第17話「変わった人」

「えっと、その...」

照れ臭くなった私は、頭をポリポリとかいた。


黒髪の彼女の言葉に、返す言葉が見つからなかった。


「あなたも、変わった人ね。私も人のこと言えないけど」


そう言ってクスっと笑った彼女の笑顔が、

同性である私から見てもとても愛らしく、

どこか、切なく見えた。


「あの!」

勇気を振り絞って出した私の声が、少し上ずっている。


その上ずった声が自分で恥ずかしくなったが、

ちょっとビックリしたのだろうか、

彼女がこちらに顔を向けたのが分かったので、

私は言葉を続けた。


「あなたがここに来る理由って、何ですか?」


彼女は無表情のまま、小声でポツリと一言。

「雨の後ね…」


自信がなさそうに話す彼女の次の言葉を

私はじっと待った。


「雨が降った後に、虹がかかることがあるの」


知らなかった…


だから黒髪の彼女は、いつも

雨の日にこの歩道橋に来るのか。


「虹、お好きなんですか?」


私がそう聞くと、

「ええ、とっても」と答えた後、

彼女は空を見上げた。


雨は、まだ降り続いている。

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