図書館司書とホテルデート

 いつか一人で行きたい(*'ω'*)

 大学の図書館司書ソフィア×大学生テリー

(完全版R18はアルファポリスにて公開してます)

 ―――――――――――――――――――――――























 エメラルド大学の図書館では、今日も沢山の生徒が本を読みに来る。課題をやる生徒。ノートパソコンでレポートを作る生徒もいる。


 その中で、一人、スマートフォンで動画を見ている生徒がいた。


「今日は、ラブホテルで女子会をしまぁあああす!!」


 テリーがイヤホンをして、じっと見つめる。


「見て、これ! ベッドすごい!」

「ねえ、こっちもお風呂もすごいよ!」

「やっばっ!」


 テリーがじっと動画を見続ける。


「これ料理が美味いよ」

「これで一万ワドルは安いわ」

「二人だから二万ワドルなんですけどね?」

「一人一万ワドル」

「「安いわー」」

「だって海外行くくらいならここ泊まるって」

「それな?」


 テリーがペンを動かして、タブレットをタップしまくる。ググる検索で『女子会 お勧め 距離縮まる』で検索をかける。


『女子会、予約できます! カラオケ無料! お友達とラブホデビューしませんか? お値段はこちら!』


 タブレットでネット予約をする。

 ソフィアのスマートフォンが音を鳴らした。


(ん?)


 開くと、恋しいテリーからメッセージが来ている。


 ――土日出かけるわよ。


 ――どこに行くの? 予約しておく。


 ――もう予約した。


(……どこ行くの?)


 ソフィアがきょとんと瞬きしながら、カウンターから見える二階の席を見た。テリーが机で真剣に何かを見ている。


(期待しておくよ)


 スマートフォンを置いた。







 そして、当日。






(ラブホ女子会!)


 テリーがソフィアの手を引っ張った。


「ソフィア、早く入るわよ」

「テリー、ここラブホ……」

「いいから! 早く!」


 フロントにて鍵を貰い、部屋に入る。


(なん……だと……!?)


 豪華な部屋。ダブルベッドが二つもある。


(これが、ラブホテル!)


 窓を開ける。素敵な景色。


(これが、ラブホテル!)


 浴室を覗いてみる。ジャグジー。横には岩盤浴。サウナまでついてる。奥の扉を開ければお外に繋がっている。吹き抜けロマンティック。


(これが、ラブホテル!!)


 はっ。


(コンタクトレンズセットに、歯ブラシ、タオル、その他もろもろが、綺麗に揃ってる! これがラブホテルだと言うの!?)


 なんてレベルの高いホテルなのかしら!


(これはママに報告だわ。ホテル業界の革命だわ)


「ソフィア、メニューを見るわよ!」

「いっぱいあるね」


 ソファーに座ると、テレビにメニューがずらりと並ぶ。


「ソフィア、食べ放題だって。ねえ、これで頼めるんですって。ねえ、何にする?」

「唐揚げでしょ」

「ええ。チキンは大事だわ」

「ハンバーガーあるよ。食べる?」

「ハンバーガーって、あのハンバーガー!? 夕飯にハンバーガーを食べるだなんて、体に毒だわ! 冗談じゃない!」

「じゃあやめる?」

「でも今日は特別だわ! せっかくラブホテルに来てるんだから! これとあれとそれよ!」

「あ、釜めし美味しそう。ぽち」

「……あたしも欲しい」

「半分こする?」

「……ん」

「サラダも頼もうか」

「あたし、イタリア式のサラダしか食べれないのよね」

「でも美味しそう。頼んでいい?」

「しょうがないわね。頼んであげなくもないわ」

「パスタもあるよ」

「そうね。うーん、どうしようかしら。でも、まあいいわ。いただきましょう」

「ドリンクはどうする?」

「ソフィア、カルアがある!」


 ソフィアがじっとテリーを見た。テリーが眉を下げる。


「……お願い。お願い今日だけ……お願い……このとおり……お願いします……頭下げるから……いいわ……土下座してやるわよ……だから……お酒……」

「ノンアルコールはこっち」

「チッ!!」


 舌打ちをして、ノンアルコールのドリンクを眺める。


「……ノンアルコールエール……」

「分かった。頼むよ」

「ねえ、食べる前にカラオケに行かないの?」

「じゃあ、カラオケから戻ってきたらにしよう。あ、時間調節出来るんだ。……二時間後くらい?」

「そうね。それくらい」

「えーっと……」


 ソフィアがリモコンで注文確定をした。


「ソフィア、カラオケに行くわよ!」

「はいはい」


 カラオケボックス。


「せぇかーーーーいでーーーーいちーーばんっ、おーひめさーーばぁーーーー!!」


 ソフィアがタンバリンを鳴らす。


「あだしのごーーいーーをーー悲劇のジューーリエットーーにしーーなーーいーーでーー!!」


 ソフィアがマラカスを鳴らす。


「みぎーーかったにーーーむらさきちょーーーちょーーーー!! ギズをしだーーーこのへやのすみでーーーー!!」


 ソフィアが写真を撮った。


「テリー、次、何歌う?」

「……ソフィアは歌わないの?」


 訊けば、ソフィアがにこりと微笑む。


「私、歌下手だから」

「一曲だけ歌う権利をあげるわ。はい、マイク」


(ソフィアの歌声聴きたい)


 声には出さない。


(聴きたい)


「選んで」

「うーん。じゃあこれ」


 デュエット曲。


「テリー、緑やって」

「……ソフィアはピンク?」

「うん」

「分かった」


 曲が始まる。


「か細い火がーこころのはしにーともるーー」


 緑が終わればピンクが来る。


「絡み合う指解いて」


(ん?)


 ソフィアがテリーの顔を自分に向けた。


「唇から舌へと」


 テリーが黙った。

 ソフィアが歌う。

 緑とピンクが絡み合う箇所が来る。

 しかしテリーは石になっている。

 ソフィアは歌い続ける。

 しかしテリーは石になっている。


「テリー、歌、終わっちゃったよ」


 歌を切る。


「時間も時間だし、そろそろ部屋に戻ろうか」

「……ん」

「はあ、暑い」


 部屋に戻る。


「先にお風呂入っておいで」

「……ん」

「ラブホってすごいね。こんな感じなんだ?」


 ソフィアがテレビに映るオプションメニューを眺める。


「ふーん」

「……ソフィア」

「ん?」

「……あの」


 ぼそりと呟く。


「……一緒に入る?」





 空気が冷えた気がした。





(……っ)


 テリーが笑った。


「なんて、冗談よ! ばーか! 一緒に住んでるからって、調子に乗らないことね!」


 テリーが扉を閉め、うずくまる。


(ああ、あたしの馬鹿! 素直に一緒に入りたいって言えば良かった!)


 だって、こんなに素敵なお風呂なのに。


(浴室を一目見た時に、ソフィアと一緒に入りたいって思ったから、誘ったのに!)


 空気があんなに冷えるだなんて!


(ああ、言わなきゃ良かった! もう嫌だ! 恥ずかしい! あたし帰りたい!)


 服を脱いできらびやかなジャグジーの浴槽に入る。


(あ、なんかリモコンがある。何これ。ぽちっとな)


 暗くなった。


(へっ!?)


 きらきらきらきらー。


(ぎゃああああ何これ! 素敵! 星がきらきらしてるぅ!)


 照明が暗くなり、お風呂が輝き、星が浴室を照らす。


「……」


 ぶくぶくするお風呂にうっとりする。


(……水着持ってきて、ソフィアと入ればよかった……)


 ラブホの女子会をしている配信者がいて、女子会と前提にすればソフィアと行けると思ってすぐに予約したけど、そこまで考えてなかった。


(でも、ラブホテルってちょっと憧れてたのよね)


 恋人同士が愛する営みをする場所という情報しかなかったけど。


(これなら、確かにニクスやアリスを連れてきても楽しそう)


 ああ、お風呂楽しい。ぶくぶくしてる。


(……早く上がらないと、ソフィアが入れないわね……)


 上がる。


(もうちょっと入りたかったな)


 サウナにも入りたい。


(……寝る前にもう一回入ろう)


 あ。


(……着替え、部屋に忘れた)


 タオルを巻いて、扉を少し開ける。


「ソフィア」

「ん?」

「着替え忘れた」

「ちょっと待ってて」


 ソフィアが鞄を開ける。


「下着も?」

「ん」


 ソフィアの足音が聞こえてくる。


(っ)


 すぐそこに、ソフィアがいる。


「はい」

「……ありがとう」


 掴んで、すぐに扉を閉める。


(……っ)


 なんか、


(なんか、すごくドキドキする……!)


 ソフィアと、ラブホテルに来てる。


(心臓が、すごい……)


 ドキドキしてうるさい。


(違う。今日は、ラブホデートなのよ!)


 恋人じゃないの! 女子あるあるトークをするの!


(このラブホデートを、あたしは満喫するのよ!)


 鼠のもふもふルームウェアに着替えて扉を開ける。


「ソフィア! あんたも入ってきなさい!」

「うん」

「中にね、リモコンがあるの!」

「へえ」

「つけてみて!」

「あ、サウナがある。……何ここ」

「あんた、岩盤浴知らないの?」

「聞いたことはあるけど、あまり興味無いかな。サウナみたいな感じでしょ」

「馬鹿。全然違うわよ。いいから行ってきなさい。楽しんで。グッドラッグ」


 背中を押して扉を閉める。


(さっき、ソフィアがオプション見てたわね)


 リモコンを弄ってみる。


(何があるんだろう? ぽち)


 料理メニュー。


(ふむふむ)


 コスプレメニュー。


(ふーん。コスプレイヤーの真似が出来るわね)


 ドラマ。


(あ、ちゃんとテレビが見れる。ドラマなんてあるのね)


 ん。何この変なタイトルのドラマ。


(えい)


 ぽちっと押してみる。ドラマが始まる。


(わくわく)


 素人っぽい人が素人な演技をしている。


(大根役者ね。何よ。このドラマ。学芸会?)


 男が突然、すぽーんと裸になった。


(ふぁっ!?)


 女が突然、すぽーんと脱がされた。


(ふぁああああ!?)


「あんあんあんあん!」

「えくすたしー!」

「あーん!」

「あばばばばばばばば!!」


(これ、見ちゃいけないやつだわ!)


 急いでリモコンのボタンを押す。


 ポチ。


(あ、間違えた)


 音量が大きくなった。


「あんあんあんあん!」

「えくすたしーーーー!!」

「ぎゃあああああああああ!!」


 一時停止を押す。


「……」


 テリーの心臓も一時停止になる。

 深呼吸をして、動画閲覧をやめるボタンを押せば、メニューに切り替わる。


(……なんか、音楽流そう……)


 そういえば、リトルルビィが歌ってみたの動画を投稿してたわね。

 スマートフォンをぽちぽち弄る。


「ふたりだかーーらーーーーああーーーあーーーあーーーー!」


(可愛い歌い方するわね。……癒しだわ……)


 ぴんぽーんと室内に音が鳴った。


(あ、料理かも)


 立ち上がって扉を開ける。


「お待たせいたしました。お料理の準備が出来ました」

「ありがとうございます」

「食べ終わったお皿はカートに乗せて、部屋の前に置いてください」

「分かりました。ありがとうございます」

「失礼致します」


 カートを部屋に入れて扉を閉める。


(……美味しそう……)


 テーブルに料理を広げると、ソフィアが戻って来た。


「あ、料理来た?」

「今来た」

「お風呂すごかったね。くすす。楽しかった」

「同感だわ」


 全ての料理を広げる。


「いただきます」

「いただきます」


 テリーとソフィアが言って、隣同士で食事を始める。バックBGMはリトルルビィの歌声。


「雪だるまちゅくーーろぉーー」

「テリー、テレビにしない?」

「……これ、ちゃんとした番組やってるの?」

「やってるよ」

「本当に?」

「テレビなんだから、ちゃんと放送してないとおかしいでしょ?」

「……さっき変な番組やってた」

「……」

「……でも、面白くないから切ったの」

「……へえ、そうなんだ」


 ソフィアがリモコンを使いこなす。普通のクイズ番組に繋がる。


『本日のゲストは、キッド殿下です!』

『ぎゃああああああ!!』

『キッド様ああああああ!!!』

「ソフィア、キッドがクイズ番組に出てるわ」

「全問正解するかもね」

「映画にしましょう。こんな所でキッドを見たくない」

「同じく」


 ソフィアがリモコンをポチポチ押す。映画の項目がある。


「何見たい?」

「恋愛ものがいい」

「テリーはこれ好きそう」

「……何これ。つまんなそう」


 ソフィアが再生ボタンを押した。


 ――二時間後。


「……ぐすっ……!」


 テリーがハンカチを握り締めていた。


「この男、遅いのよ! こいつがもう少し早く行動していれば……!」


 テリーが涙を拭いた。


「でも、結ばれて良かった……! ぐすん!」

「テリー、ティッシュいる?」

「ちょうだい!」

「はい」


 ティッシュを鼻にやる。ちーんする。ゴミ箱に捨てる。


「ぐすん! ぐすん!」


 エンディングで、主人公達の子供が家の庭で遊んでいる。


「子供が産まれてる!」


 テリーがさらに泣いた。


「ぐすん! ぐすん! ぐすん!!」

「思ったよりいい映画だったね」

「つまらない映画だと思ったら、これはアカデミー賞取るわ! ぐすん! とても素晴らしい映画だったわ! あたし、今度監督に感想の手紙を送るわ! ぐすん!」


 ソフィアが食べ終わったデザートの皿をカートに乗せた。


「テリー、歯を磨いておいで」

「……もうこんな時間なのね」


 良い子は寝る時間。


「私は部屋の前にカートを置いてくるから」

「分かった」


 洗面所に行く。すごい。化粧水があるわ。塗ってみよう。ぬりぬり。


(……あら、浸透していくわ。……ラブホテルのくせに、随分といい化粧水置いてるじゃない……)


 歯を磨く。


「ぺっ」


 吐き出す。


(はあ、泣いた泣いた)


 すっきり。

 部屋に戻れば、ソフィアが荷物の整理をしていた。


「ソフィアも歯磨きしてくれば?」

「うん。してくる」


 ソフィアが歯を磨いている間、あたしはテレビのリモコンを弄る。普通のテレビ番組をつける。


(深夜の番組って面白いのよね)


 セクシーなお姉さんが並んでいる。


(……男って単純ね。胸が大きくてウエストが細ければいいわけ?)


 この女達より、胸が大きくてウエストの細い女が、今向こうで歯を磨いてるわよ。


(……なんか水着とかよりも、ソフィアってルームウェアの方がセクシーな気がする)


 短いパンツ。細くて長い足。裸足。上はチャックを開けたら、生の胸がさらけ出される。


(それで、上から見下ろされて、テリー、だなんて囁かれてごらんなさい)


「……」


 ちらっと、ベッドを見る。


(ダブルベッド……)


 なぜか、二つある。


(一人でダブルベッドで寝ろってこと?)

(それとも二人で一つのベッドに寝て、あ、一つ余分にあるねって笑うの?)

(それとも何? 四人プレイ?)


 この部屋の客は、テリーとソフィアしかいない。


(……)


 どうやって寝たらいい?


(……)


 ここはラブホテル。


(……)


「テリー」


 びくっと肩が上がる。慌てて振り向く。


「……っ……何よ」

「もう寝よう?」

「……ん」


 ベッドを見る。


「……どっち使う?」

「……テリーはどっちがいい?」

「……んっ……と……」


 奥のベッドに指を差す。


「こっち……」

「うん。じゃあそっちね」


 ソフィアがテリーの手を握った。


(えっ?)


 ソフィアがテリーの手を引く。


(え、えっ、あっ……)


 ベッドに横になる。


(あっ)


 ソフィアも一緒に横になる。


(あ、あうっ……)


 シーツに入る。


「ランプも調節出来るのかな?」


 ソフィアが置かれていたリモコンを弄ってみる。部屋がいい感じにほの暗くなる。


「あ、素敵。ロマンチック」


 ソフィアがシーツに潜った。


「ふう」


 距離が近くなる。


「……」


 体が自然と向かい合う形になっている。


「……」


 テリーがソフィアを見る。

 ソフィアがテリーを見ている。


「……」


 ソフィアがくすっと笑って、テリーを抱き寄せた。


「……」


 ソフィアがテリーの額にキスをする。柔らかな唇を感じれば、体が固くなってしまう。


「……」

「……明日」

「ん!?」

「10時にチェックアウトだっけ?」

「……ええ。そうよ」

「部屋から出る前に、もう一回お風呂入りたいな」

「……あたし、サウナに入りたい」

「くすす。いいね」


 ソフィアの金髪がたらんと落ちた。


(あ……)


 テリーがソフィアの耳に髪をかけた。


「……」


 ソフィアの黄金の瞳がテリーを見ている。


「……」


 視線を外さない。


「……」


 薄暗い部屋。しかし、明かりは残っている。いつもよりもよく見える。


「……」


 綺麗な目が近い。


(この目に魅了された)


 今でも心臓が止まりそうになる。


(……ラブホって、そういうことする場所って聞いてた)


 楽しかったけど、


(そういうことをする場所なのよね)


 テリーが近づく。


(だったら)


 テリーが近づく。


(良いと思うの)


 だってそれが目的のホテルでしょ?


(あたし、間違えてないと思うの)


 瞼が下りていく。近づく。顔を傾ける。



 ソフィアと、唇が重なった。



(……柔らかい……)


 ソフィアの腰を優しく掴んでみる。


(わ……、細い……)


 ウエストがきゅってしてる。


(……舐めたい……)


 唇を舐めてみる。


(……舐めちゃった……)


 舌がソフィアの唇に当たった。


(あったかい……)


 足が絡み合う。


(ソフィア……)


 テリーがソフィアを抱きしめる。


(ソフィー……)


 唇が離れてはまたくっつく。


(気持ちいい……あったかい……ふわふわする……)


 テリーがソフィアにキスをしたまま起き上がる。


「……ん」


 キスをしたまま、膝を立てる。ソフィアの上に乗る。


「ふはっ……」


 唇が離れる。シーツがずれる。


「……」


 上から見下ろすと、ソフィアの頬が赤く、自分を見上げている。


(綺麗)


 綺麗な目。


「……ソフィー」


 チャックに手を伸ばす。


「脱がしていい?」

「脱がしてくれるの?」


 ソフィアが微笑む。


「いいよ。脱がして?」

「……ん」


 妖艶な誘いに、手が動く。チャックを下ろしていく。


(わ)


 キャミソールしてない。


(わ……)


 生まれたままの姿がある。


(わあああああ……!)


 思わず顔が熱くなる。


「……」


 視線を泳がせながら、震える手でチャックを全て下ろす。


(……エロい……)


「……私だけ脱がせる気?」


 ソフィアが下で眉尻を下げた。


「テリーも脱いで?」

「えっ」

「……脱がないの?」

「ぬっ」


 テリーが自分のチャックを掴んだ。


「脱ぐけど!?」

「うん。見てるから脱いで」


(うぐっ)


 見られてる。


(ぬ、脱ぐところ、見られてる……)


 下からソフィアが視線を外さない。


(……恥ずかしいっ……)


 手が下に動く。


(……見られてる……)


 チャックが下に下りていく。


(チャックの音が、耳に響く)


 じいいいいいいいい。


(見られてる)


 チャックが下りていく。


(……っ……恥ずかしい……)


 すごく、不埒でいけないことをしている気分。


(ん)


 チャックを下ろし終える。


「キャミソール可愛いね」


 ソフィアの手が頬に触れて、テリーがびくりと体を跳ねさせる。


「っ」

「新しいの買ったの?」

「……ん」


 頷く。


「かわ、いい?」

「うん。浴室に持っていった時も思ったけど、すごく可愛い」

「……当然よね」


(……ソフィアに褒めてもらっちゃった)


 顔全体が熱くなる。黄金の瞳が見てくる。自分も見てしまう。


(ああ、駄目)


 ドキドキドキドキドキドキドキドキ。


(すごく緊張してる)


 ソフィアの頬に優しく触れてみる。ソフィアの目が細くなる。


(綺麗な目)


 うっとりしてしまう。


(……ずっと見つめていたい)


 テリーの指が爪でソフィアの肌を撫でた。ソフィアがくすすと笑った。


「ふふっ、テリー、くすぐったい」


 あ、笑ってる。可愛い。


「くすすっ」


 テリーが体を倒す。


「んっ」


 ソフィアと再び唇が重なる。


「ソフィア」


 彼女の耳元で吐息混じりな声が出る。


「重くない?」

「……くすす。大丈夫だよ」


 ソフィアが下からテリーを抱き締めた。


「テリー、もっとちょうだい?」

「っ」


 ソフィアの顔が近い。


「テリーともっとキスしたい」

「っ!」


 ソフィアがいつも以上にキラキラして見える。


「テリー」


 いつも自分を見下ろしているソフィアが、上目遣いで見てくる。


「もっと、キスして……?」

「……」


 テリーがソフィアの上に覆いかぶさる。


「ソフィー……」


 再びキスをする。








 快楽に溺れてしまう。






(*'ω'*)






 ――ソフィアが目を覚ました。


(……ん……)


 温かい。


(……)


 なんだか、気分がとてもすっきりしている。


「……」


 目の前には、疲れ切ったテリーがぐっすり眠っている。


(……)


 にやけてしまう。


「くすす」


 抱き締める。


「可愛い」


 ちゅ。


「大好き」


 ラブホテルデート。


「……案外、悪くないかもね」


 こういうことが出来るなら、またぜひ来たいな。


(家で眠っている玩具も、ここならオプションとか言って使えるし)


 いいね。


(また来たいね。テリー。私の誕生日にでも、また行こうか? くすす!)


「……うーん……」


(あっ)


 テリーの呼吸が浅くなる。


(……)


 待てば、テリーの目がゆっくりと開かれていく。


「……」


 恋しい目と目が合う。


「……おはよう。テリー」

「……ん……」


 テリーが目を擦る。


「……腰が痛い……」

「マッサージする?」

「……昨日のはもういい……」


 テリーの声が掠れている。


「はあ……」


 息を吐き、ソフィアと反対の方を向く。


「枕が気持ちいい……」

「まだ時間あるから、寝てていいよ」

「ん……」

「……大丈夫?」


 ソフィアが後ろからテリーを抱きしめた瞬間、テリーの脳が一気に覚醒した。


「っ」

「体、痛い?」


 振り向くと、視界に映るソフィアがきらきらきらきら。


(ひい! 眩しい!)


 瞼を閉じて、また反対の方を向く。


「どこが痛い? テリー」

「……体、全部、……痛い……」

「可哀想に」


 細い手に肩を撫でられる。


(ひゃっ!)


「私に出来ることある?」


 優しく腕を撫でられる。


(あ、その触り方、だめ……!)


 とろけちゃううううう……!


「テリー……」


 ぎゅっと、強く抱きしめられる。ソフィアの豊満な胸がテリーの背中にむにゅっとくっついた。


「何でも言って? 私はテリーのためなら、なんだってするよ?」

「……」

「テリー」

「……」

「……」

「……あの……それじゃあ……」


 か細い声にソフィアが微笑む。声の主の耳は、すさまじく赤い。


「朝風呂……。……一緒に入って……」

「……うん。いいよ」


 体を撫でる。


「私がテリーの体を洗ってあげる」


 大切に。


「優しく」


 大切に。


「綺麗に」


 いやらしく、


「洗ってあげる」

「……だったら……」


 テリーがソフィアに振り返った。


「……あたしも」


(ん?)





「……ソフィーの体、……洗いたい……」





「……」

「……だめ?」

「……テリー、お風呂のボディーソープ、体の中に入っても、特に害のないものらしいよ」

「……ラブホテルのくせに、良いシャンプー置いてるわよね」

「体を泡だらけにしようか」

「ん」

「あのジャグジーに一緒に入ろうね」

「……うん……」

「ただ、スポンジを間違えて昨日捨てちゃったから、手洗いになっちゃうけどいい?」

「……なんで捨てたの?」

「間違えて」

「……間違える?」

「私、疲れてたみたい。……テリー、怒る?」

「……そういう、ことも、あるわよね……。しょうがないわ」

「じゃあ、手洗いで体洗い合おうね」

「……ん」

「大丈夫。中に入っても害はないから」

「……何の話?」

「お風呂の話」

「……お風呂の前に……」


 ソフィアを抱きしめる。


「もう少しだけ、こうしてたい」

「……うん」


 テリーは今日もソフィアの胸を跳ねさせる。


「そうだね。私もこうしてたい」


 二人がベッドの中で抱きしめ合う。


「今日も愛してるよ。テリー」

「……あ、そう」

「……私には言ってくれないの?」

「……あ」

「うん?」

「……あい、してる……ソフィー……」


 ソフィアが満足して微笑む。


「私も愛してる。テリー」


 唇をテリーの額に押し付ける。テリーは大人しく瞼を閉じる。

 二人はゆっくりと愛を育む。

 大切に、大切に、お互いを恋しく抱きしめた。















 図書館司書とホテルデート END

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