エンドレスエンドレス

第10回(9月3日~)

お題 ・痛 ・うなじ ・さよならを ・想像と違って ・「私(俺)が嘘ついたことある?」







 唐突にうなじに激痛が走る。って、とありきたりな感想を吐いて振り返ると、そこには決まってしたり顔の少女が立っているのだ。首に残る衝撃から描かれる想像と違って、華奢な触れれば弾けてしまいそうな身体がそこに存在する。

 不満を顔いっぱいにふくんで少女を睨んでやると、少女もまたじどっとした目でこちらを見た。

「なに?」

「殴っただろ」

「なにが?」

「あんたが」

「なんで?」

「知るか。こっちは痛いんだよ」

「うーん、身に覚えがございませーん」

「嘘つけ」

「私が嘘ついたことある?」

「あるよ。ありまくりだろ」

 この会話だってもう何百回繰り返したか分からない。確か、初めて会ったときですらこれだった気がする。公園で1人座っていたら、いきなり首チョップ。驚きのあまり怒る気にすらなれなかった。今はもう慣れたものだが、あまり良い心地はしない。

「で? 何の用?」

「特にありませーん……と、言いたいところだけども」

 惰性的になりすぎていたためか、想像と違って重い返答にたじろいだ。

「今回はさよならを言おうと思ってさ」

「……なに?」

「だから、さよならを」

「なにが?」

「わたしが」

「なんで?」

「それあんたが言う?」

 少女は、姿に似合わないため息をついた。

「気づいたんだよ。人を困らせるより、笑わせる方が楽しいって」

 少女はふわっと回転すると、痛むうなじをそっと撫でた。反射的にその手をはたいてしまう。少女は困った顔をした。

「困るんだよ。そうも勝手に決められると」

「……わたしがいなくなると困るの?」

「そう。困る」

「嘘つかないでよ」

「俺が嘘ついたことある?」

「あるよ。ありまくりだよ」

 そうして少女は手を振りかざした。ふっと一瞬、意識が消える。


 はじめにもどる。

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