第107話 ドラゴンの居る生活
私が金銀財宝を謎空間に収納すると、お師匠とプロークが興味深そうに覗いてきた。
「そう言えば、わしはその中に入った事が無いのじゃが……」
『--入れるのか? のう、入れるのか? 入ってみたいのう!--』
「
「前に中で迷子になったら二度と出られないとか言ってたわよね。」
ヴィヴィさんは何故か自慢げで、ケイティーは及び腰。
まだ、生き物を入れて出せるのかは実験してないな。実験して、どっか行っちゃいました、てへっ、じゃシャレにならないので、未だ試せないで居たんだけど、やってみるか?
ヴィヴィさんの倉庫に偶々ロープが入っていたので、それで全員の体を繋ぐ。
プロークは、図体がデカイけど、ロープを首に回してなんとか全員を一つに繋ぐ事が出来た。
「じゃあ、いっせーの! で入ってみるよ。いっせーの!」
皆で空間の穴に飛び込んだ。
穴はすぐに閉じ、全天スクリーンの球体の中に入ったみたいに映像が回る。
「前の時、二人の意識を合わせないとバラバラに何処かへ飛んでいってしまって、迷子になるって言われましたわ。」
「うーん、大丈夫……みたいだね。私の意思でコントロールされているみたい。」
「空間を開いた人の意識しか受け付けないのか、または一番魔力の強い者の意思で制御されているのか、どちらかの様じゃな。」
「後者かも知れません。前回に入った時は、
「ちゃんと出れるよねー?」
『--我は長年生きてきて、この様な体験をするのは初めてじゃ。--』
この空間の特性として、前にヴィヴィさんには解説したのだけど、私の見解と前置きをして、もう一度全員に説明する。
1.中は、外とは空間的にも時間的にも縮尺の比率が違っている様だ。
2.中から外は見えるけど、外から中は見えない。
3.外にある物体は全て貫通する。
4.水中や宇宙空間に出ても、呼吸出来るし寒くも熱くも無い。
5.移動は一瞬で出来る。
6.中に物を収納すると、外でいくら時間が経っていても、収納した瞬間の時間にアクセスして取り出す事が出来る。
7.量の有るものを分割して取り出せない。入れた状態のまま全部が出てきてしまう。
8.物の収納は前にやって取り出しにも成功したけど、生き物では今が初めて ← NEW!
「私が今まで検証した処では、こんな所かな。」
「ちょっとソピア! 8番目のがすっごく気になるんですけど!」
「まあまあ、なんとかなるじゃろ。」
「色々行けて楽しいわよー。」
『--移動してみようぞ--』
「ええええええ……」
魔導師連中は、物事大体なんとかなると思っている。不安感よりも好奇心の方が勝つみたいですね。
ケイティーだけが不安がっている。人数比でケイティーだけがビビりみたいになっちゃっているけど、彼女の反応の方が普通だからね。
「じゃあ、雲の上とか行ってみる?」
「え? 天界に行けるの!?」
「ああ、それなんだけど……」
雲の上へ、そして、成層圏へと登ってみた。
「えええ、なにこれ……。真っ暗で何も無いじゃない。」
『--大地は青くて綺麗だぞ!--』
「むうう、こんなものが見られるなら、もっと早く頼むべきじゃった。」
「次は何処行く? エピスティーニへ行ってみる?」
天界など無かったのだ。……いや、在るのかも知れないけどね、別次元とかに。でも確かめ様が無いよね。
一歩でエピスティーニの展望室へ到着。
アクセルが忙しなくコンソールを操作している。
何かがセンサーに引っかかったらしく、首を傾げている。古代の科学力は別次元の空間を探知出来たりするのか、すごいな。あれ? という事は、地球の事も分かったりするのかな? 興味あるな。
「次はエウリケートに会いに行こう。」
森の工事現場へ一歩。
「ほう、バシリスコス災害の現場は、大分処理が進んでおる様じゃな。」
エウリケートさんが、何か気配を感じるらしく、辺りを見回している。
前回に来た時も反応したから、彼女もこの空間にアクセス出来る才能は有るのかも知れない。
「では、そろそろお屋敷に帰りまーす。」
一歩で王都の屋敷の中庭へ到着。
「さあ、到着しました、出るよ。前にヴィヴィさんには説明したんだけど、空間の特性が向こうとこっちでは、円錐形の底面と頂点みたいな関係に成っていて、向こう側からは面で空間の境界壁を破ることが出来るんだけど、こちら側からは、1点に強大な力を込める必要があるの。やってみせるね。」
指先にありったけの魔力を込めて、目の前の空間を突くと、円形にクモの巣状のの罅が走り、穴が開く。
皆を連れて、その穴から飛び出した。
「ざっとこんな具合。」
「本当に一瞬で移動出来るのね。飛行術なんて子供騙しに思えるわ。」
「これは凄い。研究のしがいがあるのう。」
「
「わしはエピスティーニの方で研究してみよう。」
ただ、これって、移動手段としては、魔力消費のコストが高すぎるんだよね。飛行術の方が遥かに燃費が良い。収納に関しても、魔導倉庫の方が使い勝手が良いし、魔力の消費も少ない。本当に緊急用って感じなんだ。
『--ソピアよ……、我は一緒にここへ来てしまって問題無かったのか?--』
皆が一斉に振り返った。
そうだった! 忘れていた! えーと、どうしよう?
「幸い、中庭は外からは見えんし、お主もその体では身動き出来んじゃろう。脱皮が済むまでここでじっとしておれば良いわ。」
「約束通り、それまでは私が面倒を見るよ。何か食べたい物ある?」
『--うむ、我は基本何でも食べるが、今は魚が食べたいぞ。--』
「魚かー。そう言えば、私も食べたいな。今度の休みにクーマイルマも連れて海へ行ってみよう。」
屋敷の中から、ヴェラヴェラと使用人達が出てきてびっくり仰天していた。まあ、そうなるよね。
プロークという、話の通じるドラゴンだから宜しくねと言っておいた。
後でウルスラさんとクーマイルマにも言っておかないと。
クーマイルマの暴言は謝らせとかないと駄目だよね。
皆の倉庫に入っている財宝は、後で王城の専門家に価値の在る物と無い物に仕分けしてもらって、総額を査定してもらう事に成った。
多分これも、私達の個人財産とするよりも、国に預けて利息を貰う事になると思う。
太陽石をヴィヴィさんが買い取ったり預かったりしてもらってるのも同じ理由なんだけど、こんなのを市場に流すと、経済とか相場とかが破壊されてしまうからなんだよね。王宮の倉庫に入れて、出すにしても徐々に放出するという事になると思う。
私の拾って来た太陽石は、今、重量当たり金の二倍の価格で取引されているけど、私があれを全部何処かに売ったりしたら、あっという間に暴落して、破産する人続出しちゃうからね。うちの国だけならまだしも、外国の経済まで破綻させかねないのだから、ヴィヴィさんが必死に買い取るわけだよ。同じ理由で、エピスティーニのあれも、かなりヤバイので、当分秘密に成ると思う。
夜になって、ウルスラさんとクーマイルマが帰ってきたので、二人にプロークが一緒に済む事になった経緯を説明する。
クーマイルマは、まだちょっとふくれっ面だったけど、一応暴言については謝罪させた。
ウルスラさんが私に祈ろうとしたので、必死に止めた。
屋敷の使用人達にも一人一人ちゃんと紹介して、屋敷外では他言無用と固く口止めをした。
あー、でも、王様には言っておかないとマズイか。そこは、お師匠かヴィヴィさんい任せよう。
今日は魔力を使いすぎちゃって、本当に疲れたよ。
次の日は、少し寝坊してしまった。
食堂へ行っても誰も居ない。皆学校や職場へ行っちゃった後かー。寝坊した私が悪いのだけど一人飯は寂しいな。
食事を終えて、プロークに挨拶しようと中庭へ出たら、皆が居た。
ああ、生ドラゴン見たかったのか。って、王様迄居るじゃん!
「あらあら、ソピアちゃん、お寝坊さんねー。」
「王妃様まで来てたの? ドラゴン見に来たの?」
「おう、ソピア、お早う。昨日は大変だった様だな。ドラゴンを眷属にしてしまうとは、いやはや、途轍もない子供だ。」
えー、別に眷属にした覚えはないよ。私が怪我させちゃったから、当分面倒を見る約束をしただけで。
って、あれ? ドラゴンが2頭居る?
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