図書館司書が覗くは君
(大運動会の続きです。CP上、キッドとテリーは婚約解消してる前提です(*'ω'*))
――――――――――――――――――――
サリアの元へ来たテリーが泣き喚いた。
「サリアアァァァアア! びええええええん!」
「あらあら、テリー。怪我をしてますよ。手当てを」
「なんかね、怪我してるのにね、キッドの野郎と、ちっちゃな赤頭巾ちゃんが、追いかけてくるのぉぉぉおおお!!」
「そうですか。怖かったですね」
「怖かったぁぁぁあああああ!!!」
ぐすぐす泣くテリーの足をサリアが手早く手当てする。
「テリー、次の競技は?」
「ま、まだ、しばらく無い……」
「じゃあ、こちらでお休みください。私と一緒に写真でも撮ってましょう」
「そうする! サリア大好き!」
「ふふっ。調子いいんだから」
サリアの腰にテリーが抱き着く。
(はあ! 一安心!)
テリーがにやりと笑う。
(サリアが盾になったら最強よ! もう怖いものはない! やーい! ばーか! キッドのばーか!)
「サリア!」
サリアが振り向く。ギルエドがサリアを呼んでいた。
「ちょっと来てくれ!」
「あら、何でしょう。テリー、ちょっと行ってきますね」
「え」
テリーが一緒に歩く。
「あたしも行く」
「貴女は急に呼ばれるかもしれないので、ここにいてください。すぐに戻りますから」
「え、いや、だって」
振り向く。すぐ傍には、にこにこ笑っているソフィアが立っていた。
「サリア、あたしも行くわ」
「サリア! 来てくれ! 早く!」
「テリー、ああ、ごめんなさい。ここにいてください。すぐに戻ります」
「え、ま、まって、サリア!」
サリアがギルエドの元へ走っていく。
「一人にしないで!」
サリアはギルエドの元へと行ってしまった。姿が見えなくなる。
「……」
風が吹く。テリーが黙る。その肩に、ぽんと手が置かれた。
「くすす。安心して。テリー。私が傍に居てあげる」
「やめろ! 離せ!! 近づくな!!」
テリーが即座に腕を払い、ソフィアの手から逃げた。ソフィアを睨みながら後ずさる。
「この鼠女! あたしに近づいたら塩撒くわよ!」
「テリー、一緒に写真撮ろうよ」
「写真?」
「うん。ずっと運動会の様子をフレームに収めてたんだ」
ソフィアがカメラを覗き、テリーに目を向けた。
「ほら、覗いてごらん」
「……ん」
むすっとしたテリーがソフィアのカメラに近づき、カメラを覗く。
(あ、本当だ)
運動会が見える。望遠鏡みたい。
「ズームも出来るんだよ。ほら、ここ押してみて」
「ここ?」
「そう。ここ」
ソフィアに手を動かされながらテリーがカメラを操作する。
(あら、本当だ。ズームできた)
あ、ニクスが見えた。メニーと仲良く喋ってる。あ、アリスが見えた。全力で応援してる。
「望遠鏡みたいね」
「科学が進歩してくれて助かるよ。これだからカメラって止められない」
「これで運動会撮ってたの?」
「そうだよ」
「あんた、何を撮るわけ? 運動会の背景でも撮って、図書館に飾る?」
「うん。それもあるし」
ソフィアが身を屈ませ、こそりと、テリーに耳打ちした。
「テリーの腹チラ写真も沢山撮れた」
テリーが顔を引き攣らせる。
ソフィアはにこにこ笑っている。
「ふふっ。何?」
「お前最低」
「そうかな?」
ソフィアが後ろからテリーを抱きしめる。
「離して」
「後でね」
カメラを覗くテリーをソフィアが抱きしめる。
「暑いんだけど」
「沢山動いてたもんね」
「離せ」
「あとでね」
「今すぐに」
「次の競技、まだなんでしょう? ミス・サリアが戻ってくるまで、私が君を見てないと」
「何よ。偉そうに」
「ずっと抱き締めたかった」
テリーの頭を優しく撫でる。
「足は痛くない?」
「痛いわよ。転んだんだから、痛いに決まってるでしょ」
テリーがカメラを覗く。
『さあ、皆頑張れー!』
『いけー! やるんだ! 頑張れ! 頑張れ!!』
ヘンゼとグレタの声が響き、競技の選手たちが一生懸命走る姿をカメラから見つめる。
(……なんか変な世界)
「面白いでしょう?」
ソフィアがテリーの手の上に手を重ね、カメラを触らせる。
「ここがシャッター。押してごらん」
「押したら撮っちゃうでしょ」
「1枚くらい、いいよ。好きなタイミングで押してみて」
「ん……」
テリーが押してみる。シャッターが鳴る。写真を撮る。
「これで撮れたの?」
「うん」
「ふーん」
テリーが一歩後ろに下がる。
「写真なんか興味ないわ。いいわ。ありがとう」
「とんでもない。お嬢様」
ソフィアがテリーを離さない。にこにこしている。
「ソフィア、もういいわ」
「そう」
「離せ」
「それは無理」
テリーがにこにこ笑うソフィアを、ぎりっと睨みつけた。
「どけ!!!!!!!」
「やっぱりテリーは、生の方がいいね」
「当然よ! あたしはね、写真なんかとは比べものにならない程、美しいのよ! 色々と汚れてしまったあんたの手が簡単に触っていいお嬢様じゃないの! 離せ!!」
「確かに、私が触れていいものじゃないかも」
君は最高の宝物だから。
「だからこそ、綺麗な君を盗みだそう」
「ちょ」
ソフィアがテリーを抱き抱えた。
「ひゃっ」
「こっちだ」
てくてく呑気に歩いていく。テリーが周りを見回す。
「てめ! なに人前でお姫様抱っこしてくれてるのよ! 下ろせ!!」
「大丈夫。誰にも見えてないから」
ソフィアの目は黄金に光っている。
「少しの辛抱さ」
人の間を潜り、潜り、テリーを抱えたまま休憩テントの中に入る。
「運がいい。誰もいない」
おまけに、
「しばらく誰も来れないように、催眠をかけた」
マットの上にテリーを乗せ、その上から覆いかぶさる。壁とソフィアに追い詰められるテリーがソフィアを睨む。ソフィアは喜ぶ。
「くすす。こんなに近距離で君を見られるなんて、嬉しいな」
「あたし、戻る」
「駄目。もう少し付き合って」
「サリアにあそこにいてって言われたわ」
「催眠でいたことにすれば良い」
「あんた最低」
「くすす。最低で結構」
ソフィアの顔が近づくと、テリーがぷいっと顔を背けた。
「ちょっと、近づかないで!」
「どうして? 恥ずかしいの?」
「てめえが不快だからよ!」
「私は愉快」
「不愉快よ!」
「嬉しくて足も軽快に動いた」
「勝手に動いてなさいよ」
「動いていいの?」
ソフィアが体を動かし、ゆっくりと、テリーの頰にキスをする。
ぷに。
「んっ」
ぴくりと肩が揺れたのを見て、ソフィアの口角がさらに上がりそうになる。
(可愛い)
抱きしめたい。
ぎゅっとしていたい。
強く強く抱きしめて、閉じ込めて、愛でて、恋していたい。
(怒られそう)
ソフィアがテリーを抱きしめる。
ぎゅっと抱きしめて、腕の中に閉じ込める。巨乳がテリーの顔を埋めた。
「ぷふっ!」
「おっと、ごめんごめん」
「このでかぱい!!」
テリーが胸から顔を離した。
「やめろ! あたしに触るな!」
「くすす。だーめ」
ソフィアもマットに座る。テリーを自分の前に座らせる。
「ちょ」
「はいはい。後ろ抱っこ」
ソフィアが後ろからテリーにキスをする。
頰にキス。
「んゃっ! こら! ソフィア!」
首にキス。
「この! キッドに言ってやるからね! あんたなんてクビにしてやる! 明日からまた路上生活よ!」
耳にキス。
「ひゃっっっ!!」
テリーが俯く。耳が赤くなってる。
(ああ、まずいな)
さっきからにやけが止まらない。
(なんでそんなに可愛く反応するかな)
ソフィアがテリーの耳に口を近づけ、息を吹く。
「ふっ」
「っ!」
突然の吹きかけられた空気に、テリーの体がびくり、と揺れた。
(ああ、駄目)
ソフィアの心臓がぎゅっと締め付けられる。
(なんて恋しい子)
強く強く、抱きしめ、耳にひそめた声を。
「テリー」
「……うるさい」
「可愛い」
「うるさい。盗人」
「好き」
「うるさい。鼠女」
「可愛い」
「今聞いた」
「恋しい」
「黙れ。女狐」
「好きだよ」
「うるさい。泥棒」
「泥棒はそっちだ。私の恋心をいい加減に返して」
「返す返す。全然返す」
「戻ってこない。なら仕方ない。テリー、私と恋し合おう」
「嫌よ。お断り。誰が貧乏人なんかと恋し合あうもんか。あのね、身分が違うのよ」
「だったら、誘拐して、身分なんか消してしまおう」
頭にキス。
テリーの肩が再び揺れる。
「……ん」
「可愛い。テリー」
止まらない。
「恋しい」
胸が騒がしい。
収めたくて、手を動かす。
「そ、ソフィア?」
テリーの体操着の中に、手を入れる。
「うわっ、お前、何を!」
お腹を撫でる。
「ちょっと! あたしの可愛いお腹をなでなでするんじゃないの! 出ろ! 外に出ろ!」
テリーが睨むと黄金の目を見せられる。
「ひゃっ」
くらりと眩暈が起き、ソフィアに体を預けた。
「うん。それでいい」
「こ、この……やろう……」
「くすす。柔らかい肌だね。テリー」
するすると、触っていく。
「汗もかいて、少ししっとりしてる」
「実況は結構よ」
「君の汗の匂いもする」
「じゃあ離れたら?」
「とんでもない。もっとくっつきたい」
ソフィアの手がゆらゆらと動く。テリーがこくりと、喉を鳴らした。
「……ソフィア」
「もう少し」
手を動かす。
「少しだけ」
手が上に。
「君に触れたい」
服の布がソフィアの手で動く。もぞもぞ動いている。その感覚が、たまらなくぞわぞわする。
(くそ……)
テリーが歯をくいしばる。
(力抜けて、何も出来ない……)
ちゅっ。
「ひゃっ!」
突然のキスに、テリーが声を漏らす。耳から、ソフィアの笑い声が聞こえた。
「くすす。可愛い声」
「うるさいっ!」
ちゅ。
「テリー、さっきよりも体が熱くなってる」
「誰のせいだと思ってるのよ!」
「さあ? 誰のせいだろう?」
ちゅ。
「……ソフィア」
「大丈夫。怖いことしないよ」
ちゅ、ちゅ。なでなで。
「……ん……」
「いやらしい声」
ちゅ。
「あ、ちょ、どこ、キスして……」
「テリーの首、細いね」
ちゅ。
「てめぇの方が細いじゃないのよ。何よ。嫌味!?」
「テリーのお腹の肉はつまめるね。最高」
「うるせえ! ダイエットするわよ!」
「そうだ。マッサージしてあげようか?」
ソフィアの手が動く。
「ここの」
下着越しから、両方の胸に、ソフィアの手が置かれる。
「っ!」
テリーの腰が引けるが、後ろにはソフィア。
「そう。マッサージしてほしいと」
「い、今はいい!」
「遠慮する必要はない」
ホックが外される。
「うわっ! おま!」
「すぐに終わる」
両方の胸の上に手がふたたび重ねられ、ゆらゆると動き始める。
「んっ」
「ね、テリー。私はマッサージをしてるだけ。何も怖いことしてないよ」
「てめぇは手がいやらしいのよ……!」
「何それ。どこかの殿下じゃあるまいし」
ソフィアの手が動く。テリーの呼吸が乱れてくる。
「……っ、……ん」
「テリー、気持ちいい?」
「わ、わかんな…」
「テリーのおっぱい、柔らかいね」
手が動く感覚に、テリーの体が震え始める。
「や、やめ……」
「可愛い。テリー」
頰にキスをすると、テリーの肩が揺れる。
「っ」
「誰よりも可愛い」
胸に違和感を感じる。
ソフィアの手がゆるゆる動く。
ダメよダメよと思っても、胸の上で手が動く。
「そ、ふぃあ……」
「気持ちよくなってきた?」
「や、やめ……」
「まだやめないよ」
ほら、テリー?
「こっち向いて」
テリーが振り向く。ソフィアが身を屈ませる。唇同士がくっついた。
「んっ」
テリーの肩が揺れる。ソフィアの舌が動く。テリーの口の中に入っていく。
「んんっ!?」
テリーの胸を握る手が優しく動き出す。
「ん、ん、ん、ん」
舌が絡み合う。
呼吸が乱れる。
意識がくらくらしてくる。
(いやらしい顔)
テリーの目はとろんとしている。
(好きだよ。テリー)
恋しい。
(ああ、もっと、君が欲しい)
求める。
もっと求める。
テリーを求める。
(*'ω'*)
「テリー、すみません、遅くなりました」
サリアが戻ってくると、椅子に座ったソフィアが振り向いた。テリーはソフィアの膝の上に座り、ソフィアに抱きついた状態で眠っている。
そんな姿に、サリアがきょとんとした。
「あら、眠ってしまいましたか」
「ええ。疲れていたようです」
すやすやと、気持ち良さげに眠っている。ソフィアがテリーの背中にとんとんと手を当てた。
「次の競技まで、まだ時間がありますよね」
「そうみたいですね」
サリアがテリーの頭を撫でた。
「……」
3、2、1。
「ソフィアさん」
「はい」
振り向くと、サリアがにっこりと微笑んでいる。
「お嬢様のブラジャーがずれているようです」
「はぁ。そうですか」
「何をしました?」
「ん? なんのお話ですか?」
「何をされました?」
「くすす」
「ソフィアさん」
「くすすす」
「ソフィアさん」
「くすすすすすすすす」
「ソフィアさん」
「くすすすすすすすすすすすすす」
ソフィアが微笑み、テリーの背中を撫でる。
「別に、何もしてませんが」
へえ。ブラジャーがね?
「運動して、ずれたのかもしれませんね。運動会ですから」
「……」
「嫌ですね。そんな目で見ないでください。私はただ」
愛しいテリーを抱きしめる。
「こうやって、この子を抱きしめていただけですよ」
テリーがすやすや眠る。その手は離れないように、ソフィアの体操着をきゅっと握っている。
サリアがにこにこ微笑みながら、ソフィアを見つめる。
「ソフィアさん、競技前にはお嬢様を起こしましょう」
「ええ。もちろんです」
「ソフィアさん、手の位置がお尻に近いので、腰を持ってください」
「くすす。これはこれは、一体何のことやら」
(チッ)
ソフィアの手がテリーの腰に戻る。
サリアはカメラを覗くことなく、ソフィアの隣に座り、運動会を眺めることにしたようだ。にこにこ笑ってソフィアを見てくる。
(これは強敵な保護者だ。くすす。残念)
しかし、こうでないと面白くない。
(恋は駆け引き。それが楽しいんだ)
もっと振り回して。テリー。
(恋しい君に振り回されるなら、本望だ)
むにゃむにゃ口を動かすテリーを見て、ソフィアがふわりと、優しく微笑んだ。
図書館司書が覗くは君 END
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