第6話 ユリーヌと彼
ユリーヌ
私は祖国の生活に馴染めなかった。
周りの友人はうまく適応していたのに、私はできなかった。
親しい、身近な友人、まさに親友と呼べる人もできなかった。
しかし、悲観的にならなかったのは、あいつのおかげだ。
あいつ・・・。というのはいささか無礼かもしれない。
彼は祖国の頂点にたつ人だ。
かれは、幼い頃、私をよく助けくれた。
彼自身の鍛錬のついでだったのだろうが、私は彼がとても好きだった。結婚したいと思っていた。そうなるものだと思っていた。
---
私は両親を3歳で病で亡くした。
孤児になった場合、私の国ではある施設に預けられる。
しかし、私はそこから逃げ出した。
馴染めなかった。もちろん嫌いや悪意がなかったわけではないが、馴染めなかった。
途方に暮れて、木造の建物を勝手に根城にしていた。
しばらく、快適な生活を送っていた。獣は取れるし、水も飲める。ここの建物には井戸があった。おそらく誰かが住んでいたのだろう。ひどく朽ち果てていたが、とても綺麗だった。
ある時、唐突に彼が来た。
彼「ん、お前。」
ユリーヌ「びくっ!」
私は全身が強張った。それは声に驚いた。彼の声には、ものすごい殺意が込められている。
強張るという表現では足りないかもしれない。
『無』
そうだ。生がありながら、死んだのだ。
意識が飛んだ。
眼が覚めると私の四肢はなくなっていた。
---
彼「ん。」
ユリーヌ「うわああああああああああああ!!!!!!」
私は渾身の力を込めて、叫んだ。
彼「ハハハハ。イキがいいな。」
彼は私の首を掴んだ。
彼「よし、お前を嫁にもらおう。」
ユリーヌ「な、なぜだ。くそ、私の四肢をどこへやった。」
彼「ん、俺が喰ったぞ。なかなか美味だった。」
ユリーヌ「くそ・・・。私を無抵抗にして、快楽のために使うきか。」
彼「んん、まぁそうだな。というかもうしたのだが。なかなかいい具合だったぞ。」
ユリーヌ「く・・・。」
私は唇を結び、自分の異変に気がついた。確かに股間のあたりが熱い。
ユリーヌ「・・・。」
彼「強いな貴様は。さすが俺の嫁だ。」
ユリーヌ「誰がお前なんかに!くそ!!!!」
彼「いい眼だ。」
私は彼が悪魔にも神にも見えた。今まで見た誰よりも強く残虐で、高貴だ。
私がなぜ、こう思ったか。
切断された四肢からの痛みや苦痛が全くないのだ。
ユリーヌ「何者なんだ、お前は。結婚は別に良いが、どうせ私は世捨て人だ。それなら何も言わず、ただ支配下に置き、奴隷にすれば良いでないか。お前ほどの力なら、女など掃いて捨てるほどいるではないか。強者こそ正義なのだ。この国は。」
彼は嬉しそうに話した。
彼「私はカイキ。この国で一番強い。そうだな。だが余はも飽きたのだ。そういう生活にな。北のものも随分喰ったが、やはり自国が一番いいな。祖国の味というのものだろう。」
こいつが・・・。私の国では強者こそが正義。強いものは弱いものに喰われるのが唯一の掟だ。
『喰われる この国では実際に食べる表現もあるが、支配下に置き、奴隷にすることを意味する。』
こいつの存在はこの国に生まれたものなら、誰でも知っている。
それはこの国が始まってから、こいつがずっと支配しているからだ。
ユリーヌ「カイキ。その名前を知るものは少ないだろ。」
彼「あぁ、そうだな。だいたい王、異形の者、悪魔、神そんな呼び名だな。」
ユリーヌ「お前ほどのものなら、もっといい女がいるだろうが。なぜ私なんだ。」
彼「そりゃさっきいっただろう。具合がいいんだよ。相性ってやつだ。長い歴史で、たまにいるんだよ。そういったものがな。先代の嫁はもう300年前だ。あいつも最高の女だったぞ。それに。久々に出会ったぞ。初対面な感じしないだろ?」
く・・・。やはり、私はこの男を知っている。懐かしい感じがする。だから尚更腹が立つ。
ユリーヌ「私の四肢を切断したのはお前を倒せるからか。」
彼「あぁ、そうだ。まだお前は幼いから、力に対して、体が追いついていない。しかし、あと5年もすれば、俺と対等に戦えるだろ。勝敗は時の運だがな。今まで俺はお前に、70勝70敗だ。強かったぞ。過去のお前は。本当に、最高だった。」
ユリーヌ「はぁ。わかったよ。もう好きにしろ。」
彼は微笑むと、私の唇に、彼の唇を合わせた。
無抵抗な私は、愛を受け入れた。
その味はやはり、私は彼とのつながりを意識するものだった。
二つの魂がようやく一つに出会えた、感覚。
彼が300年の間、私を探し続けていたこと、そのため、世界中に足を運び、残虐の限りを過ごしながら、暴君や、悪意を根絶やしにしていたこと。いくら女を抱いても、退屈だったこと、そして、彼が私に出会えて、とても幸福で愛に満ちていて、喜んでいること。
ずっと満たされなかった。想いが私に流れ込む。
私は彼の舌を噛ンダ。
彼「いてえ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます