第20話「嫌だったでしょう?」

黒髪の彼女も、しばらく沈黙を貫いていた。

まるで、私と黒髪の彼女の、我慢比べのようだった。


負けた。


私は、この沈黙に耐えられそうにない。


だけど、何て言葉をかけていいのか。

この沈黙を破る最適な一言が、私には。


あぁもう無理だ。

立ち去ろうとした、その時。


「ごめんなさい。嫌だったでしょう?」


彼女が悲しそうな顔をしているのだけは分かった。


彼女にそんな顔をさせてしまうのが、

何だか申し訳なくなった。


「いえ。いいんです。また今度、お話ししましょうね」

私は、精一杯の笑みを浮かべた。


彼女の顔が少しだけ、

ホッとしたように微笑んだのが見えた。


「また。」

つぶやくように、聞こえた彼女の声。


「はい、また。」

明るい声でこたえようと少し声を張った。


黒髪の彼女は、そんな私に向かって手を振っていた。

それを、私は横目で見ながら、歩道橋をかけ降りた。

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