第12話 ユリーヌとカイキ

ユリーヌ


しかし、あいつどこ行ったんだろう。


ここは山の中。


祖国を離れ、カイキと共に、山を拠点にして活動しようと家を作った。


岩で出来た、強固な建造物だ。雨風はしのげるし、夜中はぐっすり眠れる。


カイキは散歩してくると行ったきり、もうしばらく帰ってこない。


ユリーヌ「もしかして、誰かにやられたとか・・・。そんなことないか。あいつより強いのはこの世にいないだろ。」


カイキ「ただいま。」

ユリーヌ「ん!お、おかえ・・・。お前!?その体!?」

カイキ「身体中がいてえ・・・。」


カイキの体を見て、驚いた。左腕はなくなっており、他の四肢もぐちゃぐちゃだ。


ユリーヌ「と、とにかく治癒の水を作るから、入れ!」

カイキ「あぁ・・・。疲れた・・・。」


私は大きな岩をくり抜いた穴に水を入れた。


『治癒の水 ユリーヌの呪絵ジュエ全ての傷を癒す。体を完全体に戻す』


カイキ「くはー!たまらん。」

みるみるうちに、彼の腕は戻り、腕が治った。かなり損傷していたが、間に合ってよかった。もし死んだ場合は治癒の水の効果はない。


ユリーヌ「一体何があったんだ・・・。」

カイキ「あぁ、エロじじいがいたんだ。そいつにやられた。」

ユリーヌ「端的に話すのは構わんが全く意味がわからん。もっと詳しく話してくれ。」

カイキ「クルーガの宝石をもってこいとさ。」

ユリーヌ「なるほど・・・。ってわかるかぁ!?」


なんでも、彼は散歩がてら、最果ての島まで行ってしまったらしい。

私も場所はわからないから、多分とんでもなく遠くだろう。

そこにはじじいがいて、戦いを挑んだら負けた。殴った腕はなくなり、ハゲと言ったら、殴られ、ここの付近まで飛ばされたらしい。

カイキは足に書いてある呪絵ジュエにより、高速で移動し、空を飛べる。

ジャポヌでもここまで高度な呪絵ジュエを使うものは少ない。

そしてクルーガという宝石がこの世にあるらしい。それを持ってくれば、証となるみたいだ。


ユリーヌ「ふむ・・・。宝探しか。楽しそうだな。」

カイキ「だろ?じゃあ手分けして世界を探してみるか。ところで、クルーガの宝石なんか知ってるか?」

ユリーヌ「わからんな・・・。宝石は名産が西の国だろう。王都バルティアまで行けば何か知ってるのがいるかもしれん。」

カイキ「よし。じゃあユリーヌは西だ。俺は南へ行くさ。リューリンに聞いてみるぜ。」

ユリーヌ「そうだな。わかった。リューリンによろしく言っておいてくれ。」


『リューリン ダイヌ族の女王。龍の言葉がわかり、操ることができる。肉体能力がとても高く、呪絵ジュエの力なしなら、カイキより強い。』


カイキ「じゃ、達者でな!」

ユリーヌ「あぁ、通信手段の呪絵ジュエを入れておこう。」

カイキ「お、そうだな。じゃぁ頬のとこに頼む。」

呪絵ジュエの上書き 呪絵ジュエは上書きできる。血で書いた文字を直接肌に入れることで、能力が追加される。個体により入れられる数が決まっている。』


私は自分の指先を刃物で切り、彼の頬に文字を刻んだ。

彼も自分の指先を刃物で切り、私の頬に文字を刻んだ。


カイキ「これ痛いからやだよなぁ。」

ユリーヌ「まぁ仕方ないさ。」


これで、お互いどこにいても、考えが共有できる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る