第36話「読む勇気」

「ずっと、読む勇気がなくてさ...ごめん。」

そう言うと、母が悲しそうにうつむいて、

私から背中を向けた。


「いや、お母さんが謝ることじゃないよ。

 入れ間違えた私が悪いんだし。」


母の背中に向かって、

母に届くように大きく言葉を投げかける。


母が私のほうを振り返って、にんまりと笑った。


母「昨日、実は読んだの。」

私「昨日?」

母「うん。これ...」


そう言うと、母が手紙を差し出した。


たしかに、私宛の封筒だ。

「未来の私へ」

そう書いてある。


「亜由美が手紙を書いただろう当時、

 お母さんね、離婚したばっかだったのよ。

 だから、当時の亜由美からの手紙が

 怖くて読めなかったの。」







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