第16話 息もつかぬ間に
声がする方へバッと振り向く。そこにはヒトクイドリの巣であった木に寄りかかって、ライアン騎士団長が拍手している。長槍と長方形の盾を木に立てかけてあった。
「おまっ、どうして!?」
会うのがバレていたのか!? いやそれよりも街にこいつがいないなら、監視してるエマは何故ここに来ない!?
「ハァ、やはり朝の問いかけは私を探っていたのですか」
ため息混じりにセイバは口を開く。
「そう! でも君も嘘だけを言わないよう、誤魔化すような答え方をしていたから、怪しくて付いてきたこと」
「……団長、秘密にしたのは申し訳ないですが、ササガミは悪い者ではないです。街をモンスターから守り、さっきだって私を狙わず共闘した。団長も開放したんですし」
「あはは、セン君には戦いを挑む度量はあっても、セイバに勝てる技量はないでしょうに」
「気をつけろセイバ!! こいつは魔王軍のスパイで、正真正銘の腐れ外道カスだ!!」
剣を引き抜き、片手で【黒弾】を準備する。
「……何?」
目を見開いて驚くが、信じられないような顔をする。
無理もない、団員とかならまだしも、こいつは組織のトップなのだから。でもこいつは出て来たからには、きっと何か企んでいる。早めに正体をバラし、少しでも思惑を外してやる。
「まぁそうなんだけど、最後のは酷くない?」
「何!? 本当なのですか団長!?」
あっさりと認めた?……ってことはもうセイバを殺す気か……?
「いや〜大変だったんだよ? 魔王様の部下に戦力や場所を教えて襲わせたり、時には自分の手で殺めた。……例えば、先代騎士団長とかね」
「ば、馬鹿な!? 先代のゼイス様は歴代でも最強で……それに四天王の1人と相打ちになったはず!?」
「そうそう、めっちゃ強かったから苦労したよ〜。だから計画を練ったんだ。四天王を先代と私で討ちに行ったけど、実際には私と四天王が共闘して2人かがりで攻めた。
それでも先代は善戦しちゃってね。仕方なく、先代が四天王を仕留めたと同時に、私が先代の心臓を突き刺したんだ」
ライアンは木に立てかけて長槍をヒョイッと掲げ上げる。
「丁度、この槍でね」
「そんな……何故、何故そんな真似を?……」
セイバは剣をカタカタと震わせ、睨む。
「そりゃあ僕は魔王様に心酔してるからね…何より思い通りに命が散るのは…快っ感だった」
「貴様……」
「……おい落ち着けセイバッ!」
わかったぞこいつの狙い! わざとセイバを煽って冷静さをーー
「きっさまぁぁぁ!!!」
セイバは剣を構え、ライアン騎士団長目掛けて走る。
「くそっ!」
俺も後に続いて走る。これは罠だ、挑発してやがる。
ライアンの頭上に8本の黒い槍が出現する。その槍がセイバに降り注ぐ。セイバはその槍を次々と叩き斬るが処理しきれなくなり、避けて体勢を崩す。
そこにライアン騎士団長がセイバの胸に槍を突き刺そうとする。
その槍先に【黒弾】が横から当たり、軌道がずれる。
しかし、槍はセイバの右脇腹を貫いた。
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