1-52 零課

 新島と渡利はまだ戦っていた。そこに真田から連絡が入る。

「おたくのお嬢さんがバイクに乗って外金へ向った。ここらじゃあんたが一番近い。助けてやってくれ」

 それを聞いた新島は渡利に前蹴りを放ち、距離を取った。あがった息を整える。

「あの馬鹿共・・・・・・」

 悪態をつく新島の肩を板見がぽんと叩いた。

「行きなよ。こっちは俺がなんとかするからさ。子守も仕事だろ?」

 新島は板見を見て、次に渡利の方を向いた。

 渡利の体は傷こそついているものの、まだ動きに問題はない。

 対して新島はダメージと疲れが見える。

 元々生身と機械が殴り合うというのが無茶な話だった。

 頭から血が下がり、冷静になると新島は大きく息を吐いた。

「・・・・・・分かったよ。あとは頼んだ。俺は子供達を迎えに行くさ」

「任せてよ。すぐに終わらせて行くからさ。元々俺の方が強いんだし」

 板見はそう言って右手を開いて挙げた。

 新島はむっとした。

「・・・・・・またその話かよ。あの優勝トロフィーは情けでやったんだよ」

 強めのバトンタッチをすると、新島は疲れた体に鞭を打って走り出した。

 板見はその背中を優しげな笑みを浮かべて見送った。

 渡利は新島を追わない。

 隙だらけの板見にも襲いかからない。

 板見は振り返り、スーツを脱いで中のシャツの裾をまくった。鍛え抜かれた腕が姿を現す。

「さあ、どこから壊そうか」

 板見は爽やかに笑ってそう言うと、音も立てずに歩き出した。手がごきっと恐ろしい音を立つのを聞いて、渡利は板見が新島以上の使い手だと理解した。

 殺意を帯びた笑みを浮かべて、板見は拳を握った。

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