幕間・二
壁に埋め込まれた檻の中から、四つ足の生き物がこちらを見ている。
何かの数値を示す表を見せながら、隣を歩く男が言う。
「昨晩死んだネズミから面白いサンプルが取れました。後ほどデータをまとめた物を提出します」
首を縦に振る。
男は眼鏡の奥で両の眼をきらきらと輝かせ、頭を下げて檻の前へ戻っていく。
すれ違う初老の男が会釈する。
片手を挙げると男は合わせた両手の指を組み、目を伏せる。
「神は確かに、我ら至高天の信徒を見守って下さる……」
深い敬服の声を背中で聞く。
大きな水槽の中から、よく分からない形の生き物がこちらを見ている。
手元の紙にペンを走らせていた女も、こちらを見る。
「貴方様とこうしてお話出来る事もまた、神のお導きなのでしょうか」
少し離れた場所の、小さな水槽の前にいた男が駆け寄って来る。
「研究は順調です。このまま安定が続けば、より多くのホスト化が見込めます」
二人は顔を見合わせて頷く。同じように頷いて見せると、嬉し気に笑う。
部屋の隅に見慣れた後ろ姿がある。
『 』
白衣のポケットに両手を収めたまま、振り返った彼は目を細めて言う。
その表情は嘲笑とも、憂い顔ともつかない。
「首のないネズミがこちらを見ている、か」
「なあ、これがお前の望む救いなのか?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。