ペン先の向く方向
にゅーろんΩ
ペン
檸檬が爆弾ならばこの手の中にあるペンはミサイルに違いない。
思えばこの先の尖った形状も、中に黒鉛が詰まっている構造も、何かを書くためではなく、何かを破壊するために生まれてきたに違いないのだ。
それをこちらの勝手な都合で、筆記具として使っていただけなのだ。そう思うと無性に愛着が湧いた。
僕は積み上げた教科書にペンを立てかけた。即席の発射台だ。
そして消しゴムを取り出した――そうだ、これはスイッチなのだ。擦れて、削れて、形を失った、うす汚れた白い樹脂。この樹脂の腹を強く押し込めば、ミサイルが発射され、それは成層圏を超え、中間圏で幾億に分岐して、地上に降り注ぐのだ。
今度は、消しゴムの丸みを帯びた形状とその肌触りが手に馴染む気がした。
――押そうかな。どうしようかな。
僕はミサイルが降り注いだあとの、なんにも無い世界を夢想した。それだけで、なんだか嘘みたいに救われた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます