第104話 竜を怒らせてはいけません
急に黙り込んだ、私、ヴィヴィさん、ケイティーの3人に他の皆(岩竜含む)が不思議そうな視線を投げかける。
『--何か知っておるのか?--』
「「「い、いえー……」」」
『--この山が崩れた原因を知っているとか?--』
「「「……」」」
『--まさか……--』
「「「…………」」」
『--犯人を知っておるのか?--』
うっ……知っていると言うか、私です。
だって、荒れ地でロックドラゴン程度しか棲んでいないと思っていたんだよー。
こんな所に竜が棲んでいるなんて知ってたらやらなかったよー。
「それ以前にも結構、爆豪実験でドンパチやってたと思うんだけど、何でその時出てこなかったんだよー。」
『--む? それは、聞こえなかったな。はて?--』
「大体さぁ、何でこんなに人里近くに棲んでるのさ。私達、結構こっちに来てると思うんだけど、あなたの姿を見かけた事は一度も無いよ?」
『--いや? 我の棲処は、この近くではないぞ?--』
「だって、この裏って言ってたじゃん。」
『--この山脈の裏側だ。ほら、遥か向こうの方に見える山々が在るであろう?あの裏だ。--』
「山脈かよ! あんな遠くの山の異変なんて、私関係無いじゃん。びびって損した!」
『--何故お前がびびる必要がある? こちらの方角から飛来した、何かが我の棲む山に衝突したのだ。そして、今朝この山の痕跡を見つけ、調べておったのだ。--』
うむむむむ、それは間違い無く私の
「嫌だよー、プロちゃん。人間にそんな事が出来る訳無いじゃないのさー。」
『--うむ、我々竜族だとて不可能に思える破壊痕だが……原因を突き止めねばなるまい。ひ弱な人族は、この辺りには近づかぬが良いだろう。--』
でしょでしょ、上手い事有耶無耶になりそうだぞ。
と、思ったのに、とんでもない伏兵が身内から出てきやがった。
「そんな事有りません! 女神様ならそれ位の事は朝飯前です!」
クーマイルマ! ドヤ顔で、褒めて欲しそうにこっちをチラチラ見てくるよー。
ななな、何を言い出すのこの子! 空気読んでよ、クーマイルマちゃん。恐ろしい子。
『--なんと! 女神とな!? 何処におるのだ!--』
クーマイルマ、ウルスラ、ヴェラヴェラの3人が、無言で私を見る。
こっちを見るんじゃない!
『--お前が女神、だと?--』
「とんでもないです。ただの鼻垂れガキです。」
『--はっはっは、だろうな、お前は仲間に自分を女神と呼ばせておるのか?--』
「あはは、可笑しいですよねー。」
ああもう、誰か私を殺して!
ああ、クーマイルマが顔を真赤にして怒ってるよー。
「女神様! 何でです! こんな蜥蜴野郎に笑われて、あたいは悔しいです!」
「まあまあ、ここは穏便にやり過ごして、早く家へ帰ってお風呂に入ろうよ。」
『--なんだと! そこの魔族の小娘! 我を蜥蜴などと、愚弄するか! 聞き捨てには出来んぞ。高貴なる我が竜族を虚仮にした罪は軽くは無いぞ!--』
「ふんっ! たかが岩蜥蜴など、女神様の神威で消し飛んでしまえば良いんだ!」
「クーマイルマ、言葉に気をつけようか、ね。」
「いいえ、岩蜥蜴如きに女神様を虚仮にされては黙っていられません!」
『--もう許せん! 小娘共、命は惜しくは無い様だな!--』
「岩竜プローク様。この魔族の少女は、まだこちらへ来て間も無く、高位者への礼儀も知りません。教育者として私の至らぬ処で御座います。どうか、その高潔なる御心を波立たせぬよう。伏してお願い申し上げます。」
ヴィヴィさんが平伏してしまった。
年長者にそこまでさせてしまった罪悪感が半端無い。
『--よし、わかった。ロルフの孫とやら、我と死合を致せ。--』
何でそうなる?
「プローク様、この子は未だ年端もいかない子供で御座います。どうか……」
『--ならん! 我等竜族の沽券に関わる問題なのだ。--』
「そうですよ、女神様。こんな蜥蜴野郎なんて、こてんぱんにやっつけちゃって下さい!」
クーマイルマ、ちょっとお口にチャックしようか。
「嫌です! 絶対に嫌! 女神様は無敵だもん! 蜥蜴野郎になんて絶対に負けないもん!」
『--まだ言うか!--』
クーマイルマ、何があなたをそうさせる。
お願いだから、折れて欲しい。流石の私も冷や汗が止まりません。
プロちゃんもとっくにムカチャッカファイヤーだよ?
人族より上位の存在だとか言うくせに、沸点が低いよ。
「ソピアも、ナチュラルに煽ってるわよ。」
『--よし、明日の朝、我の棲家であるあの山の頂上で決着を付けようではないか。--』
「ええーー……そういうの止めない?」
そう言い終わらない内に、プロークはさっと腕を伸ばしてケイティーを掴むと、飛び去ってしまった。
『--待っておるぞ。--』
何でケイティーを人質に取るかなー。煽ってたのはクーマイルマなのに。てゆーか、私を捕まえていけば一番手っ取り早かったのに。
ヴィヴィさんが素早く飛び、プロークの前へ回り込み、何やら話した後、肩を落として戻って来た。
「代わりに
「そしたら?」
「ドラゴンは美女を攫うものだからって……」
地面に両手を付いてがっくりしていた。
女性としてのプライドをへし折られましたか。
ヴィヴィさんもあと10年若ければ、きっと攫ってもらえたよ。
「女神様って、何気に毒舌だと思うよー……」
明日かー、明日の朝、ちゃっちゃと行って決着付けてくるかー。
何でこうなった。
『!--ケイティー、明日まで大丈夫そう?--!』
『--うん、扱いは丁寧だし、酷い事はされなさそう。それに、美女だって。--』
うん、お姫様気分ですね。あっちは問題無さそう。
一応、お師匠にも伝えておくか。
『!--……というわけなんだけど。--!』
『--お前は馬鹿か。竜を誂うなどと、呆れて言葉も無いわ。--』
『!--反省してますー。--!』
とりあえず、屋敷へ帰って作戦会議だ。
クーマイルマ、あなたはお説教タイムだからね。
屋敷へ帰ったら、既にお師匠が待っていた。
帰りの道中でのお説教タイムでクーマイルマはしょんぼりしている。
ちょっときつめに言っちゃったかな。女の子が泣いているのって、ちょっと苦手なんだけど、これは仕方がない。
「それで、明日は私一人で行って来ようと思ってる。」
「そんな! あたいのせいですから、お供します!」
「クーマイルマは学校があるし、来て貰っても役に立てる場面は無い。」
きっぱり着いて来ないでと言った。凄くがっくりして涙を零している。
未だ空中浮遊までしか習得していないのが幸いした。私のマッハ2の飛行には付いて来れないだろうから、こっそり付いて来るのは不可能だろう。
これ以上プロークの前で余計なセリフを吐かれるては、ちょっと迷惑だしね。
「だから、皆留守番してて、ケイティーは私がちゃんと連れて戻るから。」
「わしは保護者として同行するぞ。岩竜プロークは以前に顔を合わせた事があるのでな。」
へー、顔見知りなんだ。
邪竜大戦って、大戦って呼ばれる位だから、全ての生き物vs邪竜、っていう構図だったのだろうね。
だから、現在は魔族と人間も、昔ほど険悪な関係とはなっていないし、ドリュアデスやトロルとだって分かり合えたりしてるんだ。
と、言う事で、顔見知りという事なら、まあ、お師匠ならいいか。
では、明日行くのは、私とお師匠の二人だけで。
クーマイルマはちゃんと学校へ行く様に。
ヴィヴィさんは、ちゃんと3人を抑えておいて下さい。
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