歩道橋に置いて

たふろん

第1章 ローファーの再会

第1話「あの歩道橋、取り壊すらしいよ」

横断歩道で信号待ちをしていた。


その時、隣で女子高生2人がこんな噂話をしていた。

「あの歩道橋、取り壊すらしいよ」


横断歩道のすぐそばに、誰も渡らない歩道橋がある。


その歩道橋の上から、天気がいい日は海が見えるのだ。


なぜそれを知っているかって、

昔、母と一緒に、

この歩道橋の上から海を眺めるのが好きだったからだ。


そういえば、最後にこの歩道橋に渡ったのは、

たしか...小学生のころだっただろうか。


今や私も高校2年生。


歩道橋も私と同じように歳を重ね、

さびが目立つようになっている。


私が小学生だった頃からも、

そもそもあまりあの歩道橋を渡る人は少なかったし、

思えば、いつ取り壊されるという話が出てもおかしくはなかった。


そうだ。


歩道橋が取り壊される前に、あの景色をもう一度。

もう、一度だけ。


今日はたまたま、少し早めに家を出た。


少しだけ、寄り道をしてから登校しよう。


私の足は、自然と歩道橋に向かった。

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