第13話「晴れた日にね」
「この...歩道橋で?」
春樹がびっくりしたように、こちらをじっと見てくる。
「そう。ほら、前みたいにさ。」
小学校の頃、母と一緒にこの歩道橋によく来ていた。
いつも、晴れた日だったように思う。
晴れた日のほうが、歩道橋からの景色がきれいに見えるからだ。
後々知ったことだが、
母と私の光景を、いつも歩道橋の下から見ていた春樹が、
興味本位でのぼってみたらしい。
それが、私と春樹の出会いだった。
いつでも、春樹は好奇心旺盛な男の子だった。
人懐っこくて、いつもクラスではみんなに囲まれている。
だけど、晴れた歩道橋の上は、いつも3人だけだった。
母と私と、ちょっと距離を置いて、春樹がいた。
いつからか、この歩道橋にはのぼらなくなってしまった。
3人がここに集合することも、なくなっていた。
「いいよ。ただし、晴れた日にね。」
春樹はそう言うと、くしゃっと笑った。
そうして、晴れた日の歩道橋が、
昔と同じように、春樹と会う場所になった。
ただ、あの頃と一つ違うのは、
あの頃よりもずっと、
春樹にドキドキしている自分が
「ここにいる」ということ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます