第20話「嫌だったでしょう?」
黒髪の彼女も、しばらく沈黙を貫いていた。
まるで、私と黒髪の彼女の、我慢比べのようだった。
負けた。
私は、この沈黙に耐えられそうにない。
だけど、何て言葉をかけていいのか。
この沈黙を破る最適な一言が、私には。
あぁもう無理だ。
立ち去ろうとした、その時。
「ごめんなさい。嫌だったでしょう?」
彼女が悲しそうな顔をしているのだけは分かった。
彼女にそんな顔をさせてしまうのが、
何だか申し訳なくなった。
「いえ。いいんです。また今度、お話ししましょうね」
私は、精一杯の笑みを浮かべた。
彼女の顔が少しだけ、
ホッとしたように微笑んだのが見えた。
「また。」
つぶやくように、聞こえた彼女の声。
「はい、また。」
明るい声でこたえようと少し声を張った。
黒髪の彼女は、そんな私に向かって手を振っていた。
それを、私は横目で見ながら、歩道橋をかけ降りた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます