三章 ヴァンパイア編
プロローグ
これでも僕って、結構偉い人だったんですよ。何て言ったっけか。そうだ、宮廷魔術師だ。もう、称号からして高貴な身分だったのが分かるでしょう?
やっとそこまで上り詰めて、富も名誉も女も手に入れて。あの頃はホント良かったな。でも、そんな生活も長くは続かなかったんですよね。まさにちゃぶ台がえしってヤツで、富も名誉も女も。それどころか友人や居場所まで奪われちゃいまして。
こうなってしまった切っ掛けはたった一つなんです。
僕は何もしてないし、誰かに嵌められた訳でもない。
ちっちゃな、それも一つしかない隠し事がバレてしまっただけなんですよ。
誰だって隠し事くらいしますよね?
それなのに、国を追放なんて残酷すぎやしませんか。寧ろ、僕の隠し事はそれ一つしか無かったのだし、人よりずっと素直じゃありませか。
まぁ、いいんですよ。僕は誰も恨みはしません。国を追放されてかの生活も退屈はしなかったのだし、宮廷魔術師をやるのも飽きてきていましたから、いい転機だったのかなぁ、なんて思うくらいです。
なので、これから僕が悪いことをするのは復讐とかじゃなく、単なる遊び。大義も何もない、単なるちょっかいなんです。
死んでしまう皆さんには申し訳ないけど、僕がこう生まれてしまったのだから仕方ないと納得してほしいものです。
遊びとは言ったものの、なんだかんだ本気でやって来た事なんだし、きっちり成功させてやるとしましょう。そのための事前調査という意味合いを込めて、向こうの方の魔力の流れに違和感があるからちょっと確認して来ようかな。
*
月の輝きが満ちるその夜に、遥か北の地にて一人の少年が長い長い眠りから覚めた。
まもなく、霧散する様にして少年は消失した。代わるようにして蝙蝠が現れ、月下で羽ばたくその蝙蝠は、やがて暗闇に姿をくらました。
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