第6話 畏怖

全員の移動が終了した。

半強制的に移動させられた元関東の住民は、爆撃後の関東に驚きを隠せないでいた。


街の原型は全く留められず、住居は全て全壊、辺り一帯は全て焼け野原となってしまった。



と、思われていたが、そこに広がる光景は、まるで爆撃などが一切なかったのかと思われるほど、元通りの風景だった。


「爆撃したんじゃなかったのか…?」


俺は驚きを隠せないでいた。

全く変貌していない自宅とその自宅周辺を見回したが、2週間前と何も変わっていない。

俺は真っ先にこう疑った。


「EMP爆雷か...?」


そそくさと自宅へ戻り、自宅内を漁る。

やはり、何も変わっていない。

冷蔵庫も、電子レンジも、炊飯器もいつも通り使える。


「もしEMPなら家電製品は全部使えなくなるはずだ...」


家電製品どころか、電流が流れる物全てには、EMPによって過電流が流れ、大抵の回路は抵抗が焼ききれ、回路が短絡ショートしてしまう。

が、どの電化製品をいじっても、通常通り作動している。


考えられる可能性として、次のようなものが浮かんだ。

先ず、単純にEMPではなく別の何かだったということ。

あるいはAIだけを狙って過電流を流すEMPだったということ。

しかし、わざわざ住民を排除してからAIだけを狙うには意味が分からなすぎる。

やはり、EMP以外の何かによって爆撃を行ったとしか考えられない。


「EMP以外でそんなことができるものなんてあったっけ…」


思考を張り巡らすが、やはりそんなものは無さそうだ。

いつの間にか、時計の針は正午から180度傾き、時刻は6時。


「そういえば腹減ったな…」


冷蔵庫からスティック状の何かを取り出す。

袋には、「meat stick」のラベルが貼られていた。

内容量240gの圧縮合成肉の塊だ。


「そうだ、テレビテレビ...」


いつも置いてある場所にリモコンが無い。


「おかしいなぁ…ここに置いたはずなんだけどなぁ。」


仕方ない、とため息をつき、テレビ本体の電源スイッチに手を伸ばす。




スイッチをいれた直後にわかった。



これは、テレビではない。



「なんだよ..これ...」

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