがな。」
王様も王妃様も、堅苦しい生活が飽き飽きって感じなんだね。
その時は私が色んな所へ連れて行ってあげるよ。海底探検だって、宇宙旅行だって出来ちゃうよ。
王宮の中庭に着陸すると、ヴィヴィさんは城の中へ走って行った。
直ぐに戻って来て、三階の大会堂も押さえましたので、ロルフ様はそちらへお願いします。
「ケイティーちゃんは四階へ、二階は私の倉庫の中身を出します。ソピアちゃんは、一旦倉庫の中身をあっちの空間の方へ移し替えて置いてもらえるかしら? 量が多すぎて、新しい宝物庫を建設しないと収まりきれないわ。その時に出してもらうって事でいい?」
「いいよ。」
言っても、倉庫のサイズは体育館並なんだから、大広間と言えど満杯だろうなー。
価値有る物とそうでない物に仕分けして、有る物の金額を査定しなければならないのだから、大変な作業だよ。一体、どの位の時間が掛るのか、見当も付かないや。
王様達と中庭のテーブルでお菓子を食べて待っていたら、お師匠とケイティーが戻って来た。
案の定、全部は出し切れなくて、三分の一位は未だ倉庫の中らしい。皆がバラバラに持っていると不便なので、その残り分を出してもらって、私があの空間へ収納した。
「では、エイダム、エバ、またな。」
「おう、ロルフももっと気楽に遊びに来いよ。」
「わかっておるわ。ソピア達はこれからどうする?」
「私達は、一回ハンターズに顔を出そうと思ってる。」
「そうか、気を付けてな。では、エイダムとエバもまたな。」
お師匠はエピスティーニへ向けて飛んでいってしまった。
「王様と王妃様もお屋敷の方へまた来てね、お菓子どうもありがとう。」
私とケイティーは、ハンターズへ飛んだ。
ハンターズ掲示板前
「何か手頃なクエストは無いかなーっと。」
「もうさ、ソピアはドラゴンに勝っちゃうんだから、いい加減ランク上げといた方が良いんじゃないの?」
「うーん……ケイティーもそろそろ上げといた方が良いかな?」
「はっはっは! ドラゴンだと? お前らが?」
その声に振り返ってみると、ガタイの良い男が4人立っていた。
あれっ? こいつら何処かで見覚えがあるぞ?
「ソピア、アラクネーの時のアイツラだよ!」
ああそうだ、ケイティーの魔導倉庫目当てに、荷運びをやらせようとしていた奴らだ。
見ると、それぞれランクが2が二人に、ランク3が二人になっている。
連中、私達のハンター証の色を見ると、顔色が変わった。だって、当時はBランクで自分らの格下だと思って馬鹿にしていたケイティーのランクは今や4だし、私もあの時はランク2だったのが、今では5なんだから。
「あれ~? おじさん達、私達に何か用かなー?」
首から下げたハンター証をこれ見よがしにくるくる回して見せた。
「はん! ランク5だからって威張るなよ! 5程度でドラゴンを倒せるわけがねえ。法螺も大概にするんだな。それに俺達だって今日は昇格試験を受けて、お前達に並ぶ予定なんだからな!」
「予定ですか、へー。」
「じゃあ、早速昇格試験を受けましょうよ。」
私達は、カウンターへ行って、昇格試験の手続きをした。
何時ものモブAとBじゃ無いのが残念。名前なんて言ったっけな、忘れた。
またギルド長が一緒に来て、オークを狩るそうだ。私が居るので、記録のお姉さんの他に魔法を使える判定員をもう一人付けて、合計9人を運ぶ事に成った。これ、私、便利な運び屋になってないか?
「ソピア、私は自分の椅子で飛ぼうか?」
「いいよ、8人も9人も一緒だし。」
各自、傷薬とか食事の用意とか、弓の人は矢の補充とか、消耗品の補充をしに行って、再びハンターズの裏手の闘技場前に再集合。
「よーし、集まったなー、今からこのオチビが皆を運んで来れるからな。お礼を言っとけ。」
「オチビ言うな!」
「え? 運ぶってどういう事?」
ここで試験をするんじゃないの?」
ざわついてるね、うん、分かるよ。
では、しゅっぱーつ!
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