殺陣:チャグ太郎VSマチェットおじさん

 金属製のヌンチャクを持つ男は、ついに復讐を果たそうとしていた。インドネシア軍特殊部隊”レッドベレー”KOPASSUSUを退役した男は、家族で売れないヌンチャク屋を開いていた。売れはしなかったが、幸せな生活であった。

 しかし、そこにフィリピン・ギャングがやってきて、男の家族を惨殺したのだ。リーダーは元フィリピン海兵隊特殊部隊。先端が少し湾曲した鉈の一種であるボロ・ナイフの使い手であり、フィリピンIS、モロ族や毛沢東主義者の共産ゲリラを生きたまま解体するのが趣味の男であった。

 インドネシアの男はフィリピンギャング達を皆殺しにして、最後の決戦に挑むことになった。

「楽には殺してやらん」、それが心からの願いだった。

 最後の部屋に、フィリピン人が待ち構えていた。

 フィリピン人は銃を捨てた。ボロを抜き、構えた。フェンシングのように右のボロを前に置く。

 喉の横に置いていた左手をいつもより上げ、頭を守るようにした。木製の獲物でも2~3回で頭蓋骨が完全に砕け散り、脳出血による死は免れない。ましてや金属製だ。頭は守りたかった。

 インドネシア人も同じく、右のヌンチャクを前に置いた。いつもは二つだが、今は一つだけ。沢山の相手には二つがいいが、強い一人には一つのが向いている。

 正面を向く構えは、リーチが短いし、接近されたらこちらが不利だ。

 しかし、構えは低い。まるで地面と平行にするように、腰の辺りで構えていた。

 フィリピン人は攻めあぐねている。獲物の長さはこちらのが20cm短い。

 そして、相手は軌道が読めないことが売りの武器である。

 抜き払うように来るか、頭の上を回って逆から来るか、斜めか、それとも左手から来るか。捌いても次の別角度から来る攻撃が怖い。一撃をボロで受け突っ込んで、そのまま地面に持ち込んでから首を切ってやろうかと思ったが、インドネシア人の腰にナイフの柄と鞘がついているのが見えた。

 組めば殺すまでに刺される。ボロは刃が長く、大きい。前腕の骨で耐えきられることがある。それに、刃物ですぐに相手をストップさせるのは難しい。

インドネシア人は、相手が八の字を描くように切りつけてくるのを知っている。それがフィリピン軍のセオリーだからだ。

インドネシア人は、抜き払うように強烈な一撃をフィリピン人の膝に向かってスイングした。

 フィリピン人は足を引き、首を刈りに行く。即座にインドネシア人は飛び退いて、軌道を変えて腕を狙って振り下ろした。フィリピン人が切り返そうとしたところで、フィリピン人は腕を振らずに下がった。空を切った棒がインドネシア人の脇の下に収まる。インドネシア人が先ほどより多く踏み込み、軽く、早く振り上げた。

 それがフィリピン人のボロにあたり、フィリピン人はボロを落としかけた。手先を狙っての斜め振り下ろし。

 それにカウンターでフィリピン人がボロで手首を狙った。ボロとチャグがぶつかり、酷い音がした。互いにそのまま8を描くように振り続け、火花が散っている。フィリピン人が更に踏み込んで手首を狙おうとしたとき、インドネシア人の手が下がり、ボロが空ぶった。

 次のチャグで手首が打たれ、ボロが落ちる。

頭の上でくるりとチャグが回り、インドネシア人の肝臓の上の肋骨を横薙ぎにした。骨が折れ、肝臓に刺さる。続いて次の横薙ぎで右肘が砕けた。

「楽には殺さないと言ったはずだ」、インドネシア人はチャグを振り回しながら、フィリピン人の回復を待っている。

 フィリピン人は過剰に放出されているアドレナリンで、肝臓と肘のダメージを無視して息を整えた。フィリピン人はナイフを抜いて、左手に持った。

 フィリピン人のナイフでのジャブをチャクでたたき落とし、左肘を割る。次に左膝を砕いた。フィリピン人は膝を突いた

 そのまま肋骨への滅多打ち。全ての骨が砕けた。

 頭蓋骨を水平に打ちのめし、たたき割った。

 フィリピン人は断末魔の代わりに、口からなにかよくわからない言葉を発している。

 最後に首にチェーンを掛け、首をへし折った。


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