第8話 クルドとトーニ

クルド


遅い。おそらく敵襲だが。問題は敵だ。

私の部下が西のものにやられるはずがない。

それなら獣か。

この辺りはキリンやクマ牛がいるが、どれも脅威ではない。


とすると・・・。考えたくはないが、反乱だろうか。

信頼していた部下だが。いや、疑うのはよそう。戦場を共にした仲間であり、部下だ。


クルド「おい、トーニ。」

トーニ「ん?」

クルド「どう思う。聞きたくはないが、ここには役立たずのお前しかいないんでな。」

トーニ「随分な言い草だな。ったく。何がだよ。」

クルド「はぁ・・・。お前の父には世話になった。だから私の部下に入れたが、ヒョロヒョロのお前は役にたたんではないか・・・。」

トーニ「北の国は全て男子は兵隊だからな。弱かろうが強かろうが。ったくくだらねぇ。それに親父と俺は違うんだ。」


こいつはトーニ。私の部下で一番役立たずだ。

体が弱く、荷物は持てないし、飯もほとんど食わない。

しかし、彼は私が昔世話になった英雄プルガ様の息子だ。

母親は北の国の女王である、アリカ様。これ以上ない、北の国最強の遺伝子だ。


だが・・・。なにぶん弱すぎる。


クルド「偵察にやった私の部下だ。遅すぎないか?」

トーニ「あぁそれか。まぁ大方、変な生物に出会って、喰われてたりするんじゃねえか?」


クルド「く・・・。縁起でもないことを。」

ピピ


通信が入った。

クルド「む・・・。全滅だと・・・。脅威の生物来訪。」

トーニ「ほらな。」

これはまずい。私の部下はかなりの手練れのはず。北の国でも5本の指に入る。

それが全滅ということは、他に北の兵で敵には勝てない。


私でも勝てるかどうか・・・。

トーニ「クルドっちは帰って親父達に報告しなよ。」

クルド「それはいいが。お前はどうする?」

トーニ「そいつを捕まえてくるよ。」

クルド「ば、バカな!お前最弱じゃねえか!」


トーニ「まぁ・・・な。」


トーニは上着を脱いだ。

私は彼の肌を初めて見た。

彼は真っ黒い長い髪に、茶色の瞳をもつ。


その上半身には・・・。間違いない。


東の国の呪絵じゅえが入っていた。


クルド「お、お前・・・。」

トーニ「こういうことだ。秘密にしといてくれよ。」


クルド「あぁ・・・。頼んだぞ。」

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