第16話「今回も、お世話になりますね」

今日は昨日に引き続き、曇り空が広がっている。

天気予報では、一日中曇りだと言っていた。


あーあ、今日も春樹に会えないのか...


春樹が来ない歩道橋を、一人でかけあがっている自分。

自分は、ここに何をしに来ているんだろうか。


つい、ため息をついてしまった。


誰に見られているわけでもないのに、

今のはため息ではないぞと、

とっさに手を当てた。


冷たい手を、自分の息で、フーっとあっためていたら、


ピチャッ


ちょうど自分の頭のつむじあたり、

水滴が落ちてきた。


んっ?雨だ。

しかも、その一滴を皮切りに、

雨は激しくなってきた。


あぁ、もう。

このあたり、コンビニもないし...


この間、春樹と再会した木の木陰に

「今回も、お世話になりますね」と

一礼してから入った。


そして、

ぐしょぐしょに濡れてしまったローファーを見つめながら、

この間と同じように、雨宿りをすることにした。


「また、誰かを待っているの?」


その声と共に、折り畳み傘をさした女性が現れた。

今回ははっきりと言葉を聞き取れた。


黒髪の彼女だった。

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