六章 ミレニアム編

プロローグ

 今日も屋敷は平和だが、ダンジョンが発見され村が発展していくにつれ、周囲の環境は急速な変化を遂げている。その内都市にでもなってしまうのかもしれない。


 外の喧騒と隔絶された広間では、だらしないメロディーが奏でられていた。相変わらず俺はピアノを引き続けている。さっき言ったように周辺の環境は目まぐるしく変わるが、俺は外に出れないし負わされる義務もない。要するに暇なのだ。


 そう言えば、今日はエルフィが来る筈だ。基本、ダンジョン製作の愚痴や相談を受けるのだが、古代の魔法について聞きたいことは山ほどある。適当な魔導書を見繕って聞きたいことの整理をしておこう。


 やることを強引に見つけ書庫へ向かう途中、クレイグが掃除の手を止めて、悩ましげな顔をしているのを発見した。


「どうしたんだ?」


「タケモトさん。魔力的な何かを感じませんか?」


「掃除サボりたいならもっとマシな……」


「いや、本気です」


「……と言われてもな。何も感じないよ」


 その時のクレイグの発言は、嫌な予感の様なものは的中しており、事が発覚するのは手遅れになった五ヶ月後。窓をぶち破って屋敷に飛び込んできた来たエルフィが告げた。


「第一迷宮が、崩落していたッ」


 こうも真実を知るのが遅くなってしまったのには理由がある。エルフィは、世界が魔法の反作用を抑えきれていない事に気付いていた。それは第八迷宮の崩壊が原因だと考えていた。しかしダンジョンが完成するも魔法の反動を受け止めきれず、不審に思ったエルフィの調査が行われ、やっと気付いた。


 結果、対策を施すのが手遅れな状況にまで陥ってしまった。


 それでも俺は動いた。被害を――これ以上のダンジョンの崩壊を防ぐために、何者が第一迷宮を破壊したのか突き止めて。そして、次の標的になる第二迷宮の攻略を妨害しようとして。


 当然というか、迷宮を破壊した者を相手どれば負けると分かっていたが、それでも挑戦し、呆気なく敗北を喫した。

 

 アノニアス教団はシオンの権力の元、国を動かす程に成長していた。第二迷宮に投入された戦力は剣聖レオナルド含む、国の軍。そしてアノニアス教団の司教スーリオン率いるアノニアス教徒の軍。


 ダンジョンの探索は行われなかった。

 魔法による集中砲火によりダンジョンは大きく損傷し、そして世界は大量に行使された魔法の反動を受けきれなくなった。


 白輝。

 その日、地上を生ける全ての物が消失した――

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