第15話「おはよう」
今日はどんよりとした曇りだった。
春樹とは、晴れた日にしか会えない。
それでも、春樹に再会したあの日から、
私は毎朝、歩道橋にのぼっている。
会う、といっても、大したことはない。
昔、母とこの歩道橋から景色を見ていた時、
いつも少し遅れて春樹は来る。
歩道橋の真ん中に、私と母がいて、
階段をのぼってすぐのところに春樹がいて、
それ以上近い距離で話したことはなかった。
だから、この間ローファーを直してもらったときは
初めて春樹と、近距離で話した。
ドキドキしないわけがない。
決まっていつも
母と私から「おはよう」で会話が始まっていた。
そして、春樹もそれに「おはよう」と返す。
昔からずっと変わらない、あの笑顔で。
その後に、一言二言、世間話をするだけで、
三人は基本的に、歩道橋からの景色を無言で眺める。
それも、ほんの数分の短い時間。
そういう朝の数分間が、
私にとっては宝物だったように思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます