第106話 また儲かってしまうのか

 ケイティー、この一晩で何があった。

 ドラゴンを彼呼ばわりだなんて! ソピア大ショックよ!

 ドラゴンは美女を攫っていって一体何をしているのでありましょうか。


 と、今はそんな場合じゃない。私はプロークを殺す意図は無かったんだ。当てない様にちょっと近くを通過させて、びっくりさせようとしただけなのに、まさか掠っても居ないのにこの威力とは……



 「治せそう?」


 「ううむ、これ程大きな欠損を復元する方法は、残念ながら無いのじゃ。」


 「痛みを遮断し、傷を塞いで出血を止め、残った部位の折れた骨や傷んだ組織を修復する処置は完了しました。」


 「うう、ひっく、ごめんなさいー。うあああ。死なないでー。」



 ケイティーが泣いている。罪悪感が半端ない。

 なんなの? ストックホルム症候群とかいうやつなの?


 私だって、プロークは、本気で死闘をするつもりなんて無かったのは分かってたんだ。

 じゃなきゃ、私がモタモタとEMLレールガンの準備をしているのを、攻撃もせずにじっと待っていてくれる理由が無い。

 ただ、魔族やトロルからも女神呼ばわりされる、謎の少女の正体を、あの破壊痕を付けたという私の能力を計ろうとしていただけだったんだ。

 分かってた、分かっていたのに……


 プロークは、ポロポロ涙を流す私の頭をそっと右手の指で撫でてくれた。

 あれ? 何時の間にか涙が流れてた。気付かなかった。


 お師匠とヴィヴィさんの懸命の治癒魔法で、なんとか傷口は塞がり出血も止まったのだが、失った腕や翼は戻らない。



 『--心配するな、この程度の傷は、次の脱皮の時には完全に修復されておる。--』


 「は?」


 「へ?」



 私とケイティーが間抜けな声を出してしまった。



 「そうなのか? 竜族がそういう体じゃとは初めて知ったわい。」


 「強がりじゃなくて? 本当にですの?」


 『--ああ、そろそろ脱皮の季節だからな、怪我覚悟で思い切ってやってみた。--』


 「ふううぅぅぅ、もう、びっくりさせないでよ!」



 私はプロークの体を拳でガンッと叩いた。



 『--ぎゃあ! お、おまえ! 傷口を叩くやつがあるか!--』


 「あうあうあう! ご、ごめんなさい!」



 しかし、ドラゴンも脱皮するんだ?

 やっぱり蜥蜴と一緒じゃん。

 思っただけなのに、右手の爪で頭を軽く小突かれた。あ、また口に出てましたか、ごみんちゃい。



 『--しかしロルフよ。とんでもない孫を持っておるな。--』


 「ああ、お前さんも昔から無茶しよる癖は治っておらぬな。自分の体の頑丈さを過信しすぎじゃ。」


 「二人は知り合いだったの?」


 「ああ、昔、一緒に戦った仲じゃ。」


 『--ロルフは老けたな。昔いつも一緒に居たつがいのメスはどうした?--』


 「なっ! 何を言い出す!」



 じじい、顔真っ赤だぞ。



 「あ、それ、多分私のおばあちゃんです。去年亡くなりました。」


 『--そうか、お前リーンの孫でもあるのか、道理で。……しかし、人の一生とは短いものなのだな。--』



 しんみりしてしまった。

 プロークは、ジジババの昔をよく知っているみたいだぞ。

 後で色々聞き出してやろう。



 「それはそうと、この山に衝突したっていう物を見せてほしいんだけど。」


 『--良いぞ、着いて来い……と言いたい所だが、この通り今は飛ぶ事が出来ぬわ。--』


 「心配ないよ。私が持ち上げるから、場所を指示して。」



 私はプロークを持ち上げ空中に浮かぶと、ビックリしていた。



 『--お前、凄いな。--』



 多分、王都の有る側の斜面だと思うので、そちらに沿って降りて行くと、大体中腹辺りに教えてもらうまでもなく、でかいクレーターが在るのが直ぐに目に入った。



 「これ……かな?」



 第二火口の様にも見えるけど、衝突痕……かなあ。



 『--いや、我は見ていたのだ、何かが飛んで来て衝突する様を。--』



 うーん、じゃあ間違いないのかな。

 でも、あの荒れ地からここまでは一直線で途中に障害物は無いとはいえ、距離にして500リグル(800キロ)は離れていると思うんだけどな。そんなに飛んだのか。



 「次は、崩れたっていうあなたの巣穴を見せて。」


 『--うむ、この山の向こう側だ。--』



 片手で、空も飛べないとなると生活が不便だろうと、脱皮が完了するまで私が面倒を見るという約束をした。



 『--気にする事は無いのだがな、でも、ロルフの孫に面倒を見てもらう事にしようか。--』


 「ソピアだよ。」


 『--そうか、ソピア、宜しくな。--』



 山体を回り込んで行くと、洞窟らしき物が見えてきた。

 確かに崩落してしまっている。



 『--偶々餌を取りに出ていた時だったから良かったが、中で寝ていたら生き埋めになるところだったのだぞ。--』



 まっことすまん事をしました。

 うーん、落盤した岩を取り除いてあげれば良いかな?

 崩れやすく成ってしまってもう住めないかな?


 試しに岩や土砂を取り除いてみる。



 『--お前すごいな。あんな大きな岩でも軽々と。--』


 「まあね、将来は土木工事屋さんだね。」



 粗方崩落部分を取り除いたので、中に入って確認してみる。

 この穴何なんだろう? 火口というわけでは無さそうだし、エピスティーニみたいな遺跡だったりするのかな?



 『--さあなあ、我は元々在ったこの穴をねぐらに利用していただけなのだ。--』


 「ふうん……、壁に何か壁画みたいな物が描いてあるね。」


 『--ああ、それは我が描いたのだ。お洒落だろう?--』



 え、マジか、ドラゴンって、芸術とか理解するのか?



 「彼は優しいし、繊細な感覚も持っているんですからね。芸術位朝飯前なのよ!」



 何でケイティーが自慢げなんだよ。

 マジで一晩で一体何が有ったんだよ。



 『--どうでも良いのだが、さっきから我の事を彼と呼ぶが、それはオスに対する呼び方ではないのか? 我はメスだぞ?--』


 「……!!!……」



 壁に手を着いて落ち込んでしまっている。



 『--あの娘はどうしたのだ?--』


 「うーん、夢見るお年頃なんだよ、きっと。」



 洞窟の奥へ進んで行くと、かなり広い広間に出た。ドーム球場位の広さが在るかも知れない。

 驚いた事に、そこには金銀財宝が山の様に積まれていた。辺り一面に、物凄い量だ。

 ドラゴンが財宝を守って居て、お姫様を攫うというのは、本当の事だった様だ。



 『--これをお前達にやろう。世話になる対価だ。好きなだけ持って行け。--』


 「いや、元々私がやらかしたせいだし、いいよ。」


 『--ほう? 人間のくせに欲が無いのか? 珍しい奴だな。大抵の者は、目の色を変えて奪いに来るというのに。--』


 「私達、別にお金に囚われた生活をしていないんだよね。」


 『--ほう、言うな。流石はロルフの孫だ。我はそなたが気に入ったぞ。全部持って行け。有って困るものでも無いだろう。--』


 私達は顔を見合わせた。

 お師匠とヴィヴィさんが頷くので、貰っておく事にした。

 好意でくれるという物を頑なに拒むのも相手の気持ちを蔑ろにする、失礼な事だと思うから。



 「しかし、これ、倉庫に入り切らないよね?」


 「4人分の倉庫でも入りきるかしら?」


 「また儲かってしまうのか……」



 皆で倉庫を開いて詰め込めるだけ詰め込んでみたが、半分も減らない。いや、半分どころか、十分の一も減って無いのでは……

 魔導倉庫の容量って、使ってみた感じ、精々小学校の体育館程度なのかな。これでも個人で持つ倉庫の容量としては破格なんだけどさ、ドーム球場の中に学校の体育館が幾つ入るかっていうと、計算してみた処なんと、74個も入っちゃうんだよね。

 財宝が天井までぎっしり入って無いとはいえ、4人の魔導倉庫に一杯詰め込んだ所で、十分の一も減ってない感じというのは、強ち間違った感想では無いと思う。


 よくこんなに集めたものだ。金貨、銀貨、宝石、にミスリル製品なんかの貴金属の他に、水晶、黄銅鉱やご存知太陽石、真珠なんかもある。一体何処から集めて来るんだろうという様な銀のスプーンや剣、王冠やティアラなんかも混じっている。

 人間の考える価値の有る物とは、ちょっと感覚が違うのかも知れない。キラキラ光って綺麗なら何でも手当たり次第って感じだ。

 地球だったら、プラスチックやガラス片、メッキ製品なんかも集められていたのかも。


 キラキラ光る物が好きって、まるで女子か。あ、女子だったっけ。

 入り切らない分は、私が例の謎空間に収納した。

 お師匠がちょっと興味を示していた。

 そう言えば、あの空間に物を収納出来るって、お師匠には見せてなかったんだっけ?

 あ、プロークも興味ありますか。じゃあ、あとでね。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る