第13話「晴れた日にね」

「この...歩道橋で?」

春樹がびっくりしたように、こちらをじっと見てくる。


「そう。ほら、前みたいにさ。」


小学校の頃、母と一緒にこの歩道橋によく来ていた。

いつも、晴れた日だったように思う。

晴れた日のほうが、歩道橋からの景色がきれいに見えるからだ。


後々知ったことだが、

母と私の光景を、いつも歩道橋の下から見ていた春樹が、

興味本位でのぼってみたらしい。


それが、私と春樹の出会いだった。


いつでも、春樹は好奇心旺盛な男の子だった。

人懐っこくて、いつもクラスではみんなに囲まれている。


だけど、晴れた歩道橋の上は、いつも3人だけだった。


母と私と、ちょっと距離を置いて、春樹がいた。


いつからか、この歩道橋にはのぼらなくなってしまった。

3人がここに集合することも、なくなっていた。


「いいよ。ただし、晴れた日にね。」

春樹はそう言うと、くしゃっと笑った。


そうして、晴れた日の歩道橋が、

昔と同じように、春樹と会う場所になった。


ただ、あの頃と一つ違うのは、

あの頃よりもずっと、

春樹にドキドキしている自分が

「ここにいる」ということ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る