第2話「傘なくて」
歩道橋の階段を、一段、また一段とのぼるたびに、
息が荒くなっていくあたり、
我ながら年齢を感じる。
ようやく最後の一段といったところで、
何かにつまづいたのか、私はクラっとよろけたが、
最後の力を振り絞って、足でぐっと踏ん張った。
ようやくのぼり終えたころには、
もうすっかり秋を迎えた11月に似合わぬほど
汗だくになっている私がいた。
この歩道橋から、昔と同じ景色が目の前に広がっていた。
そうだ。
もう少し、歩道橋の真ん中にいって見てみようかな。
歩き出したその時、ふと、私は気づいた。
あれ?前はこんなだっただろうか。
向こう側の道路から木が生い茂っていて、
少し歩道橋にかぶさっている。
そんなことを考えているうちに、
急にポツっと、急に雨が私の顔に落ちてきて、
雨が目に入った。
ちょっぴり、痛い。
みるみるうちに、雨は激しさを増していく。
仕方がない。
私はとっさに、歩道橋にかぶさっている木の木陰に入った。
その場所は、びっくりするぐらい雨を凌げた。
その木陰で雨宿りしていたら、
誰かが勢いよく階段をのぼってきた。
学ランを着た、男子学生だった。
そして、こう言ったのである。
「悪いな。俺も傘なくて。」
なんて図々しいやつだ、と思った。
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