窓枠の外
流星を一つも見せなかったくせに、自分だけからりと澄み渡った青空を睨んだ。筋違いだとはわかっていた。
眠れなかった夜、ふと、オリオン座流星群を見よう思った。ベランダへ続く窓を開けるとパジャマのままでは10月の夜は寒かった。けれど着替えて外出する気にもならなかった。僕は結局、締め切った窓に背中を預け、振り返るようにしてオリオン座を睨んだ。
結局流星は見えなかった。
思えばあの窓枠が異常だったのだ。南向きの窓は、確かに放射点のオリオン座を捉えていた。けれど僕は知っていたはずだ。流星群は空を大きく見なければ見つけられないことを。360度の丸い空を矩形に切り取った空は、考えてみれば異常に違いなかった。
つまり、中心を捉えた物なら、何かを見せてくれるという信頼が、最も致命的だった。
そんなおかしな信頼が、いつの間にか当たり前になっていた。
昔――まだ僕がずっと強かった頃――一晩中芝生に寝転び空を見上げたことを思い出す。次はあの時のように外へ行けるだろうか。けれど窓越しに感じたあの冷たさを思い出すたびに、足がすくむ。
あと何度、青空を睨めば良いのだろう。
僕は寒空の下、人気のない道をどこまでも歩いていける自分を夢想した。思い浮かぶのは、僕がまるで映画のワンシーンように、ずんずんと闇夜を掻き分けて行く光景で――けれど、それは本当にどこかの映画に違いなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます