ソフィア

図書館司書の淡い願い事(ソフィア)

(*'ω'*)カップリング上、キッドとテリーは婚約解消しております。

ソフィア(23)×テリー(13)

――――――――――――――――――――――――――――――















12月25日。

赤い服を着た魔法使いが、子供たちにプレゼントを配り回り、子供たちがそのプレゼントに喜ぶ日。

皆がそわそわしだす、そんな冬の、年末前のロマンチック・イベント。


そして――――。



「呆れた」


あたしは、腕を組んで、声を上げる。


「なんでこんな日に働いてるのよ」

「くすす」


ソフィアが書類にサインしながら、あたしに笑った。


「君だって、こんな日に図書館に来るなんて、どうしたの?」

「ふん。他にやることがなかったのよ」

「プレゼントはもらった?」


微笑んで、ソフィアが訊いてくる。


12月25日。当日。

クリスマスプレゼントに、皆が喜ぶ日。

朝になって、アメリと、あたしと、メニーがわくわくして靴下を覗いた。

覗いたら…。


「これが入ってた」


一万ワドル分の図書カード。


「遠回しに、一万ワドル分の本を読めって言われたわよ」

「うふふふっ!」

「笑うな!何よ。皆して、あたしに遠回しに文句ばかり言いやがって…!むかつくわね!」

「文句じゃなくて、もっと本を読んで勉強しなさいって事じゃない?ほら、本を読むと人生が変わるって言うからね」


(それってつまり…)


―――これで本を読んで、死刑を回避するんだよ。ふぉふぉふぉふぉ!ハッピー・メリー・クリスマス!


眉間に、しわが寄る。


(ほーう…?赤い服を着た魔法使い…。いい度胸じゃない…。そうだったらお勧めの本でも良かったじゃない)


なんで一万ワドル分の図書カード…。


「それでテリーは素直に本を読みに来たの?」


微笑むソフィアに、頷いた。


「赤い服を着た魔法使いがそう言うなら、読むまでよ。なんかお勧めがあったら教えて」

「メニーは?」

「置いてきた」


あの子は、お人形の家をもらって、それはそれはとても喜んでた。


『リトルルビィと遊ぼうっと!』


あの幸せそうな笑顔を思い出すと、虫唾が走る。

チッと舌打ちすると、ソフィアがまた笑った。


「つまり、君は図書館でクリスマスを過ごそうって言うのかい?」


今日、閉まるの早いんだよ?


「お屋敷で、本を読んでた方がいいんじゃない?」


(屋敷にはメニーがいるんだって言ってるでしょ!嫌なのよ!何を好き好んでお人形で楽しそうに遊ぶメニーの子守をするってのよ!ふざけんな!)


「いいのよ。外で気分転換したいの」

「…ねえ、テリー」


ソフィアが、首を傾げる。


「今日、時間ある?」

「ん?」

「図書館が15時に閉まるんだ」


その後、


「ちょっとだけ、食事に付き合ってくれない?」

「……食事?」

「ケーキを作ったんだ」

「あんたが?」

「そうだよ」


でもね、君、わかるだろ?


「私が以前、舌が麻痺していたことに」

「あーーーー…」


あたしは、頷いた。


「ええ。そうだった」

「だから、ケーキもそうだったら嫌だと思ってね」

「誰か、食べるの?」

「図書館で働く人とか、キッド殿下の部下の方々に持っていこうと思ってるんだ。普段お世話になってるし」

「…毒盛ってないでしょうね?」

「ほら、そうやって疑ってくる」


だから、君が味見するんだ。


「あたしが味見すれば、毒が入ってないって証明になるわけ?」

「まあ、念には念をってやつ」

「食べる分にはいいけど…」


ちらっと、時計を見る。

13時30分。


「……ついていくのもいいけど」


ちらっと、ソフィアを見る。


「またあたしに何かしようっていうなら、迷わず通報するからね」

「くすす。いいよ。それで」

「わかった。じゃあ、付き合う」

「助かるよ。ありがとう」


にこりと微笑んで、ソフィアが、提案した。


「フランダースのシベリアンハスキー、なんてどう?」

「うん?」

「物語の本だよ。二階の世界名作劇場の分野にあるはずだから、探しておいで」

「…ありがとう」

「こちらこそ」


ソフィアが眼鏡をかけ直して、書類に目を通す。

あたしはカウンターから離れて、言われた通り。二階に向かう。


(ソフィアの作ったケーキか…)


メニーに味のないシチューを作らせたソフィアの手料理…。


「怖い」


呟いて、図書館の階段を、上り始めた。




(*'ω'*)




閉館時間になり、一階に行くと、ソフィアに止められた。


「テリー、ここで待ってて」


そう言われて、10分ほど待つと、コートを着たソフィアが出てくる。


「お待たせ」

「あんたの家、遠いの?」

「ううん。ここから近く」


本当は違うところに住んでたんだけど、


「こっちの方が図書館も近いからって、キッド殿下に用意してもらったんだ」

「へえ」

「家賃もそこまで、高くないしね」

「払えてるの?」

「うん。余裕で生活も出来る。若き王子様に感謝だね」


そう言って、カウンターの裏にある扉に向かって、ソフィアが頭を下げる。


「お先に失礼します」


奥から、お疲れ様でした、と声が聞こえて、ソフィアがまたあたしに振り向き、嬉しそうに、あたしの手を握ってくる。


「さあ、行こうか。テリー」

「ん…」


こうやって手を握られると、改めて、ソフィアが大人であるという事を、知らされる。

あたしよりも大きくて、整われた手、でも、その手で多くの盗みを働いた。


(これ以上汚くなることがありませんように)

(赤い服を着た魔法使いも、少しはソフィアの願いを叶えてやってよ)


苦労人なのよ。彼女も。


その苦労人の手を握れば、ソフィアがゆっくりと歩き出す。

あたしの速度に合わせるように、足を動かす。

図書館から出て、寒空の下に出る。


「くすす。やっぱり寒いね」


ソフィアがマフラーに首をすくめた。


「昨日雪が降ってた。雪も余計に積もったわ」

「そうそう。朝出勤する時大変だったよ。テリーはここまでの道のり大丈夫だった?」

「だいぶ雪かきされてたから、平気」

「町中皆雪かきだよ。図書館の人たちも皆当番を決めてやってるんだけどね、今日ばかりは当番も関係なしに皆でやったよ。人数も少なかったし」


ソフィアと、他愛のない話をしている。

怪盗パストリルに、世間話をされている。


(なんか、変な感じ…)


三か月前までは、怪盗として標的から標的へ。キッドを陥れようとして、メニーを誘拐して、あたしを誘拐して、あたしを殺そうとしたソフィア。


こう見ると、ただのお姉さん。


金髪が輝く、金の瞳が輝く、美しい容姿のその女性。道を歩いていて、何度か前から通った通行人が男女関係なく、その美しさにちらっと視線をソフィアに動かす。通り過ぎた後も、振り向く人までもいる。


女性として立派に、『美人』の類に入るソフィアが、英雄になろうと、怪盗になり、悪事を働いていたとは、三ヶ月前の出来事とは思えない。もっと、昔にも感じる。


(図書館に行けばいつだってソフィアがいる)

(メニーもいつの間にかソフィアと仲良くなってる)

(図書館利用者は、ソフィア目的の男性、男の子もいる)

(街の皆に、愛されようとしている)


その努力も、彼女はしている。


(きっと幸せになれる)


あたしがこれ以上ソフィアの人生に口を突っ込まなくても、彼女は分かっている。


(ちょっと、安心した)


ほっとして、足を動かすと、


「きゃっ!」


つるーん、と滑った。


(いいいいいいいいいいいいいい!!転ぶ!転ぶ転ぶ!転んでつるんって滑って冷たい氷と雪がお尻にぶつかる!やだやだやだやだ転ぶ転ぶ転ぶ!!)


顔をぞっと青く染めると、あたしの手が、ぐいっと引っ張られた。


「よいしょ」

「わっ」


体が支えられ、ぴたっと動きを止める。

ソフィアが手を引っ張ったおかげで、転倒を回避したのだ。


「ふふっ。大丈夫?」


(うおおお…!!助かった!命を狙う犯罪者から、命の恩人に格上げよ!!)


「あ、ありがとう…」

「どういたしまして、くすす」


笑って、またソフィアが歩き出す。


「気をつけて。雪も多いけど、凍ってる部分も多いから」

「ええ…。氷って侮れないわよね…。雪の中に紛れ込んでいるなんて最低の卑怯者よ…」

「うん?何々?なんでそんなに氷に恨みを持っているの?テリーってば」

「恨んでなんかないわよ。ただ憎いのよ…!」

「似たようなものじゃないか。ふふふっ」


ソフィアがちらっと、あたしを見下ろす。


「大丈夫だよ。今は私がいるからね」


くすす、と笑って、


「身を挺してお守りしますよ。レディ」


聞いたことのあるそのセリフに、苦笑する。


「ここは舞踏会じゃないわよ」

「同じようなものさ。皆着飾ってて。危険なものがいっぱいある」


ああ。そういえば。


「年明けは、どこか出かけるのかい?」

「ううん。どこも。あたしの姉さんとママは、姉さんの友達のパーティーに行くって言ってたけど、断ったの」

「ん?なんで?」

「メニーが嫌がるかと思って」


レイチェルの屋敷のパーティーだ。念には念を。アメリはレイチェルに気に入られてるからいいにしろ、メニーは別だ。血の繋がりもない三女。美しく輝くメニーに嫉妬をぶつけられたら、せっかくのお正月が台無しだ。


「あたしとメニーは、城下町で、楽しく出店を回るとするわ」

「くすす。なら、私も出かけないとね。ばったり会えるかもしれない」


そうだ。試してみない?テリー。


「ばったり会えたら、それは運命が私たちを導いたという事で、付き合おうよ」

「どこに付き合うのよ」

「くすす。嫌だなあ。テリーってば」


恋人になるってことだよ。


「だらぁっ!!」

「ひゃっ!」


ソフィアの足を踏むと、ソフィアが悲鳴をあげた。

びくっと体を強張らせて、立ち止まり、またゆっくりと歩き出す。


「んふふ…。痛いよ。テリー…」

「公共の場でからかうな!デリケートな話題よ!デリケート!!わかってる!?」

「くすす。照れちゃって可愛い。そんな君も好きだよ」

「…ほざけ」


けっ、と悪態をついて、からかってくるソフィアにそっぽを向いた。


(何よ。からかっちゃってさ!一応あんたより、あたしの方が年上なんだから!中身だけは!外は13歳だけど!中身だけは、うんと人生の先輩なんだから!)


「ケーキがね、」


ソフィアが、言う。


「結構量多いんだけど、胃の中には入りそうかい?」

「美味しければね」


問題はそこだ。味のないケーキなんか食べられるか。


「そういえば、何のケーキ作ったの?」


見上げて訊けば、ソフィアが、にんまりと微笑んだ。


「よし、テリー。久しぶりに、なぞなぞといこうか」

「えっ」


すっと息を吸い、ソフィアが、唄った。



真ん丸黄色のお月様

雪が積もったお月様

周りの星は赤や紫

輝く真っ白お月様

さあそれは一体何?



「………お月様?」


丸いってこと?


「ケーキは皆丸いわよ」

「くすす。テリー、よく考えて」


お月様に、雪が積もってるんだ。


「苺のケーキ?」

「苺は乗ってるよ」

「んん…?黄色いケーキなんて、どこにあるっての?チーズケーキじゃないでしょ?」

「そうだよ。チーズケーキじゃない」

「んんん…?」


じゃあ、何?


「ヒント」


ソフィアがウインクした。


「フライパンで作れるもの」

「え…?」


フライパンで、ケーキを作るの?


(まあ、作れないこともないだろうけど…)


「んんん…?わかんない…」

「よし、じゃあ、帰ってからのお楽しみだ」

「何よ。答えてくれないの?」

「見たらわかるよ。テリー」


そんなに拗ねないで。


「拗ねてない」


あしらってくるソフィアにイライラして、チッと舌打ちする。


「いいわよ。こうなったら厳しく味見してやる!言っておくけどね、あたしに催眠は効かないんだからね!不味かったら不味いって正直に言うわよ!」

「その方がありがたいね。くすす」

「何よ。余裕に笑っちゃって!見てなさいよ!」


頬を膨らませて、むうっとすれば、じっと、あたしの顔を、ソフィアが見つめた。


「うん。楽しみにしていて。テリー」


ソフィアが妖艶に微笑み、また、足を進ませた。




(*'ω'*)




ソフィアの住むマンションに着いた。

二階建ての、こじんまりした建物。

扉を開き、あたしを中に促す。


「入って。大丈夫。罠なんて何もないから」

「お、お邪魔します…」


ブーツが濡れているから、スリッパに履き替えて、中に入る。


きょろきょろ見渡せば、綺麗に清掃された一人部屋。

家具はシンプルに茶で統一されている。


「案外綺麗にしてるのね」

「まあ、大人ですから」

「地下の部屋より全然いいわ。こっちの方が落ち着く」

「くすす。それはよかった」


ソフィアが暖炉に火をつけて、部屋を暖める。


「さてと」


ソフィアが先にコートを脱いで、あたしに振り向く。


「覚悟はいいかい?テリー」

「望むところよ!」


さあ、かかってきなさいよ!


「くすす。私のケーキは、これだよ」


冷蔵庫からお皿に乗った、そのケーキを取り出す。

それを見て、見て、見れば、きょとんと、あたしの目が点になる。


「………………パンケーキ」

「くすす」


ケーキはケーキでも、


「パンケーキなら、簡単にお手軽に作れる」


また冷蔵庫から、絞り袋に入ったホイップクリームと、生クリームと砂糖が入ったボウルと、トッピングのベリーが何種類も入ったお皿を用意して、テーブルに並べる。


「さあ、見てて。トッピングの時は、テリーも手伝って」


だがその前に。


「手を洗おうか」

「賛成」


ソフィアに洗面所に連れてってもらい、手を洗う。ソフィアも手を洗った後、かけていたハムスターの絵が描かれたエプロンを腰に巻き付けて、長い髪を結んで、微笑み、ぐっと拳を握る。


「よし、やるぞ…!」


(ソフィアが真剣だ…!)


気合を入れて、ソフィアが真剣な目つきで生クリームのボウルを手に持つ。


「テリーに食べさせるからね。私の命に代えても、これだけは真剣にやりたい」


盗んであげよう。パンケーキの地味でなお且甘い味わいを。


「盗んで、君にプレゼントするんだ」

「盗んだものなんか欲しくないわよ」

「くすす。そう言わずに」


ソフィアが生クリームを塗っていく。


「テリー、ベリーを乗せてくれる?」

「了解」


パンケーキを囲むように、苺、木苺、ブラックベリー、ブルーベリーを乗せていく。


「そうそう。上手上手」

「ふん。これくらいテリー様にかかれば、朝飯前よ」

「ふふっ。助かるよ」


その上にパンケーキを重ねて、またソフィアが生クリームを塗り、あたしがベリーを乗せて、それを繰り返す。7段ほど重ねて、ようやく、ソフィアがホイップクリームで飾る。


「で」


粉砂糖を上から振りかけ、その上にベリーを乗せて、


「完成!」


嬉しそうに、ソフィアが微笑み、あたしを見下ろした。


「どうだい?どうだい?テリー。二人の愛の結晶だよ」

「その言い方はどうかしらね…」


びぐっ、と片目を痙攣させると、ソフィアがくすすと笑った。


「でも、見た目だけは良い感じ。君のおかげだね」

「まあ、…見た目だけは」


喫茶店のメニューでもおかしくないという、見た目。


「問題は味だ」


眉間にしわを寄せて、あたしを促す。


「審査を頼むよ。テリー」

「あたしの舌は厳しいわよ」

「わかってるよ。だからお願いしたんだ」


フォークとナイフをあたしに渡して、あたしがそのパンケーキの一番てっぺんの部分を切っていく。そして、フォークに刺し、木苺を乗せ、じっと見つめる。


「…これね」

「ああ」

「いただきます」

「どうぞ」


ソフィアが真剣な眼差しであたしを見る。

あたしも真剣にそのパンケーキを見つめ、ぱくっと、食べる。

食べれば。


(…うっ…!!)


これは――――!!


小麦の味と、卵の味が濃厚且うまい具合に絡み合って、バターとミルクが入っていることにより、味がミックスマッチされている。一体薄力粉うんぬんの粉類にどんな催眠を使えばこんな魔法がかかるのか。更にベリーを上乗せすることにより、フルーティ且パンの味がボリュームアップ!これは……!!


「び、美味…!!」

「本当?」


ソフィアの表情が、ぱっと明るくなる。


「美味しい?テリー」

「あたし、嘘なんてつかないわよ」


あんたのこと大好きってわけじゃないんだから、傷つけまいと褒めることなんてしない。


「美味しい。喫茶店で出されてもわからないわ。ベリーもちょうどいい」

「そう、それは…ふふっ。よかった」


にこりと、ソフィアが微笑んだ。


「じゃあ、一緒に食べようか」

「ええ。こんな美味しいもの、独り占めするのはもったいないわ」


リトルルビィとか、メニーに出したら喜びそう。


「これならキッド殿下にも出せるね」

「ああ、あいつ喜びそう。甘いもの好きだし、苺ケーキみたいって言って食べるかも」

「くすす。好感度アップも狙える」

「あたしも今度作ってみようかしら」

「いつでも教えてあげるよ」

「なめないで。パンケーキくらい作れるわ」


だいぶ部屋が温まってきて、上着を脱いで、椅子に座り直す。またナイフでパンケーキを切り取って、食べる。んふふ。なかなか美味いじゃないの。

ソフィアもナイフで切って、フォークで刺して、一口サイズを食べる。


「ん…なるほど。私の味覚は戻ってきてるみたいだな…」


よかった。


「とりあえず、これで料理は出来る」

「あんた、料理なんて出来たのね」

「ずっとお金がなかったからね。節約するには自炊が一番さ。その中で、美味しい料理を見つけ出すのが、ちょっと楽しかったんだ」


それが、苦労時代のソフィアなりの、楽しみだったらしい。


(…苦労してたんだろうな)

(相当、苦労していたんだろうな)


話を聞いた限り、涙なしでは彼女の苦労話は聞けない。

ただ、だからと言って、他人のあたし達には、わかってもあげられない。

共感もできない。

それでも、聞くだけなら、あたしでも出来る。

言葉だけの同情なら、いくらだって付き合える。


「得意料理は?」


聞けば、ソフィアがにんまりと、怪しく微笑む。


「テリー、肉じゃがって知ってる?」

「ん…?何それ」

「ビーフシチューを作ろうとした外国の人が発明したと言われている、料理の一つ。ふふ。これがまた美味しくてね」

「へえ」

「今度作ってあげるよ」

「え、いいの?」

「いいよ。いつでも」


ソフィアがにこりと笑う。


「テリーのためなら、毎日でもお弁当でも夜食でも作るよ」


あ、


「私と結婚したら、毎日食べる事になるのか。今のうちにレシピ表を作っておかないと」

「ぶっ!!!!」


吹き出して、ごほごほと咳をする。その正面では、涼しい顔してパンケーキをつまむソフィアがいる。


「おやおや、大丈夫かい?プリンセス」

「あ、ん、た、はあああああああ…!」

「あ、ココア入れようか。好きなんだろ?ココア」


ぎっ!とソフィアを睨む。


「そーやって、ちょーーっと良くしてやれば、調子にのってからかってくるんだから!!」

「調子に乗ってないし、からかってるつもりはないよ」


くすす、と、ソフィアが笑い、微笑み、目だけ、あたしに動かした。


「ねえ?テリー。私は本気だよ?」

「何よ。告白の件ならメニーが駄目って断ってくれたはずよ」

「君は?」


―――一瞬、ソフィアを睨み、思いっきりため息をついて、パンケーキをつまんだ。


「お断りよ。あたしは男が好きなの」

「私だってそうだよ。男性が好きさ」

「じゃあ素敵な紳士を見つける事ね」

「それは出来ない」


だって、テリーを見つけてしまったからね。


「君こそ、私と共にいる相棒であり、相方であり、永遠の伴侶だ。間違いない」

「…馬鹿じゃないの。あのね、そんなのただの錯覚よ。あんたもキッドと一緒。自分のものにならないから欲しくてたまらないんだ」

「そうだね。それもあるかもしれない」


でも、そうじゃないかも。


「私だって色々考えて、物を言っているよ。23歳にもなって、同性の女の子を好きになるなんて、本当どうかしてると思うし」


ああ、勘違いしないで。


「別に、好きになる対象が同性になる人を、批判するつもりはないんだけど」


私は今まで男性を恋愛対象で見ていたから、


「同性を好きになることは本当になかったんだ」


だから、考えて、よく考えて、悩んで、考えて、それが答えだった。


ソフィアがあたしの左手に、手を重ねる。


「テリー」


(ん?)


見上げると、ソフィアが、真剣な瞳で、今まで見たことないくらい真剣な、眼差しで、あたしを見つめる。


見つめてきて、


口が動いた。




「君が好きだ」



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