第1章 出逢い

第1話 ドラゴン

『……捧げよ』


聞こたものは音となり、音が次第に声になってゆく。


『いらぬのならその魂、我に捧げよ』


視界は暗転し、意識もなくなったはずだった。

しかし、声がわかる。

なんだ、死ねなかったのか。


「欲しいのなら、あげるよ」


落胆からか、肌に感じるピリピリとしたものさえ気にならなかった。

ゆっくりと瞳を開く。

光を感じる上方を向いた。


巨大な黒い影。真っ赤な眼。寸胴な体躯。


「ドラゴン……? 」


アニメや小説、映画の産物。驚きもせずにボケっと眺めていた。


『……らねぇ』


思わず首を傾げる。


━━ぼんっ!


モクモクとした煙。ハクショ〇大魔王?


━━ぐい!


そんなことを浮かべた瞬間、胸倉を掴まれた。


「気に入らねえ! っつってんだよ! 」


私の目の前に突然現れたのは、同年代くらいの、尻尾と角の生えた少年だった。


「何とかいえよ! てめぇ、何の為に口ついてんだよ! 俺様をおがめた畏怖とか敬意とかねぇのかよ! 俺様は様なんだぜ?! 」


捲し立てているが、全く理解できなかった。


「……ただ奪うのは性に合わねぇ。抜け殻なんぞに興味はねえよ。てめぇがやっぱ取り消しますって言うくらい、生にしがみつかせてから奪ってやんよ」


空っぽだった、何も感じなくなった空洞に、微かな温もりを感じた。

それがなんなのか、今の私にはわからなかった。


「ああ?! ニヤついてんじゃねぇぞ?! 」


思わず口許に手をやる。わからないけど、一瞬緩んだ?


「……聞かせろや。てめぇが自殺"した"理由をな」


意味がわからなかった。


「んあ? てめぇ、今生きてるって思ってたか? んなわけねぇだろ。ここにいるてめぇは"魂"なんだっつーの」


死ねてる?


「まあ、いいや。人界も支配下にする(予定)俺様は温厚だからな。すべてを統べるには理解してやらねえと。人間ってのは俺様竜族よりもこまけえ感情に流される。……てめぇを自殺に追いやったヤツらを足元にひれ伏させ、悪意あるヤツらを支配してやるぜ」


悪魔の笑いを発しながら語りだす。


「贅肉悪を必要悪が喰らう。弱いモノを相手にするのは欠点を隠すためだ。無謀に強いやつにいきゃいいもんでもないがな。無駄な悪は喰っちまっていいよなあ? 」


一体何の話をしているのか、未だに理解出来ないでいた。

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