第23話「久々じゃない?」

清々しさすら感じる快晴の日に、

ようやく知り得た黒髪の彼女の名前を

一人で噛みしめるように呟く。


「ゆかり。」

素敵な名前だ。


「よ!亜由美、久々じゃない?」

春樹の声がした。


声の先には

いつもと変わらぬ春樹が、そこにいた。


ゆかりと私、そして春樹の

3人が鉢合わせたあの日からしばらく、

晴れの日の歩道橋には通っていなかった。


当時の不可解な距離感と張りつめた空気、

あの日以降、春樹と会うことに

気まずさしかなかった。


待ち遠しかった春樹との歩道橋での逢瀬が、

遠のいていたものの、

その足を再びここへ向かわせたのには、

黒髪の彼女「ゆかり」との

友情の始まりがあった。


春樹「亜由美、何かいいことあったの?」

私 「え!?何で?」

春樹「何か今、一人でにんまりしてたから。」

私 「そうかな?」

春樹「でも、まあ、よかった。」


そう言うと、春樹が急に真顔になり、

黙り込んでしまったため、

とっさに言葉を繋げる。


私 「え?何が?」

春樹「いや、最近、亜由美ここに来ないからさ、

   何かあったのかなって。」

私 「無いよ、何も。じゃね。」


そう言って、そそくさと立ち去った。

春樹には、秘密にしていたかった。




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