第33話「この後予定」

何か、もう、耐えられない。

取り繕えそうにもない。


「ごめん。今日、この後予定あるんだ」


顔の前で両手を合わせて

「ごめん」

と小声で言ってみる。

春樹にも、ゆかりさんにも

聞こえないくらいのボリュームで。


春樹 「あぁ、うん。そっか...」

私  「うん。じゃね!ゆかりさんも!」


急に声をかけられてびっくりしたのだろうか。

慌ててゆかりさんが返してくれた。

「えぇ。またね」


慌てて駆け下りた歩道橋の下で、

私は振り返った。


見えそうにない歩道橋の上で、

春樹とゆかりさんの二人...


考えないようにした。

考えたくなかった。

今は。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る