脈絡無しの文章スケッチ
アスファルトがえぐれた場所に水たまりが出来ている。
あたりには雨の残り香が漂い、錆びた鉄みたいな臭いがしている。
水たまりに丸い街灯の光が浮かび、頭がゆがんだ灰の電柱と、肩から伸びる複数の垂れた電線が映っている。この寂れた町から見上げる空のほとんどを、味気ない電柱と電線が占めていた。
落ちてきそうなぐらい近い月が薄暗い雲に遮られ、おぼろげに顔を出している。
手入れされていない庭ではぼうぼうに草が生えていて、草木の周りでバッタとコオロギが飛び回っている。コオロギが泣き喚くほかに、なにも音はしない。
夕方、近所の高校から部活の声が聞こえる。
夜には俺以外誰もいない。
拒食症みたいに底が削れたスニーカーで雨の後を歩くと、靴下が濡れる。
11月とは思えないほど冷え込んだこの空の下で、芯から冷え込むためにはそのスニーカーが必要だ。
この素晴らしいスニーカーさえあれば、雪だるまみたいに膨れるほど着込んだって大丈夫だ。
ナイキは俺を雇ってもいいぜ。
同じ靴をもう5年は履いているからな。
遙か先の道で、誰かが振り返った。
誰かは足を速めた。
どうやら俺を怖がっているらしい。
俺はそいつについていくことにした。
俺は足を速め、誰かはまた足を速めた。
俺は走り出し、誰かは走り出した。
これは俺の1000ある趣味の内の一つだ。
そこら中が錆びて、悲鳴を上げる自転車に乗っている。
もう10年は同じ自転車を使っている。
ほとんどの場所が錆びていて、いつ空中分解するかが気になるほど乗っていた。
苛立ったときは池に放り込んで、笑っていたこともある。
だがそれでもこいつと走っている。
車がない限りずっとこれに乗らなきゃいけない。
嫌いでも好きでもね。
久しぶりにあのみすぼらしい街へ繰り出した。
相変わらず、あのビルどもがいた。
首が痛くなるほど見上げなくちゃならないあの憎らしいビルの中を歩いていくと、5年と半年も通っていたあの大学が見えた。
俺の憎悪を練り上げてくれたあの刑務所は、変わらずに学生から金を搾り取り、株の売買で相も変わらず金を溶かしているのだろう。
二度と通うもんかと呟いて、刑務所を後にした。
気晴らし もず @mappaper
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