第6話「踏んでいいから」

約束をしたから。

放課後、またこの歩道橋に来ることを。


だけど、肝心の時間を、春樹に聞き損ねた。


とりあえず、部活が終わってから歩道橋に来てみた。


18時30分を過ぎていただろうか。

すでに春樹はそこにいた。


春樹「遅いよ。」

私 「ごめん。」


手短に謝った後、少しの沈黙があった。


春樹「ほら、足出してみ。」

私 「え、何、どういうこと?」


ポイっと、春樹のローファーが私の足元に飛んできた。


「そのローファー、踏んでいいから。」


春樹が片足立ちになっている。


「ん?このローファーでとりあえず足場ってこと?」


私がそう聞くと、春樹はニコっと微笑んでうなづいた。


「そうそう!だから、お前のローファー、貸してみ?

 直してやるよ。」


私は片足のつま先が少しめくれた自分のローファーを、

春樹の足元へポイっと投げた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る